悪魔のお悩み相談所

春風アオイ

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森火戦争編

prologue

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そこは楽園だった。

木々が生い茂り、柔らかな芝生が大地を包み、花々が咲き誇り、精霊達が舞い踊る。
静謐な美しい世界の中に、一人の少女の姿があった。

腰まで伸びる白銀色の髪。
新緑色の優しい瞳。
透き通るような白い肌を純白のドレスに包み、傷一つない素足はそっと草を踏みしめる。
その姿は絵画から転がり出たかのように完璧で、視界に入れることすら不敬であると感じるほどに神聖で。

彼女こそが、森林王国セフィロトの寵妃。
自然を愛し、自然に愛された、世界唯一の精霊神。
神ミリシア、その人である。

彼女は優雅な足取りで自らの庭を巡る。
彼女が通るたびに空気が震え、植物は歓喜するようにその身を若返らせる。
彼女の周囲の花々がこぞって咲き誇り、満開の花畑を作り出す。

まるで神話の一ページのような、この世のものとは思えない光景。
誰も目にするものはいない、絶世の楽園。
その中で、全能の神は一柱、静かに憂えていた。

「そろそろ、なのかしらね」

春風のような甘く優しい音色が零れる。
周囲の草花だけがその言葉を受け止め、彼女の心情を推し量るかのようにその輝きを曇らせる。

「何かが起こる。止められない、厄災の音」

予言のような響きをもって、それは紡がれる。

「世界が壊れる、音がする」

少女はその瞳を空へと向けた。
全てを見通すその瞳には、何が映っているのだろう。

「種は蒔いた。だから、どうか花を咲かせて」

少女は微笑み、胸に手を当てる。


「お願い。私の、可愛いこどもたち」


それきり、音は止んだ。
少女はゆっくりと歩き去り、楽園には静寂だけが残った。
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