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特別編
教えてユーガ先生!〜五大神編
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※序章読了後にお読み下さい
※メタ要素があります
※王国の成り立ち編の続きです
──────────────────────
シルビオ「ヴォルガ?!身体平気なの?!」
ユーガ「平気な訳あるか。まだ一週間経ってねえんだぞ。…おい、何しに来た」
ヴォルガ「いや、話し声が聞こえてきたから、気になって……痛みはともかく、体力は戻ってるから」
「あー……それは悪かった。別に大した話じゃない。色々あってこの国のことを説明させられてるだけだ」
「……?」
「何か俺がせがんでるみたいな言い方じゃない……?そうなんだけどさ」
「えっと……よく分からないが、寝付けないから聞いていてもいいか?」
「まぁいいけどよ……流石にここじゃあな」
「リビング行こっか?あっちならあったかいし、横になってられるもんね」
「あー、そうするか」
「い、いや、そこまでしなくても……」
「飲み物も追加しよっか!俺持ってくね!」
「おう。じゃ、行くか」
「全然話聞いてない……」
【教えてユーガ先生!~五大神編】
「……という訳で、また一人生徒が増えたところで授業再開だ。現在の王国は五柱の神の庇護の下に成り立つ国であり、魔法が文化の中枢に位置している─というのが前回のあらすじだな」
「本当に基本的な話だな」
「改めて聞くとすごいなって思うけどね~。神様って、中央大陸にしかいないんでしょ?」
「ああ、極めて特異な存在と言える。三限目の話題としては最適だな」
「三限……?」
「深く考えたら負けだ。とりあえず、今回は五大神について、信仰するプリーストが多い順に話していくか。
まずは、星と秩序の女神アステル。現在の王国で最も信仰を集める神で、先述の歴史から知名度も非常に高い。属性は水と光だな。
特徴としては、清廉潔白で厳格な教義か。法や規則の遵守に厳しく、良く言えば真面目、悪く言えば融通の利かない信徒が多い。ヴォルガがまさしくアステル教徒の典型みたいな性格だな」
「悪かったな……」
「別に貶してないぞ。ちなみに信徒の視点からの補足はあるか?」
「ん……そうだな。今の王国の政治中枢に深く関わってる宗派でもあるし、教会主導の慈善活動が盛んに行われてるのは特徴の一つじゃないか?教会学校とか、孤児院とか、慈善治癒院は宗派関係なく国民を受け入れる仕組みになってる。アステル様は慈愛の女神とも呼ばれるし、福祉事業に関してはどの宗派よりも強いと思う」
「わぁかしこい……」
「え、こ、これくらいの知識は普通だろ……?」
「ははは、まぁ、こういう素直で真面目な奴が多いよな。じゃあ次行くか」
「生暖かい目で見るな!」
「はい次、太陽と自然の女神エイリス。主に貴族区とか王都の方で信仰が篤い神だ。属性は炎と風で、戦闘魔法に有利な属性として魔法士になるプリーストの割合が多いのも特徴の一つか。
教義としては、アステル教以上に善性と人間愛が強い内容だな。それ故に門戸が広く普遍的、明確な信徒の性格なんかは掴みづらい、一番無難な宗派って印象が強いな」
「随分詳しいな?」
「ユーガはね~、本読むの好きだから、結構色んなこと知ってるんだよ」
「……まぁ、酒場やってたら、色んな奴と絡むしな。経験則だよ。
あと、エイリス教については、主神の特性上自然や森林を保護する活動が盛んなのもよく知られてるな。人間の営みで個体数が減った精霊の保護を率先して行ってる宗派でもある。無許可で森林開拓に乗り出したらエイリス教徒に半殺しにされた…みたいな話はよく聞くな」
「普段は温厚だけど、逆鱗に触れると何よりも怖い……って印象はあるな」
「なんか心当たりある顔してるね?」
「いや、まぁ、うん……怒らせると怖いよ」
「ふっ、一体何があったんだか。
さて、次はシエラ神だな。月と混沌を司る女神で、アメストリアやジェイドなんかの貧民区では信者が多い。アステル神とは双子の姉妹だって神話が有名だな。属性は闇だ」
「はーいっ!シエラ様はね、立場の弱い人間や影に埋もれた人間が好きで、どんなに恵まれない人にも平等に愛を与えてくれるんだよ!」
「さすがに自分の主神には詳しいな。シルビオが言う通り、貧困層や同性愛者といった社会的弱者からの信仰を集めているのが特徴だ。反対に、貴族階級や官僚なんかの高い身分の人間からは嫌われがちだな。それ故に信者の絶対数は国全体で見ればアステル教やエイリス教には届かない」
「いい神様なんだけどねぇ……」
「……シエラ教の教義は、良くも悪くも自分優位だからな。信徒も癖が強い奴が多い」
「何で俺の方見て言うの?!」
「まぁ間違っちゃいねえな」
「ユーガまで?!!」
「分かったから睨むな。…悪い話が広まりがちだが、シエラ神自体は人間愛の強い聖神だからな。シルビオみたいに、人懐っこくてコミュニケーション能力が高い奴は多いんじゃないか。良い奴も悪い奴もいるのは他宗派と変わらん」
「……ふふ、ユーガのそういうとこ好き~」
「はいはい、そうかい。
じゃあ次、ライゼン神。戦と勝利の男神で、とにかく物騒な逸話が多い神だ。ヘルヴェティアのアステル教会区外とか、アメストリアの僻地とか、辺鄙な場所に住んでる奴がよく信仰してるイメージがあるな。あと、属性が雷で攻撃向きなこともあって、傭兵とかゴロツキとか、喧嘩っ早い荒くれ者が多いかな」
「何と言うか……シエラ教以上に他宗派からは嫌われがちというか、問題を起こした奴がライゼン教徒っていう話は飽きるほど聞いたな」
「んー、まぁ、うちの酒場にいちゃもんつけてくる人とかにも多い気はするね」
「確かに、血の気が多いって特徴は他宗派に比べると強いだろうな。その代わり、同宗派の者に対する仲間意識は群を抜いている印象だな。同教の人間には優しいが、他教の人間には遠慮がない……っていう分かりやすい宗派だ」
「他の人達にももうちょっと思いやり持ってくれたらいいんだけどねぇ」
「戦神の崇拝者なんてそんなもんだろ。他人に期待しすぎない方がいいぞ。
最後、クライヤ神。土属性を司る男神で、創造や破壊といった根源的な現象に関わっているらしい、恐らく現在の五大神の中で一番古い神だ。主神の逸話の通り、物作りや鍛治の才能に長けた者が多いな」
「なんていうか、皆仕事熱心だよね。酒場に来なくなったと思ったら食事忘れて干からびかけてたみたいなことあったし……」
「主神が人間の負の感情を祈りの代わりに受け取る邪神だからな。クライヤ教の教会が率先して信者を競わせて、より良い武器を作らせてクライヤ神に奉納してるとか……」
「良くも悪くも独立した派閥って印象だな。武器や家具を買う時にはよく世話になるが、それ以外での関わりがほとんど無い。この大陸の特産品の宝石とか鉱石がよく取れるコラッロ地区に大半の信者が集まってるし、人数比としては最も少なく感じるな」
「……そんな感じで、三限は終わりだ。いやぁ、優秀な生徒が来てくれて良かったよ」
「俺は優秀じゃないの!?」
「まぁ、手のかかる奴は可愛いものなんじゃないか?教師の立場的には」
「う、うーん、複雑だなぁ……」
「というわけで、少し休憩しよう。軽食でも作るか」
「わーい、やった~!ヴォルガも一緒に食べよ!」
「ん……仕方ないな」
(つづく?)
※メタ要素があります
※王国の成り立ち編の続きです
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シルビオ「ヴォルガ?!身体平気なの?!」
ユーガ「平気な訳あるか。まだ一週間経ってねえんだぞ。…おい、何しに来た」
ヴォルガ「いや、話し声が聞こえてきたから、気になって……痛みはともかく、体力は戻ってるから」
「あー……それは悪かった。別に大した話じゃない。色々あってこの国のことを説明させられてるだけだ」
「……?」
「何か俺がせがんでるみたいな言い方じゃない……?そうなんだけどさ」
「えっと……よく分からないが、寝付けないから聞いていてもいいか?」
「まぁいいけどよ……流石にここじゃあな」
「リビング行こっか?あっちならあったかいし、横になってられるもんね」
「あー、そうするか」
「い、いや、そこまでしなくても……」
「飲み物も追加しよっか!俺持ってくね!」
「おう。じゃ、行くか」
「全然話聞いてない……」
【教えてユーガ先生!~五大神編】
「……という訳で、また一人生徒が増えたところで授業再開だ。現在の王国は五柱の神の庇護の下に成り立つ国であり、魔法が文化の中枢に位置している─というのが前回のあらすじだな」
「本当に基本的な話だな」
「改めて聞くとすごいなって思うけどね~。神様って、中央大陸にしかいないんでしょ?」
「ああ、極めて特異な存在と言える。三限目の話題としては最適だな」
「三限……?」
「深く考えたら負けだ。とりあえず、今回は五大神について、信仰するプリーストが多い順に話していくか。
まずは、星と秩序の女神アステル。現在の王国で最も信仰を集める神で、先述の歴史から知名度も非常に高い。属性は水と光だな。
特徴としては、清廉潔白で厳格な教義か。法や規則の遵守に厳しく、良く言えば真面目、悪く言えば融通の利かない信徒が多い。ヴォルガがまさしくアステル教徒の典型みたいな性格だな」
「悪かったな……」
「別に貶してないぞ。ちなみに信徒の視点からの補足はあるか?」
「ん……そうだな。今の王国の政治中枢に深く関わってる宗派でもあるし、教会主導の慈善活動が盛んに行われてるのは特徴の一つじゃないか?教会学校とか、孤児院とか、慈善治癒院は宗派関係なく国民を受け入れる仕組みになってる。アステル様は慈愛の女神とも呼ばれるし、福祉事業に関してはどの宗派よりも強いと思う」
「わぁかしこい……」
「え、こ、これくらいの知識は普通だろ……?」
「ははは、まぁ、こういう素直で真面目な奴が多いよな。じゃあ次行くか」
「生暖かい目で見るな!」
「はい次、太陽と自然の女神エイリス。主に貴族区とか王都の方で信仰が篤い神だ。属性は炎と風で、戦闘魔法に有利な属性として魔法士になるプリーストの割合が多いのも特徴の一つか。
教義としては、アステル教以上に善性と人間愛が強い内容だな。それ故に門戸が広く普遍的、明確な信徒の性格なんかは掴みづらい、一番無難な宗派って印象が強いな」
「随分詳しいな?」
「ユーガはね~、本読むの好きだから、結構色んなこと知ってるんだよ」
「……まぁ、酒場やってたら、色んな奴と絡むしな。経験則だよ。
あと、エイリス教については、主神の特性上自然や森林を保護する活動が盛んなのもよく知られてるな。人間の営みで個体数が減った精霊の保護を率先して行ってる宗派でもある。無許可で森林開拓に乗り出したらエイリス教徒に半殺しにされた…みたいな話はよく聞くな」
「普段は温厚だけど、逆鱗に触れると何よりも怖い……って印象はあるな」
「なんか心当たりある顔してるね?」
「いや、まぁ、うん……怒らせると怖いよ」
「ふっ、一体何があったんだか。
さて、次はシエラ神だな。月と混沌を司る女神で、アメストリアやジェイドなんかの貧民区では信者が多い。アステル神とは双子の姉妹だって神話が有名だな。属性は闇だ」
「はーいっ!シエラ様はね、立場の弱い人間や影に埋もれた人間が好きで、どんなに恵まれない人にも平等に愛を与えてくれるんだよ!」
「さすがに自分の主神には詳しいな。シルビオが言う通り、貧困層や同性愛者といった社会的弱者からの信仰を集めているのが特徴だ。反対に、貴族階級や官僚なんかの高い身分の人間からは嫌われがちだな。それ故に信者の絶対数は国全体で見ればアステル教やエイリス教には届かない」
「いい神様なんだけどねぇ……」
「……シエラ教の教義は、良くも悪くも自分優位だからな。信徒も癖が強い奴が多い」
「何で俺の方見て言うの?!」
「まぁ間違っちゃいねえな」
「ユーガまで?!!」
「分かったから睨むな。…悪い話が広まりがちだが、シエラ神自体は人間愛の強い聖神だからな。シルビオみたいに、人懐っこくてコミュニケーション能力が高い奴は多いんじゃないか。良い奴も悪い奴もいるのは他宗派と変わらん」
「……ふふ、ユーガのそういうとこ好き~」
「はいはい、そうかい。
じゃあ次、ライゼン神。戦と勝利の男神で、とにかく物騒な逸話が多い神だ。ヘルヴェティアのアステル教会区外とか、アメストリアの僻地とか、辺鄙な場所に住んでる奴がよく信仰してるイメージがあるな。あと、属性が雷で攻撃向きなこともあって、傭兵とかゴロツキとか、喧嘩っ早い荒くれ者が多いかな」
「何と言うか……シエラ教以上に他宗派からは嫌われがちというか、問題を起こした奴がライゼン教徒っていう話は飽きるほど聞いたな」
「んー、まぁ、うちの酒場にいちゃもんつけてくる人とかにも多い気はするね」
「確かに、血の気が多いって特徴は他宗派に比べると強いだろうな。その代わり、同宗派の者に対する仲間意識は群を抜いている印象だな。同教の人間には優しいが、他教の人間には遠慮がない……っていう分かりやすい宗派だ」
「他の人達にももうちょっと思いやり持ってくれたらいいんだけどねぇ」
「戦神の崇拝者なんてそんなもんだろ。他人に期待しすぎない方がいいぞ。
最後、クライヤ神。土属性を司る男神で、創造や破壊といった根源的な現象に関わっているらしい、恐らく現在の五大神の中で一番古い神だ。主神の逸話の通り、物作りや鍛治の才能に長けた者が多いな」
「なんていうか、皆仕事熱心だよね。酒場に来なくなったと思ったら食事忘れて干からびかけてたみたいなことあったし……」
「主神が人間の負の感情を祈りの代わりに受け取る邪神だからな。クライヤ教の教会が率先して信者を競わせて、より良い武器を作らせてクライヤ神に奉納してるとか……」
「良くも悪くも独立した派閥って印象だな。武器や家具を買う時にはよく世話になるが、それ以外での関わりがほとんど無い。この大陸の特産品の宝石とか鉱石がよく取れるコラッロ地区に大半の信者が集まってるし、人数比としては最も少なく感じるな」
「……そんな感じで、三限は終わりだ。いやぁ、優秀な生徒が来てくれて良かったよ」
「俺は優秀じゃないの!?」
「まぁ、手のかかる奴は可愛いものなんじゃないか?教師の立場的には」
「う、うーん、複雑だなぁ……」
「というわけで、少し休憩しよう。軽食でも作るか」
「わーい、やった~!ヴォルガも一緒に食べよ!」
「ん……仕方ないな」
(つづく?)
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