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特別編
教えてユーガ先生!〜王国の成り立ち編
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※序章読了後にお読み下さい
※メタ要素があります
※失われた海編の続きです
──────────────────────
シルビオ「……ふーん。その変な紙に魔力が篭ってたから、命令に逆らえなくなっちゃったの?」
ユーガ「あぁ、うん、そうだな……でも、ただ喋るだけだし、いいかなって」
「そういう問題じゃないんだけど……早く呼んで欲しかったなぁ」
「悪い悪い、寝てるのかと思ってさ。で、どうする?破くのか?」
「う~ん……でも、確かに悪い感じはしないんだよなぁ……俺もユーガの授業、久々に聴きたいなぁ……」
「はいはい、分かりましたよ。コーヒーでいいか?」
「えへへ、砂糖とミルク多めでね」
【教えて!ユーガ先生~王国の成り立ち編】
「……つー訳で、生徒が一人増えたところで二限目だな。次は、俺たちが今住んでいる中央大陸の『王国』について話していこうと思う」
「お願いしまーす」
「まずは、この国の成り立ちから。覚えてるか?」
「あ、あれ、俺が答えるの……?え、えっとぉ、元々ここには神様がいっぱいいて、色んな神様を信仰する人たちがそれぞれ都市国家を作って対立してた……だよね?」
「……ざっくりしすぎだが、まあいいだろう。
太古の昔から、ここには通常の生物とは違う『自然生命体』と言うべきモノが棲んでいた。炎や水、風や土など、自然から発生する現象から生まれた特殊な生命─それらは、『精霊』と名付けられて土地に定着していった。
この大陸は元々自然豊かだから、彼らも日に日に数を増していった。その中で、特に強力な力を得た個体が幾つか現れる。それが『神』─自然の範疇を超え、物理法則や概念までも司ることとなる、全能の存在だ。
精霊は強い自我を持たず、生に目的もなくただ浮遊するだけの漠然とした塊だ。だが、神には自我があった。彼らは彼らが暮らす土地の発展を望み、様々な動植物をそれぞれの能力によって進化させてきた。俺達人間も、神同様に知恵持つ生物が欲しいという神々の単なる思い付きで生み出されたもの、というのが様々な神話で語られている定説だな」
「しんわ…って、王国統一前の話のことだっけ?」
「よく覚えてるじゃないか。ここら辺の話は、教典に書かれているようなものでもないからな。まぁ、俺は信徒じゃないから関係ないし、そこから話すけど。
という訳で、人間は神々の庇護の下で生活を営んできた。知恵を持った人間は、従来の生物よりも遥かに複雑な文化を築き上げた。神々はそれを喜び、信奉する者へ自らの力の一部を貸し与えることにした。それが、『魔法』だ」
「神様は人間から祈りを受け取って、その対価として人間は神様から魔法を与えられる……だよね?」
「その通り。魔法については後で詳しく説明するから今は割愛する。ともかく、精霊の能力が人間に扱えるようになった、と思ってくれればいい。超常的な力を手に入れた人間の文明は瞬く間に発展していき、大陸の各地に様々な都市が発生することとなった。
…しかし、ここで問題が生まれる。はい、シルビオ」
「ふぇっ?!あ、えっと、うーんと……神様がいっぱいいて、喧嘩しちゃった……んだよね?」
「ものすごくふわふわしてるな……大体合ってるが。
精霊には属性がある。前述した炎や水が代表的だな。だから、神にも属性がある。信奉する神によって、与えられる魔法の属性も変わるんだ。これが、古代の都市群の多様性に繋がったと言われている。
その一方で、属性が異なる神同士での対立が増えていった。光と闇みたいに、主義主張が相反する属性もあったからな。結果、それは都市同士の諍いに発展し、大陸各地で己が信奉する神の覇権を賭けた戦争へと至った。端的に言うと、神をリーダーとした集団バトルロイヤルってところか。所謂宗教戦争ってやつだな」
「戦争かぁ……人、いっぱい死んじゃったんだよね?」
「ああ。人も、神もな。
神は人間からの祈りを受け取り力を得る性質を持つ。逆に言えば、祈りを捧げる人間がいなくなれば力の源が消滅する。即ち存在の消滅だ。
都市が滅亡していくにつれ、自身を崇める人間を失い消滅していく神が増えていった。最盛期は数百数千といたと言われている神々はみるみるうちに数を減らし、戦争末期には一桁までになったと言う。
一方で、都市が都市を飲み込んで大きくなり、人間達は数を徐々に増やしていった。最終的には都市は一つに纏まり、それが『王国』と呼ばれる現在の国家の原型となった。宗教対立も大勢が決しつつあった。中でも決定的だったのは、古代で最も有名な若き騎士王─」
「アルヴィス様だよね!!」
「うおびっくりした……そうだな。史上初の平民から成り上がった王で、着任当時は十八歳だったとか。しかしその手腕は見事なもので、五人の近衛騎士と共に貴族中心の社会を根本から覆す大改革を成し遂げた。若くして亡くなってしまったが、そこのシルビオみたいに今でも憧れる人間は多い。まさに伝説の王だな。
…話を戻すが。彼はアステル教徒であり、彼の影響で平民層は大多数がアステル教を信仰するようになった。それを受けて、当時生き残っていた五柱の神が同盟を結び、長らく続いた宗教戦争はアステル教優位で終息したって訳だ。今もその流れは変わらないな」
「地域によって違うって言うし、ジェイドはシエラ教徒が多いけど……それでもアステル教の教会あちこちにあるもんね~」
「そうだな。リーリエもアステル教徒だし、最近来たヴォルガも……」
「……何だ?」
「「?!」」
(つづく)
※メタ要素があります
※失われた海編の続きです
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シルビオ「……ふーん。その変な紙に魔力が篭ってたから、命令に逆らえなくなっちゃったの?」
ユーガ「あぁ、うん、そうだな……でも、ただ喋るだけだし、いいかなって」
「そういう問題じゃないんだけど……早く呼んで欲しかったなぁ」
「悪い悪い、寝てるのかと思ってさ。で、どうする?破くのか?」
「う~ん……でも、確かに悪い感じはしないんだよなぁ……俺もユーガの授業、久々に聴きたいなぁ……」
「はいはい、分かりましたよ。コーヒーでいいか?」
「えへへ、砂糖とミルク多めでね」
【教えて!ユーガ先生~王国の成り立ち編】
「……つー訳で、生徒が一人増えたところで二限目だな。次は、俺たちが今住んでいる中央大陸の『王国』について話していこうと思う」
「お願いしまーす」
「まずは、この国の成り立ちから。覚えてるか?」
「あ、あれ、俺が答えるの……?え、えっとぉ、元々ここには神様がいっぱいいて、色んな神様を信仰する人たちがそれぞれ都市国家を作って対立してた……だよね?」
「……ざっくりしすぎだが、まあいいだろう。
太古の昔から、ここには通常の生物とは違う『自然生命体』と言うべきモノが棲んでいた。炎や水、風や土など、自然から発生する現象から生まれた特殊な生命─それらは、『精霊』と名付けられて土地に定着していった。
この大陸は元々自然豊かだから、彼らも日に日に数を増していった。その中で、特に強力な力を得た個体が幾つか現れる。それが『神』─自然の範疇を超え、物理法則や概念までも司ることとなる、全能の存在だ。
精霊は強い自我を持たず、生に目的もなくただ浮遊するだけの漠然とした塊だ。だが、神には自我があった。彼らは彼らが暮らす土地の発展を望み、様々な動植物をそれぞれの能力によって進化させてきた。俺達人間も、神同様に知恵持つ生物が欲しいという神々の単なる思い付きで生み出されたもの、というのが様々な神話で語られている定説だな」
「しんわ…って、王国統一前の話のことだっけ?」
「よく覚えてるじゃないか。ここら辺の話は、教典に書かれているようなものでもないからな。まぁ、俺は信徒じゃないから関係ないし、そこから話すけど。
という訳で、人間は神々の庇護の下で生活を営んできた。知恵を持った人間は、従来の生物よりも遥かに複雑な文化を築き上げた。神々はそれを喜び、信奉する者へ自らの力の一部を貸し与えることにした。それが、『魔法』だ」
「神様は人間から祈りを受け取って、その対価として人間は神様から魔法を与えられる……だよね?」
「その通り。魔法については後で詳しく説明するから今は割愛する。ともかく、精霊の能力が人間に扱えるようになった、と思ってくれればいい。超常的な力を手に入れた人間の文明は瞬く間に発展していき、大陸の各地に様々な都市が発生することとなった。
…しかし、ここで問題が生まれる。はい、シルビオ」
「ふぇっ?!あ、えっと、うーんと……神様がいっぱいいて、喧嘩しちゃった……んだよね?」
「ものすごくふわふわしてるな……大体合ってるが。
精霊には属性がある。前述した炎や水が代表的だな。だから、神にも属性がある。信奉する神によって、与えられる魔法の属性も変わるんだ。これが、古代の都市群の多様性に繋がったと言われている。
その一方で、属性が異なる神同士での対立が増えていった。光と闇みたいに、主義主張が相反する属性もあったからな。結果、それは都市同士の諍いに発展し、大陸各地で己が信奉する神の覇権を賭けた戦争へと至った。端的に言うと、神をリーダーとした集団バトルロイヤルってところか。所謂宗教戦争ってやつだな」
「戦争かぁ……人、いっぱい死んじゃったんだよね?」
「ああ。人も、神もな。
神は人間からの祈りを受け取り力を得る性質を持つ。逆に言えば、祈りを捧げる人間がいなくなれば力の源が消滅する。即ち存在の消滅だ。
都市が滅亡していくにつれ、自身を崇める人間を失い消滅していく神が増えていった。最盛期は数百数千といたと言われている神々はみるみるうちに数を減らし、戦争末期には一桁までになったと言う。
一方で、都市が都市を飲み込んで大きくなり、人間達は数を徐々に増やしていった。最終的には都市は一つに纏まり、それが『王国』と呼ばれる現在の国家の原型となった。宗教対立も大勢が決しつつあった。中でも決定的だったのは、古代で最も有名な若き騎士王─」
「アルヴィス様だよね!!」
「うおびっくりした……そうだな。史上初の平民から成り上がった王で、着任当時は十八歳だったとか。しかしその手腕は見事なもので、五人の近衛騎士と共に貴族中心の社会を根本から覆す大改革を成し遂げた。若くして亡くなってしまったが、そこのシルビオみたいに今でも憧れる人間は多い。まさに伝説の王だな。
…話を戻すが。彼はアステル教徒であり、彼の影響で平民層は大多数がアステル教を信仰するようになった。それを受けて、当時生き残っていた五柱の神が同盟を結び、長らく続いた宗教戦争はアステル教優位で終息したって訳だ。今もその流れは変わらないな」
「地域によって違うって言うし、ジェイドはシエラ教徒が多いけど……それでもアステル教の教会あちこちにあるもんね~」
「そうだな。リーリエもアステル教徒だし、最近来たヴォルガも……」
「……何だ?」
「「?!」」
(つづく)
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