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これが所謂チュートリアル
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「……異世界でも見える空は同じなんだな」
笑い転げ泣きまくり、鼻水まで垂らしていたのは数分前。
今は仰向けになって空を眺めてる。
歩き出さないのかって?
どこに向かって歩くのさ。明日?明後日?
こちとら異世界に憧れてる夢多き少年少女じゃないんだよ。
見りゃわかるでしょ?
老婆よ老婆。熟々完熟の売れ残りよ?
元いた世界では彼氏なし恋人いたことなしの仕事人間。
同僚や後輩たちがおめかしして“これからデートなんです~”なんて言って、残業人に押し付けて定時で上がっていったことを今でも覚えてる。
いやー…あの時は軽く殺意が芽生えましたね。
仕事ばかりで出会いなんてまるでなく、ただ代わり映えしない毎日を送っていた。
ラノベは好んで読んでいたけど、主人公やヒロインには何故か感情移入できなかった。
それはそうか。生きてきた環境や境遇からしてそもそも違うんだ。
価値観や感性が違うのは当然だと自分を納得させた。
「……よし。うじうじタイム終了!」
起こったこと、過ぎたこと、元に戻らないものは全部過去に放り投げておこう。
未来へ引き継ぐものがあるとすれば、あのダンディな騎士様のことだけで十分よ。
褐色皇子?
何それ不味いでしょ。ぺっしなさい。
聖女の身代わり?
何それ嫌味で言ってんの?
はっ倒すよ?
「とりあえず…この身の寿命が来る前に
あの王都壊滅させるくらいの働きはしなきゃね」
罪を憎んで人を憎まず。なんて言うけどね。罪を憎むような人間なら人だって憎むよ。
それがあの誠意の欠片もない褐色皇子なら尚のことな。
聖女様である彼女を喚ぶために人を身代わりにした挙句、老化させ剰え謝罪も何もせず王都から老婆を追放…。
これ、怒って良いレベル通り越して殺意しかないわ。
「わあ、とても元気そうで安心したよ」
風に乗って聞こえて来た見知らぬ声。なにもない平原だったことはさっき確認した。
なら、今聞こえてきた声は一体どこから…。
「何奴!?」
誰!?
なんて可愛らしい反応、私にできるわけがない。
異世界に飛ばされ右も左もわからない状況下で声が聞こえたら、素じゃなくても女性らしさが見え隠れするだろう。
異世界の人間に会っても素を隠し、衣食住確保のためにか弱い可憐な子を演じるのがセオリーだ。
―― だがしかし!
それを中身アラサー、見た目老婆がやっているのを想像してごらんなさい。
うん。冗談キツいぜ。今すぐにでも自分で自分の墓穴掘ってセルフ土葬したい気分になる。
「ナニヤツ?誰ってことかな?」
「YES!」
見えない存在とこんな風にお喋りする日が来るとは思わなかった。
異世界だからこそできる貴重な体験だね。そこだけは感謝。
「はい。自己紹介します!」
元気いっぱいに返事をした声の持ち主は、その元気な声に見合う容姿をした可愛い小妖精だった。
ファンタジーで登場するエルフのように尖った耳。
ベリーダンスを踊る人が着てるような軽やかな生地のズボン。
涼し気な上着を翻し、透き通った羽をパタつかせ私の周りを飛び回っていた。
「初めまして!聖女召喚の礎にされてしまった異界のお嬢さん
僕の名前は”フィルギャ” 今日から貴方の守護妖精を務めるよ!」
フィルギャと名乗った小妖精はそう言って、小さな手を差し出してきた。
”聖女召喚” ”礎”と口にしていることから、何かを知っていることはたしかだ。
知っていなかったとしても、情報はどんなことでもほしいところだ。
使えるものは使う。それが入社当時に教わった唯一のありがたい教えだ。
「握手するのは君が信用するに足る存在かどうかだね」
我ながら警戒心が強く可愛げもない女だと思う。
ここが自分のいた世界ならここまで警戒することはきっとなかったはずだ。
でもここは異世界。私の知らないことが溢れ返ってる未知の世界。
そんな世界で守護妖精を務めるよ!なんて言われても、おちょくってんのか?
と、悪態をついてしまう。性格悪いと言わないで。慎重で用心深い性格と言って。
「”今回”の異界のお嬢さんはかなり警戒心が強いんだね」
「! ”今回”ってことは、前にも私みたいな老婆になった人がいたんだ…」
「僕が知る限り、貴方は”8人目”だよ」
は…8人目…?
あの褐色皇子…異世界の人間をなんだと思ってるんだ。
そんなに聖女伝説とやらが大事なんかい!
「信用してもらうためには…やっぱり聖女伝説について話すのが良いよね?
どうして王都・クリュスタッロスの王族は聖女召喚にこだわるのか」
うん…たしかにそれも知りたい。
でもそれ以上に知りたいことが山ほどある…が、まずは情報収集だ。
◇
国の始まりは、魔族と疫病から。
人間は魔族の気紛れで生かされてるに過ぎなかった。
まるで魔族の奴隷のように惨めな生活を強いられていた。
明日魔族の気紛れで死ぬかもしれない。今日死ぬかもしれない。数分後に死ぬかもしれない。
人間に安息の時はなかった…。
それを不憫に思った7人の精霊王たちは、エレメントサークルを築き、異世界より聖女を召喚した。
異世界の聖女はとても美しく聡明な女性だった。彼女は精霊王たちの説明を聞くなり、疫病の研究を始めた。
魔族が引き起こしていると思われていた疫病の原因を突き止め、治療薬を作った。
疫病の脅威がなくなったことにより人間たちは、魔族の支配から解放されるため戦いを挑んだ。
魔族の領土を狭め、人間の領土を増やし、聖女と精霊たちの力を借り境界に結界を張り巡り、平和を手に入れた。
魔族との戦いの中で、人々から勇者と呼ばれた男はこの領土を収める王となり、聖女を妻に迎え入れた。
程なくして二人の間には子供が生まれ、国は平和で満たされたのでした。
「これがこの王都の始まりである聖女伝説」
「ベタでつまらない定番中の定番な伝説だね」
「伝説なんていうのはそういうものだよ」
私の言葉にそこまで驚いていないようだ。
普通こういった伝説はその世界の人たちなら誇ったり自慢する歴史そのもののはず。
それなのに”伝説なんていうのはそういうもの”と口にする小妖精のこの態度は一体…。
「人間たちの都合の良い伝説には、精霊王たちも僕ら妖精も飽き飽きしているんだ
むしろこれ以上聖女様を貶めるのは辞めろと言いたい。この話をするのがどれだけ苦痛か…!」
苦虫を噛み潰したような表情に、震わせる小さな拳。人間たちの都合の良い伝説。
なるほど。この聖女伝説は、この世界の人間たちが自分たちの権力を誇示するために作ったもの。
都合の良いところだけを語り継いで仕上げた捏造の歴史ってことだね。
本当の歴史がどんなものなのか知らないし、さしあたり興味がないけど…。
老婆にされた挙句、追放させられた他の聖女たちのあったかなかったかわからない無念と恨みは私が果たすわ!
「次はなにを話そうか」
「この世界に来た時、魔法使いっぽい灰色ローブ君が
”聖女様の呪い”って言ってたんだけど、それってなに?」
「呪いとは”老化”のことだよ
最初の聖女様が老化で亡くなった後、聖女様が張った結界の威力が弱まってしまうことを懸念した王族が
2人目となる聖女様を独自の召喚方法で召喚しようとしたんだ
それを知った魔族は、大量の生贄を捧げ、召喚式の中に呪いを組み込んだんだ」
―― それが”老化”
「人は老化を止めることはできない。老化に伴い寿命も縮む
人間の寿命は僕たち妖精や精霊王、魔族と違い短い
召喚された聖女様が老婆であれば聖女伝説通りではなくなる
今まで召喚されてきた聖女様たちは最期の時まで結界の維持に勤め
その傍ら趣味に没頭していたと語り継いでいるよ
伝説にあるように王族との間に子は儲けてはなかったみたいだけど」
なるほど…魔族、頭が良いな。
異世界からくる聖女も人間なんだから、寿命が短いのは当然。
だったらさっさと寿命を尽きさせてしまえる老婆にしてしまえと考えるのは必至。
伝説に執着しているから、最初の聖女のような美しい女性じゃないと、結婚もしたがらないということだろう。
つまり見た目重視の己の欲望に忠実な種ってことだ。
人は見た目ではなく、中身だ!
と、いう人は何人もいるが、果たして本当にそう思っている人間は何割いるんだろうね。
中身中身と言ってたわりに、親友たちの旦那はチャラ男、イケメン、性格がクズが多かったのは何故だろうか…。
うん。答えは簡単だ。所詮口だけの女だったと言うだけのことだ。
「次はなにを話そうか」
「守護妖精って言ってたけど、具体的に何してくれるの?」
「貴方の寿命の枯渇を遅延させ、能力強化効果を付与する力を授けるよ
今の貴方は呪い持ちだから、能力弱体効果を付与できる力を持ってるけどね」
「寿命の枯渇を遅延…ん?
老化の呪い持ちがなんで弱体効果付与できる力持ってるの!?
老化が呪いならそれ以上のものにはならないでしょ」
「組み込まれた呪いは一つじゃないんだよ
老化の他に衰弱と能力弱体効果の付与が入っているんだ
老化に伴い衰弱するのは当然のことだから、老化と一括りにしているんだけどね
弱体効果の付与は6人目の聖女様が召喚された後に組み込まれたものらしいんだけど
なんでも6人目の聖女様の趣味が料理で、それを食べたクリュスタッロスの人々の能力が上昇し
戦力が格段に上がったらしいんだ。そして人間たちは魔族からさらに領土を奪取した
ならば次の聖女様には弱体させる呪いをかけてやれってなったんだ」
やられたらやり返せな考え方か。
大人なんだから話し合って解決しろよと言いたくなるな。
だけど領土の問題は話し合って解決できるようなものじゃないか。
資源が豊富な領土であれば絶対手放せないし領土が減れば人口密になって、農作物なんかの生産も追いつかなくなる。
終いには口減らしされるのが関の山…。
そういうものにはなるべく関わらないよう注意しなきゃ。
老婆にされた私の残り寿命がわからないんだから、一分一秒大切にしたいものだ。
そしてなによりも重要なのが、あの褐色皇子をボコすことだ。
やられたらやり返せ。
異世界に送れるなら、あの褐色皇子を同様に異世界に飛ばしてやりたい。
けどそれやると飛ばした先の異世界の方々の迷惑になりそうだよね。
絶対あの褐色皇子わがまま坊ちゃんだぜ?
やいのやいのして家臣困らせるタイプだぜきっと。
そしてそれをやったらあの褐色皇子たちと同種に成り下がってしまう。
私性格破綻してるけど、あれと同種にはなりたくないな。
「……ふっ」
「?」
であるなら、歴代の聖女様たちが受けた呪い。
この世界に現存するありとあらゆる呪いの数々。
全部まとめて付与してやろうじゃないの!
低級ランクなんて言わねぇぞ!
目指すはオール最上級ランクの呪い装備だ!
「私の名前はアキラ・モリイズミ。これからよろしく、フィルギャ」
「!……はい!」
笑い転げ泣きまくり、鼻水まで垂らしていたのは数分前。
今は仰向けになって空を眺めてる。
歩き出さないのかって?
どこに向かって歩くのさ。明日?明後日?
こちとら異世界に憧れてる夢多き少年少女じゃないんだよ。
見りゃわかるでしょ?
老婆よ老婆。熟々完熟の売れ残りよ?
元いた世界では彼氏なし恋人いたことなしの仕事人間。
同僚や後輩たちがおめかしして“これからデートなんです~”なんて言って、残業人に押し付けて定時で上がっていったことを今でも覚えてる。
いやー…あの時は軽く殺意が芽生えましたね。
仕事ばかりで出会いなんてまるでなく、ただ代わり映えしない毎日を送っていた。
ラノベは好んで読んでいたけど、主人公やヒロインには何故か感情移入できなかった。
それはそうか。生きてきた環境や境遇からしてそもそも違うんだ。
価値観や感性が違うのは当然だと自分を納得させた。
「……よし。うじうじタイム終了!」
起こったこと、過ぎたこと、元に戻らないものは全部過去に放り投げておこう。
未来へ引き継ぐものがあるとすれば、あのダンディな騎士様のことだけで十分よ。
褐色皇子?
何それ不味いでしょ。ぺっしなさい。
聖女の身代わり?
何それ嫌味で言ってんの?
はっ倒すよ?
「とりあえず…この身の寿命が来る前に
あの王都壊滅させるくらいの働きはしなきゃね」
罪を憎んで人を憎まず。なんて言うけどね。罪を憎むような人間なら人だって憎むよ。
それがあの誠意の欠片もない褐色皇子なら尚のことな。
聖女様である彼女を喚ぶために人を身代わりにした挙句、老化させ剰え謝罪も何もせず王都から老婆を追放…。
これ、怒って良いレベル通り越して殺意しかないわ。
「わあ、とても元気そうで安心したよ」
風に乗って聞こえて来た見知らぬ声。なにもない平原だったことはさっき確認した。
なら、今聞こえてきた声は一体どこから…。
「何奴!?」
誰!?
なんて可愛らしい反応、私にできるわけがない。
異世界に飛ばされ右も左もわからない状況下で声が聞こえたら、素じゃなくても女性らしさが見え隠れするだろう。
異世界の人間に会っても素を隠し、衣食住確保のためにか弱い可憐な子を演じるのがセオリーだ。
―― だがしかし!
それを中身アラサー、見た目老婆がやっているのを想像してごらんなさい。
うん。冗談キツいぜ。今すぐにでも自分で自分の墓穴掘ってセルフ土葬したい気分になる。
「ナニヤツ?誰ってことかな?」
「YES!」
見えない存在とこんな風にお喋りする日が来るとは思わなかった。
異世界だからこそできる貴重な体験だね。そこだけは感謝。
「はい。自己紹介します!」
元気いっぱいに返事をした声の持ち主は、その元気な声に見合う容姿をした可愛い小妖精だった。
ファンタジーで登場するエルフのように尖った耳。
ベリーダンスを踊る人が着てるような軽やかな生地のズボン。
涼し気な上着を翻し、透き通った羽をパタつかせ私の周りを飛び回っていた。
「初めまして!聖女召喚の礎にされてしまった異界のお嬢さん
僕の名前は”フィルギャ” 今日から貴方の守護妖精を務めるよ!」
フィルギャと名乗った小妖精はそう言って、小さな手を差し出してきた。
”聖女召喚” ”礎”と口にしていることから、何かを知っていることはたしかだ。
知っていなかったとしても、情報はどんなことでもほしいところだ。
使えるものは使う。それが入社当時に教わった唯一のありがたい教えだ。
「握手するのは君が信用するに足る存在かどうかだね」
我ながら警戒心が強く可愛げもない女だと思う。
ここが自分のいた世界ならここまで警戒することはきっとなかったはずだ。
でもここは異世界。私の知らないことが溢れ返ってる未知の世界。
そんな世界で守護妖精を務めるよ!なんて言われても、おちょくってんのか?
と、悪態をついてしまう。性格悪いと言わないで。慎重で用心深い性格と言って。
「”今回”の異界のお嬢さんはかなり警戒心が強いんだね」
「! ”今回”ってことは、前にも私みたいな老婆になった人がいたんだ…」
「僕が知る限り、貴方は”8人目”だよ」
は…8人目…?
あの褐色皇子…異世界の人間をなんだと思ってるんだ。
そんなに聖女伝説とやらが大事なんかい!
「信用してもらうためには…やっぱり聖女伝説について話すのが良いよね?
どうして王都・クリュスタッロスの王族は聖女召喚にこだわるのか」
うん…たしかにそれも知りたい。
でもそれ以上に知りたいことが山ほどある…が、まずは情報収集だ。
◇
国の始まりは、魔族と疫病から。
人間は魔族の気紛れで生かされてるに過ぎなかった。
まるで魔族の奴隷のように惨めな生活を強いられていた。
明日魔族の気紛れで死ぬかもしれない。今日死ぬかもしれない。数分後に死ぬかもしれない。
人間に安息の時はなかった…。
それを不憫に思った7人の精霊王たちは、エレメントサークルを築き、異世界より聖女を召喚した。
異世界の聖女はとても美しく聡明な女性だった。彼女は精霊王たちの説明を聞くなり、疫病の研究を始めた。
魔族が引き起こしていると思われていた疫病の原因を突き止め、治療薬を作った。
疫病の脅威がなくなったことにより人間たちは、魔族の支配から解放されるため戦いを挑んだ。
魔族の領土を狭め、人間の領土を増やし、聖女と精霊たちの力を借り境界に結界を張り巡り、平和を手に入れた。
魔族との戦いの中で、人々から勇者と呼ばれた男はこの領土を収める王となり、聖女を妻に迎え入れた。
程なくして二人の間には子供が生まれ、国は平和で満たされたのでした。
「これがこの王都の始まりである聖女伝説」
「ベタでつまらない定番中の定番な伝説だね」
「伝説なんていうのはそういうものだよ」
私の言葉にそこまで驚いていないようだ。
普通こういった伝説はその世界の人たちなら誇ったり自慢する歴史そのもののはず。
それなのに”伝説なんていうのはそういうもの”と口にする小妖精のこの態度は一体…。
「人間たちの都合の良い伝説には、精霊王たちも僕ら妖精も飽き飽きしているんだ
むしろこれ以上聖女様を貶めるのは辞めろと言いたい。この話をするのがどれだけ苦痛か…!」
苦虫を噛み潰したような表情に、震わせる小さな拳。人間たちの都合の良い伝説。
なるほど。この聖女伝説は、この世界の人間たちが自分たちの権力を誇示するために作ったもの。
都合の良いところだけを語り継いで仕上げた捏造の歴史ってことだね。
本当の歴史がどんなものなのか知らないし、さしあたり興味がないけど…。
老婆にされた挙句、追放させられた他の聖女たちのあったかなかったかわからない無念と恨みは私が果たすわ!
「次はなにを話そうか」
「この世界に来た時、魔法使いっぽい灰色ローブ君が
”聖女様の呪い”って言ってたんだけど、それってなに?」
「呪いとは”老化”のことだよ
最初の聖女様が老化で亡くなった後、聖女様が張った結界の威力が弱まってしまうことを懸念した王族が
2人目となる聖女様を独自の召喚方法で召喚しようとしたんだ
それを知った魔族は、大量の生贄を捧げ、召喚式の中に呪いを組み込んだんだ」
―― それが”老化”
「人は老化を止めることはできない。老化に伴い寿命も縮む
人間の寿命は僕たち妖精や精霊王、魔族と違い短い
召喚された聖女様が老婆であれば聖女伝説通りではなくなる
今まで召喚されてきた聖女様たちは最期の時まで結界の維持に勤め
その傍ら趣味に没頭していたと語り継いでいるよ
伝説にあるように王族との間に子は儲けてはなかったみたいだけど」
なるほど…魔族、頭が良いな。
異世界からくる聖女も人間なんだから、寿命が短いのは当然。
だったらさっさと寿命を尽きさせてしまえる老婆にしてしまえと考えるのは必至。
伝説に執着しているから、最初の聖女のような美しい女性じゃないと、結婚もしたがらないということだろう。
つまり見た目重視の己の欲望に忠実な種ってことだ。
人は見た目ではなく、中身だ!
と、いう人は何人もいるが、果たして本当にそう思っている人間は何割いるんだろうね。
中身中身と言ってたわりに、親友たちの旦那はチャラ男、イケメン、性格がクズが多かったのは何故だろうか…。
うん。答えは簡単だ。所詮口だけの女だったと言うだけのことだ。
「次はなにを話そうか」
「守護妖精って言ってたけど、具体的に何してくれるの?」
「貴方の寿命の枯渇を遅延させ、能力強化効果を付与する力を授けるよ
今の貴方は呪い持ちだから、能力弱体効果を付与できる力を持ってるけどね」
「寿命の枯渇を遅延…ん?
老化の呪い持ちがなんで弱体効果付与できる力持ってるの!?
老化が呪いならそれ以上のものにはならないでしょ」
「組み込まれた呪いは一つじゃないんだよ
老化の他に衰弱と能力弱体効果の付与が入っているんだ
老化に伴い衰弱するのは当然のことだから、老化と一括りにしているんだけどね
弱体効果の付与は6人目の聖女様が召喚された後に組み込まれたものらしいんだけど
なんでも6人目の聖女様の趣味が料理で、それを食べたクリュスタッロスの人々の能力が上昇し
戦力が格段に上がったらしいんだ。そして人間たちは魔族からさらに領土を奪取した
ならば次の聖女様には弱体させる呪いをかけてやれってなったんだ」
やられたらやり返せな考え方か。
大人なんだから話し合って解決しろよと言いたくなるな。
だけど領土の問題は話し合って解決できるようなものじゃないか。
資源が豊富な領土であれば絶対手放せないし領土が減れば人口密になって、農作物なんかの生産も追いつかなくなる。
終いには口減らしされるのが関の山…。
そういうものにはなるべく関わらないよう注意しなきゃ。
老婆にされた私の残り寿命がわからないんだから、一分一秒大切にしたいものだ。
そしてなによりも重要なのが、あの褐色皇子をボコすことだ。
やられたらやり返せ。
異世界に送れるなら、あの褐色皇子を同様に異世界に飛ばしてやりたい。
けどそれやると飛ばした先の異世界の方々の迷惑になりそうだよね。
絶対あの褐色皇子わがまま坊ちゃんだぜ?
やいのやいのして家臣困らせるタイプだぜきっと。
そしてそれをやったらあの褐色皇子たちと同種に成り下がってしまう。
私性格破綻してるけど、あれと同種にはなりたくないな。
「……ふっ」
「?」
であるなら、歴代の聖女様たちが受けた呪い。
この世界に現存するありとあらゆる呪いの数々。
全部まとめて付与してやろうじゃないの!
低級ランクなんて言わねぇぞ!
目指すはオール最上級ランクの呪い装備だ!
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「!……はい!」
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