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第1章

第19話

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「………………」

 頭がボーっとして目が覚める。

 無理だ……

 フランが敵? 味方? 味方だったとしても何の戦力にもならない。

 クロードは頑張ってくれるけど、敵わない。

 外には逃げられない。

 詰んだ……

 でも、やらなきゃ! もう死にたくない!!



 「どうしたんですか? もうみなさん玄関に集まっていますよ」

 (ココ……こいつ何処に行ってんの?まぁいいわ。やってやろうじゃない!!なぜか何回でも生き返るんだから!)


 リディアは一階に降りるとセバスに甲冑の防衛装置を切ってもらい、今回はフランと遊ぶ事にする。そして

「メッフィ、早く帰って来れないなら何か身を守る物ない?」

「身を守る物? ふむ。貞操帯とかですか?」

「ふざけてる訳じゃないの。何かない?」

「ふむ。ではこの指輪をどうぞ」

 メッフィは自分の小指に着けていた指輪を外しリディアへと渡す。小声でふざけていないですが……  と呟いていた

「これは?」

「ピンキーリングです。 あははっ冗談ですって。顔が怖いですよ。この指輪は1日に3回だけですが身を守る障壁、相手を弾き飛ばす拒絶、傷を回復する治癒の中から選んで使えます」

 またしても冗談のような答えに睨みを効かせるリディア。あまりの形相にメッフィも直ぐに本当の効果を教える


「わかったわ、ありがとう!」

「いえいえ、それでは。リディアお嬢様もお気をつけて」

 (相手は結構直ぐに襲ってくる。フランちゃんを守りながら、メッフィが帰ってくるまで隠れられる所を探さないと)

「お姉ちゃん?」

 険しい顔をして黙り込むリディアをフランは心配そうに覗き込む

「あっ、ごめんねー。実はね今日はかくれんぼする予定だったの!!」

「かくれんぼ! やりたーい!」

「でしょ? それでね、鬼さん役をやってくれる人がこれから来るから、それまでに隠れなきゃ行けないの。一緒に隠れよう?」

「わかったぁ!」

 隠れ場所を探して歩いていると前回あったメイドのクレタさんに出会った

「あっ! クレタさん! 突然なんだけど、この屋敷で絶対に見つからないような場所ってどこか知らないかしら?」

「おはようございます、お嬢様。かくれんぼとかですか? 絶対に見つからない場所なら一カ所心当たりがあります」

 リディアに話しかけられたクレタは初め驚き目を見開いていたが丁寧に教えてくれた

(あっ、そうか! 今回は初めてクレタさんに会うから名前知らない筈だったんだ! 普段からメイド全員の名前を覚えている立派な令嬢って事で誤魔化せるかな?)

 クレタに付いて行くとそこは応接室だった。
 
「ここに隠し扉がございます」

 そう言ってクレタが応接室の本棚の奥を何やら弄っている。
 すると本棚が横にズレるようにひらき間に通路が出来る。

「ほへー。こんな所あったんだー?」

「ここはユーズ・ロン様が当主になるよりも前も代々伯爵家の別邸などとして使われていたんです。建物自体は建て直されているのですが、実はこの土地の下には地下牢があるのです。これはそこに行く為の道ですね」

 地下牢と聞いて怖くなったのか、フランがぎゅっとリディアの服の裾を掴む

「その地下牢を作った当時の当主には、ちょうど、そのお嬢様ぐらいの年恰好のお子様がいらっしゃったようです。だだ、屋敷に侵入した賊に無残にも殺されてしまったようです」

 クレタの話を聞いて何となく、リディアは今回の犯人はその亡くなったというお嬢様の怨念なのだろうかと考える

 (うー、怨念だったら地下牢とか隠れても見つかりそう……)

 本棚の通路の先、行き止まりの床でまたクレタが操作する

「こちらです。」

 床が開き、地下へと続く階段が口を開ける。
 地下は薄暗くはあったが真っ暗では無かった。微かに壁が発光しているのだ。クレタが燭台に火を灯すともっとハッキリと見える様になった。
 入り口を閉めると、とても静かで気温も下がり、あんなに暑かった外の熱気が嘘のようにひんやりとしていた。

 少し歩くと錆びた牢が見えてくる。1番手前の牢の中には白骨化した亡き骸が横たわっていた。

「きゃあっ」

リディアが思わず悲鳴をあげる。フランは口に手を当てて声も出ないようだ。

「先程のお話しには続きがございまして。大事な1人娘を殺された当主は娘の側仕えだったメイドが大した傷もなく生きているのが不服だったようで、そのメイドを地下牢に閉じ込めたようです」

「じゃあ、この遺骸はそのメイドさん?」

「かも知れませんね……」

「そのメイドさんはなんで賊に殺されなかったのかしら?小さな子供にも手をかける様な賊なのに」

「……お嬢様を守る為に力のないメイドに出来る事は? なにも争うばかりではありません。結局約束は果たされなかったようですが」

 それ以上、リディアもクレタも黙り込み、地下牢の床に座り込む。

 静かに時間だけが過ぎていく。何故かフランも何も言わず静かに付き従ってくれている。時折、右手の親指の爪を噛んでいる所をみると少なからずストレスがあるのだろう。
 こんな地下でしかも白骨遺体と一緒なんていくらかくれんぼだと言っても異常だと思うだろう。

 (いつまでもつかな……)

 「お嬢様、どうやら誰か帰って来たようですよ。」

 どれくらい経ったねだろう。薄暗い地下では時間の感覚が曖昧になってくる。いつの間にかフランは寝てしまったようだ。意外と図太い神経をしているかもしれない。

「何も聞こえないけど?」

 クレタが誰かが帰って来たっいうがこの地下牢では一切の音は聞き取れなかった。

「もしかしたら怨霊かも?」

「ふふっ、大丈夫ですよ。大勢の足音が聞こえますから」

「えー? 聞こえる? 何も聞こえ無いけどなぁ?」



 クレタに促されフランを起こして地下牢から出ると、一階ホールにメッフィ達の姿があった


「これはこれはリディアお嬢様。ご無事で何よりです」

「もう2日たったの?思ったより早かったわね」

「何をおっしゃいますやら。まだ半日しか経っていませんよ。ところで今までどちらにいらしたんですか?」

 2日にしては早いと思ったがまさか半日しか経っていなかったとは、リディアは少しがっくりしたが、珍しく焦った表情のメッフィが見れたから良しとする事にした。

「地下牢よ。それよりも大変!! この屋敷呪われているわよ! なんか悪霊がいるかも! メッフィどうにかしなさい!」

「悪霊? 悪魔の間違いではなくて? ふふっ、それよりもご紹介したい方が。アランさん、こちらへ」

 メッフィにアランと呼ばれて出て来たのはフランと同じ姿形をした少女だった

「あー!! 悪霊!! 怨霊!!」

「初めまして、でいいのかな?リディアお姉ちゃん」

「ど、どういう事?」

 アランはツインテールのカツラを取ると地毛のショートヘアーを晒した。顔立ちはやはりフランと瓜二つだ。そこにフランが近寄り並び立つ

「私達、双子の兄妹なの。ごめんね、リディアお姉ちゃん」

「この子達は魔界の由緒あるヴァンパイアの家系の双子なんですよ、今回協力して頂きました」

「ねーねー、俺とフランどっちが多く殺した?」

「はっ?」

 意味がわからないリディアはメッフィに説明を求める視線を飛ばす

「ふふっ、いつもいつも暑い暑いとおっしゃっているリディアお嬢様の為に、ホラーで涼しくなって頂こうかと思いまして」

「えっ? 全部もしかして?」

「はい! 仕込みです!!」

 清々しいほど爽やかな笑顔だった

「リディアお嬢様には死んだらループする魔法をかけまして、ループモノを楽しんでもらおうかと」

「そんなぁ……うぅ、ぐすっ」

 その場にヘナヘナと座り込み泣き出すリディアだった。

「流石に今回のはやり過ぎでしょうよーー!!」

「あっ、その泣き顔niceです!」








~~~~~~~~~~
 後日談

「リディアお嬢様、ところで地下牢ってどこですか?」

「地下牢は地下牢よ。メイドのクレタが教えてくれたわ」

「クレタ……はて? そんなメイド居ませんが?」

「はっ? はー? まーたそうやって怖がらせようとしてーー!」

「いえいえ、本当に。フランさん、一緒に居たんですよね?」

「それなんだけど……  リディアお姉ちゃんが途中からブツブツ独り言いいだして、とうとう精神病んじゃったのかなって。私達は何度目のループなのか知らないから……。変な地下に連れられたらメッセージの魔法も使えなくなるし、リセットかけていいのかわからないし。ちょっと怖かったわ」


「え? えー?」

「連絡が取れなくなったので急遽帰ってきたんですよ」

「はははっ、クレタさんが幽霊だったって事……  因みにクレタさんの助け借りないとクリア出来なそうだったんだけど?」

「あー、あれはですね。誤作動している機械人形とクロードさんとでアランを足止めして、屋上で捕らわれているココさんを助けだし、一緒に選別の薔薇を作動させている魔導士を倒し、フランさんのメッセージで私を呼んでもらいつつ、選別の薔薇を突破した先でドラゴンと戦うのですが、私があげた指輪で何とか攻撃を掻い潜り、あと一歩といった所でやられそうになりますが! リディアお嬢様が私の名前を力いっぱい叫ぶ事で、颯爽と私が現れドラゴンをやっつけます」

「無理だろ、それ」

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