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第1章

第4話

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 時は少し戻り、クライヴ王太子がレヴィアに婚約破棄をした夜会の後の事……

 王都の中、貴族街でも端の方にあるフライス男爵邸。

 領地を持たない男爵位であり、当主のマーク・フライスは王城で文官として働いている。

 特に政治に長けている訳ではないが、人当たりが良く世渡りが上手だった。
 目が大きかったが鼻も口も大きかった。親同士が決めた許嫁のマリーと結婚したが、マリーは目も小さいが鼻も口も小さく、身体の線も細かった。

 マークは子供が出来たと聞いたとき、自分のデカい鼻などが遺伝しない事を祈っていたが、産まれて来た子は奇跡的にマークとマリーのいいところのみを集めたような可愛さだった。

 ベルと名付け、マークはとても可愛がったが、それゆえに甘やかし過ぎて育てた。


 ベルが年頃になるとその我儘ぶりに手を焼くようになるが、その可憐さは日に日に花開き、遂には王太子とお近づきになれたと聞いた時にマークは夢見てしまった。

 王太子には婚約者がいるが、もしもその婚約が無効になれば……
  我が娘、ベルが王太子妃になれるのではないかと。



 「よくやったなベルよ。 これであのバカ王子はお前を選ぶだろうな。」

 「よくやったじゃないわよ!! 私、あのクソ女に殴られたんですけど!! ありえないわ! 皆んなの前であんな恥かかせやがって!!」

 鼻にティッシュを突っ込んで憤慨するベル

 「まぁまぁ、そんな夜会の席で婚約破棄などする方が悪い。まぁあのバカ王子が予想以上にバカだっただけだがな。まぁお蔭で大衆に王太子が婚約破棄を告げた事が伝わるし、お前が殴られた事で多少同情もつくだろう。」


 「はぁ? 同情されるなんて真っ平なんだけど! 許せないわ! パパ、何かいい案ないの?」

 「いい案と言ってもねぇ……  まさか殺す訳にもいかないしなぁ。」

 マークがうんうん唸りながら呟くとマリーはそれを聞き逃さなかった。


 「いい事思いついたんだから!!」

 「……  いい事?」

 とても邪悪な笑みを浮かべる我が娘に若干引き気味にマークは聞き返す。


 「ねーパパ、ちょっとお金貸して! それととっても悪い人、もしくはとーーーっても悪い人を知っている人紹介して!」

 そう言ってベルは花が咲いた様に笑う。

 子供が悪戯を仕掛けた時のような可愛らしい笑みを浮かべているが、マークにはやはり邪悪な笑みにしか見えなかった。

 
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