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第1章
第3話
しおりを挟む「私の名前はメフィストフェレス。お嬢さん、貴女の全てをくれるならどんな望みでも叶えてあげましょう。」
黒髪の悪魔が囁く。大きい声ではないが、直ぐ耳元で囁かれるような怖気を感じる声だ。
「んーっ、 んー!!」
「おや、これは失礼しました。猿轡をされていたら話せませんね。」
そう言ってメフィストフェレスは指を鳴らす。
すると猿轡も腕を拘束していたロープもひとりでに解け、ポトリと落ちる。
猿轡が外れても余りの出来事にレヴィアは口を開けずにいる。
身体中痛いし泥だらけ、更には涙に鼻水まで流れている。公爵令嬢にはとても見えないレヴィアだが、メフィストフェレスはその姿を見ても嘲る素振りは一切ない。
「お嬢さん。私としては一晩中でも貴女の答えを待っていてもいいのですが、彼、そろそろ限界ですよ。」
そう言ってメフィストフェレスはクロードの方を見る。
「ク、クロード生きてるの!?」
「えぇ、今のところは。貴女が契約をして下さるなら、特典としてこの騎士、そこのメイド、それと御者を助けましょう。」
レヴィアは落ち着きかけていた心臓がまた激しく高鳴ったのがわかった。
「助けられるの?お願い! ココを助けて!! 契約でもなんでもするから!」
「では、契約成立と言う事で。右手を出して下さい。」
レヴィアが右手を出すと、メフィストフェレスは跪き右手の甲にキスをする。
すると右手の甲に青白い魔方陣が浮かび、一度強く発光すると、すうっと消えていった。
レヴィアが不思議そうに右手を見ていると、メフィストフェレスは両手を胸の前で合わせると光の球が出来上がる。
「では、少し急ぎますね。」
メフィストフェレスがそう言ってもう一度両手を合わせると光の球は3つに分かれて飛んでいく。
うつ伏せに倒れている騎士
袈裟斬りに斬られている侍女
首の無い御者へ……
~~~~~~~~~
「あの~クロードはいいんですけれど…… なんかちゃんと生き返ったみたいなので…… でも、他の2人がちょっっっっっとイメージと違うというか…… 。」
レヴィアがメフィストフェレスに対して、若干遠慮しがちに不満を漏らす。
「そこの騎士君は、まだ息がありましたからね。ただ致命傷を負っていたので、不死者になって頂きました。病気もしないですし長生きできると思いますよ。」
「レヴィアお嬢様ありがとうございます。自分の為に悪魔などと契約していただいて…… この命にかえましても今後2度とお嬢様を傷付けさせません!!」
「死なないですけどね。」
クロードがレヴィアに更なる忠誠を誓うが、メフィストフェレスがちゃちゃを入れる。
「私も!レヴィアお嬢様に助けて頂きましてありがとうございます!!私、次は絶対にお嬢様を守ってみせます!!」
強い決意を見せる侍女のココ
ただし、若干透けている。侍女服の長いスカートでよく見えないが膝下は透け過ぎてほとんど見えない状態だ。
「えっと……」
戸惑うレヴィアの前に、全身黒く禍々しい鎧に身を包んだ御者が、ガシャガシャと進み出て片膝をつく。
ただし、頭は無い。本来頭の収まっている場所には黒い靄のようなものが出ているだけである。
「ひいっ!? こ、これは正解ですの?」
「はい。彼らはもう死んでいましたからね。そちらの侍女はリッチとして復活させました。高い魔力はサービスです。御者の方は首から上が見つからなかったので、あーデュラハンって事で。その鎧と8本足の馬はサービスです。」
そう言ってメフィストフェレスは満足げに頷く。
「あとは私も」
そう言うとメフィストフェレスは一瞬で姿がかわる。
レヴィアと同じ年頃の美少年に。角と尻尾もなくなり。髪も短くなる。
「どうぞ、私のことはメフィとお呼び下さい。 これからは私が執事としてお嬢様の大切な復讐をお手伝いさせて頂きます。」
大仰な身振りで礼をすると怪しい笑みを浮かべたのだった。
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