愛しているのはお前だけ。＆1分間で読めるBL

愛しているのはお前だけ。

7話

俺を発見したのも近くにある別荘に行く途中での偶然の出来事だったようだ。
そんな俺に須王は焦る必要はない、ずっとここにいればいいと優しく言ってくれている。だが、何もせずに日がな過ごすのはやはり気がひける。
そのため、世話になる間は家事全般を引き受けることにした。

今日も部屋の掃除をしながら、彼の帰りを待つ。
高校時代の冷酷な性格は嘘のように、大人になった須王司は穏やかだ。
あの日の笑顔を除いては。
正直彼を信用してもいいのかと不安になることもあるが、こうして面倒を見てくれているのも事実。
俺は須王司という人間が分からずにいた。

ぼんやりと物思いに耽っていたせいで、足にコードが絡まったことに気付かなくて転んでしまった。

「いったぁー」

痛む足をさすっていると、巻きついたままのコードがふと目に入った。
どこかで同じことがあった気がする…。
その既視感は俺の頭の中にある記憶を甦らせた。

俺は薄汚くて狭い小屋の中に閉じ込められ、手足を縛り上げられている。
そして誰かの元から一生懸命山の中を逃げ出したところで足を踏み外してしまい、滑落した。

記憶を失う前、俺は何者かに監禁されていた。
そのショッキングな事実に俺の心臓はバクバクと強く鼓動を打つ。
息は荒くなり、冷や汗も止まらない。