俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね？〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

65．王妃は離婚を賭ける

プライドの高いキースが謝るとは思ってもみなかった。
しかも土下座までして。
キースはどうして俺相手にここまでするんだろう?

「俺の人生をかけて、エスメラルダに償っていく。許さなくていい。けど…、ただ1度でいいんだ。俺にチャンスをくれないか？」
「いいよ」

キースの勢いに根負けした俺は彼の望みを受け入れることにした。
それに少なからず俺にも勘違いさせてしまったという非はあると思うから。
ただし、条件つきで。

「その代わりチャンスをあげるのはシャルドナ王国に滞在している間だけ。『キースと夫婦でい続たい』って俺に思わせたらお前の勝ち。もし思わせられなかったその時は…」
「…どうなるんだ？」

キースは俺の顔色を窺うように恐る恐る面を起こした。
日頃は一国の主として覇気に満ち溢れたその瞳が頼りなさげに揺れる。

「俺とキースは離婚する」
「そんな勝手に…！」
「勝手だと？ずっと勝手だったのはキースの方だろ？これでも譲歩してると思うけど？」
「分かった、お前の言う通りにする。ここにいる間に絶対に気持ちを変えてみせるからな」

土下座から立ち上がったキースは先程までとは様変わりして、獲物を狙うかのように獰猛な眼差しを俺に向けてきた。

こうして俺とキースの離婚を賭けた攻防の火蓋は切られることになったのだ。