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35.王妃は小さな復讐をする

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「別に大したことではないです。王妃である私の当然の義務であって、陛下のためじゃありませんので。感謝はしないで下さいませ」
「…そうか」

キースは俺の言葉に一瞬面食らった表情をした後、自嘲気味にぼそりと咳いた。
目に見えて落ち込んでいるキースの様子に俺の心はモヤモヤとさせられる。

えーと…、何だか俺が酷いこと言ったみたいな雰囲気になってない?
嫌な奴っぽくない?

いやいや、でもこいつ浮気夫だし。
俺たちは近々離婚するんだし。
だから情けはかけなくても…、いいよね?

少々気まずく思いつつも、キースのことを放っておいて一足先に寝室へと向かう。
しかしながら扉を開くと、一目散に逃げ出したくなるような光景が広がっていた。

「うわぁぁぁ…」

正方形のワイドキングサイズのベッドの上には薔薇の花びらで型どられた大きなハートが描かれていたのだ。
きっと俺たち夫婦の訪問に対するリリオ王のロマンチックで粋な計らいだったのだろう。

だけど、俺たちこんな関係じゃないんです。
奴には俺じゃない別の女性がいるんです。

キースへのモヤモヤは一気にムカムカへと変わってきた。

そうだ、ハートを覆うようにして大の字で寝てやろう。
そうしたらキースはベッドの端で小さく丸まって眠りにつくしかないのだから。
ふふ、ちょっとした復讐の決行だ。
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