俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね？〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

19．王妃はヤバい状況にいる

夫からは見舞いすらなかったが、ディアマンテ兄さんからは綺麗な花束と果物が届いた。

だが、俺はそれを見て、チクリと胸が痛んだ。
花束の中に赤いガーベラが入っていたのだ。

俺が1番好きな花。
小さい頃、会う度にキースがプレゼントしてくれたその花。

「赤いガーベラはエスメラルダの瞳と同じ色で、とっても綺麗だ」と言ってくれた。
そんな彼を思い出してしまい、大好きな花ですら今は切なくなる。

でも、今はそれよりも家族の優しさに目を向けよう。
得られない愛にしがみつくのはもう止めなきゃ。
俺は近い将来キースに難癖つけられて、ムニーラ領に帰らなくちゃいけないんだから。
離婚後は心穏やかに家族と楽しく暮らそう。
恋愛なんてもうまっぴらごめんだ。

…いや、待て。
楽しく暮らせる、のかな…?

自由な生活前提で進めちゃってたけど、離婚理由によっては軟禁や幽閉もあり得る。
それどころか、キースの『実家に追い返す』発言だって、決定事項じゃないから気が変わるかも。
奴やモネの態度を考慮すると、冤罪からの処刑ルートの可能性もゼロじゃない。
俺の置かれている状況って、めちゃくちゃヤバいんじゃあ…。

あぁ、もうどうせキースとの離婚は免れないんだ。
だったらせめてムニーラ伯爵家に迷惑をかけることなく、無事に我が家へ帰りたい。