俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね？〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

1．王妃は愛している

ずっとキースだけが好きだった。
ずっとキースだけに愛されたかった。

キースの妻になりたくて、苦手な勉強も楽器の演奏も人一倍、いや何百倍も頑張った。
その甲斐あって、貴族学校を卒業した18才の春に彼と結婚することができた。

愛する男との一生を誓ったあの時、確かに俺は幸せの絶頂にいた。
そう、絶頂に。

婚礼を終えて初夜を迎えるまでは。

「エスメラルダ・ムニーラ、俺はお前を愛するつもりはない。お前なんかと一緒に暮らす気にもなれないから、別棟を新築した。お前は明日からここを出て、別棟で生活しろ。分かったな」

夫婦の寝室で夫となったばかりの男は妻に向けるとは到底思えないような冷たく蔑んだ視線で、俺にそう言い放った。
そうして彼は俺の返事を聞くこともなく、そのまま部屋を出て行った。
俯いて涙をこらえる俺を1人残して。