【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

94．政略結婚

エレノアはシャロルさんの胸倉を掴んだ。

「兄上も兄上です。僕の気持ちを知っているくせにどうしてこんな男との縁談を勧めるのですか！」
「勧めるだと…？ははっ、馬鹿を言うな。これは決定事項だ。エレノア、お前はレオンスタリア王国第3王子としてグランティエ王国のシャロル・マルグリッドの元へ婿入りしろ。既に全ての準備もできている」
「は?こいつ、オメガでしょ?この僕と結婚するなんて
あり得ない」
「本当に？アルファとオメガ。ふん、良い組み合わせだろう？エレノアはれっきとした『アルファ』なんだから」
「あー！あー！あー！黙れ！黙れ！黙れ！僕はトーニャ兄様の番になるのに！何で邪魔しようとすんだよぉぉぉ！」

エレノアはぎりぎりと歯を噛みしめながら、シャロルさんの胸元から手を離すとサラサラと艶めく金髪を乱暴に掻きむしった。
そして地団駄を踏んで、怒りに体を震わせる。

以前トーニャが話してくれた『王族としてのエレノアの務め』。
先程シャロルさんが言っていた『あのこと』。
それらはエレノアとシャロルさんの政略結婚を指していたのだと分かった。

トーニャに想いを寄せるエレノアが縁談を拒むことは目に見えている。
下手すれば暴走し、他人を傷つけかねない。