【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

19.5 真白とトーニャの休日（3）

異世界から1人の人間を召喚するためには転移魔法が使える10人のアルファが必要となる。
その内の9人は魔力を使い切るので、アルファであろうとも今後魔法を使うことができなくなるという代償がある。
今回サファイアさんは魔力切れを免れた唯一の存在となったが、それでも以前より魔法は使えないそうだ。
まぁ本人曰く、「もう歳だし、魔法を使って働くことからは正直引退したいなと思ってたんです」と全く気にはしていないが。

そういった事情があるため、異世界召喚魔法は数十年に1度行われる大掛かりなものらしい。
そんなある意味選ばれし者に平凡な俺がなってしまって、本当に良いのかなと正直疑問を感じる毎日ではある。
新たな技術は提供できない分、せめて身近な人たちに日頃の感謝の気持ちを込めて美味しいものを作ろうと俺なりに考えた訳だ。

「薄力粉にバター、砂糖と卵。あとココアパウダーも！」

今回はプレーン味とココア味の2種類を作る予定だ。
必要な食材は事前にメイド長のミラさんに伝えてあったので、既に用意されている。
その上、薄力粉はふるいにかけられ、バターも室温に戻してある状態だ。
彼女の仕事ぶりは完璧である。

「それで俺は一体何をすれば良いんだ?」