【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

65．お前の隣には

本音を言えば、話しにくいことはこのまま先延ばしにしたい。
それでも、ちゃんと言わなきゃいけないんだ。
だって、俺から言い出したんだから。
俺たちの間に秘密や隠し事はなしだって。

トーニャは俺の気持ちをぶつけても、きっと受け止めてくれる。
俺の夫はそういう奴だ。

「誰かに抑制剤が効果のない別の薬とすり替えられていたんだ」
「何だと…？」

トーニャの顔つきがひどく苦々しいものへと変わっていく。

「他に不審な動きはなかったか？」
「うん、大丈夫」
「良かった」

俺の返答でトーニャはほんの少しだけ安堵の表情を見せた。
だが、それは一瞬で泡のように消えてなくなる。

「なぁ、俺は本当にここに、お前の隣にいても良いのか？」
「どういう意味だ」
「オメガとの結婚は王位継承権を失くすんだよな？それは王族としての地位を下げるということだ。つまり俺はお前の立場を弱くしているんじゃないか？」
「俺が自分で選んだ道だ」
「だとしても、この嫌がらせはお前の側に俺がいることに対するものである可能性が高いと思う。いつかお前にも影響が」
「もしあったら、俺がそいつらを潰してやる。何者からもお前を守ってやる。安心して俺の隣にいろ。地位も王座も権力もいらない。お前だけが欲しいんだ」

そう言ったトーニャの胸に俺は飛び込んだ。
だから、涙ぐんだ俺の瞳はきっと見られていないはずだ。