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59.偽物の抑制剤

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…なるほど。
俺が感じていたトーニャのことが全部欲しいっていう気持ちはヒート前の兆候だったのか。
俺、めっちゃ束縛の強い奴なのかもって心配してたけど、安心したー。

だが、そんな呑気な俺とは裏腹に、クオーツさんは険しい顔つきだ。

「ところで真白様、抑制剤を貸していただけますか?」
「えっ…?はい、分かりました…」

ナイトチェストにしまっていた抑制剤の瓶を取り出して、クオーツさんに手渡す。
彼は抑制剤を全粒手に乗せて、1つ1つ丁寧に確認する。
そして終えると、とんでもないことを言い出した。

「…抑制剤がすり替えられています。真白様が飲まれていたのは偽物。これはただの栄養剤です」
「えぇっ…!?だ、だって…、診察の時にクオーツさんが処方したのを毎晩飲んでいましたよ?」
「はい、俺が真白様に渡したのは確かに抑制剤でした。もちろん今までの分も。前回補充したのが10日ほど前。その間に何者かによってすり替えられたと考えられます」
「一体何のために…?そんなことをして誰が得するんです…?」
「そこまでははっきりとは分かりません。ただ、この栄養剤は見た目が抑制剤とそっくりなのです。以前それを利用し、ある貴族がオメガに対して抑制剤と偽った上でこの薬を飲ませ続け、本人の意志と関係ないヒートを起こして番にしようとしたことがありました。…幸いにもそれ自体は未遂に終わりましたが」
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