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44.冷酷な女の仕打ち
しおりを挟む「王妃様との約束って一体?」
俺の問いにトーニャは暗い表情で答える。
「ルナマリア・ミシェルの正体は明かさない。その代わりに城を去って、二度と父さんとは会わない。そして、母さんのお腹の中にいた俺をオリヴィエ王妃の子として渡す」
『約束』とは名ばかりの脅迫めいた内容に王妃様のあの冷たい横顔が思い出され、俺は密かにぞっとした。
「…それって自分が王妃になりたくて、柊さんを追い出したってことですよね?酷い仕打ちにも程があるでしょう」
「…俺はオリヴィエのことを酷い女だって思ったことはないんだよ。この世界に来てから、オリヴィエは俺に親切にしてくれた。彼女さ、元々王太子妃候補の1人で小さい頃から厳しい教育に耐えてきたんだ。だが、ガーランドはグランツィエ王国との関係強化を優先して、リュミエール王女と結婚した。結局、グランツィエ王国の王位継承問題がきっかけで、リュミエール王女は女王に即位するために自国へ帰らなければならなくて、2人は別れてしまった。けれども、その間もずっとオリヴィエは独身を貫いていた。なのに、よりによって俺とガーランドが塔で密会しているのを見られちまってさ。その時にオリヴィエ、ひどく辛そうな顔をしたんだよ。…あの頃は気付いてやれなかったけど、今思えばきっと彼女はガーランドのことが好きだったんだと思う」
「だからといって許されることでは…」
「彼女に出された条件を拒否してしまったら、オメガを妃にしたガーランドは王になれない。それに後ろ盾のない俺よりも名家の令嬢が『母親』になった方がトーニャにとって幸せなのかもって思うと、断る選択肢は俺にはなかった」
俺の問いにトーニャは暗い表情で答える。
「ルナマリア・ミシェルの正体は明かさない。その代わりに城を去って、二度と父さんとは会わない。そして、母さんのお腹の中にいた俺をオリヴィエ王妃の子として渡す」
『約束』とは名ばかりの脅迫めいた内容に王妃様のあの冷たい横顔が思い出され、俺は密かにぞっとした。
「…それって自分が王妃になりたくて、柊さんを追い出したってことですよね?酷い仕打ちにも程があるでしょう」
「…俺はオリヴィエのことを酷い女だって思ったことはないんだよ。この世界に来てから、オリヴィエは俺に親切にしてくれた。彼女さ、元々王太子妃候補の1人で小さい頃から厳しい教育に耐えてきたんだ。だが、ガーランドはグランツィエ王国との関係強化を優先して、リュミエール王女と結婚した。結局、グランツィエ王国の王位継承問題がきっかけで、リュミエール王女は女王に即位するために自国へ帰らなければならなくて、2人は別れてしまった。けれども、その間もずっとオリヴィエは独身を貫いていた。なのに、よりによって俺とガーランドが塔で密会しているのを見られちまってさ。その時にオリヴィエ、ひどく辛そうな顔をしたんだよ。…あの頃は気付いてやれなかったけど、今思えばきっと彼女はガーランドのことが好きだったんだと思う」
「だからといって許されることでは…」
「彼女に出された条件を拒否してしまったら、オメガを妃にしたガーランドは王になれない。それに後ろ盾のない俺よりも名家の令嬢が『母親』になった方がトーニャにとって幸せなのかもって思うと、断る選択肢は俺にはなかった」
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