【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

41．出生の違和感と縋る視線

最初に違和感を感じたのは過労で倒れてしまった俺にトーニャが付き添ってくれた時。
トーニャは自分の母親が俺と同じオメガであると言ったのだ。

あれ?
オメガは王様の妻になれないんじゃなかったっけ?
そういう法律だから、俺が召喚されたんだよね?

不思議に思ったけど、トーニャにはトーニャの事情があって、そこに土足で踏み込んでいいほど彼は俺に気を許してくれるのかという不安が一瞬よぎってしまい、聞くことはできなかった。

しかし、太陽祭で出会ったギルはトーニャの母親はオリヴィエ王妃だと話していた。
ガーランド国王が王太子だった頃からずっと連れ添う彼女がオメガだと仮定すると、この世界に転移してすぐにトーニャから聞いた『オメガと結婚した王族は王位継承権を失う』という決まりと明らかに矛盾している。
その上、彼女は氷の魔法の持ち主だともギルは言っていた。
だから、オリヴィエ王妃がアルファなのは確実だ。

となると、トーニャの生みの母は世間に公表することができない『オリヴィエ王妃とは別人の』オメガだと気付いた。

ただ、トーニャが話そうとしない以上は俺も追及をするつもりはなかった。
あの日までは。

ルナマリアとの密会を知って、彼女との関係を疑った。
その際に嫉妬心と不安ともに、どうしようもないくらいトーニャの全てを知りたいという感情が腹の底から急激に湧き上がった。
直後、エレノアからルナマリアがオメガだという隠された事実を聞き、時期的に考えてもオリヴィエ王妃の前の妻だった彼女こそ母親だと予想がついた。
ただ、確証はなかった。

それを明らかにするために、いや違う。
トーニャの全部が欲しくて、俺はここまで来たのだ。

トーニャのことになると、どうしてこんなに理性が効かなくなってしまうんだろう?

俺はそんな気持ちをどうすることもできないまま縋るようにトーニャだけを見つめていた。