【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

39．探していた人

「到着しました！ここがエルシエル孤児院です！」

金属製の大きな門からは青々と茂った芝生が広がり、明るい色合いのブランコやシーソーなどの遊具が置かれている。
その奥に白を基調としたレンガ造りの建物がある。
外からでも中で遊んでいる子どもの楽しそうな声が聞こえる。
ただ、周りを見渡しても、トーニャはいなさそうだった。

「そうだ!シュー先生にお兄さんのことを話したら、お礼がしたいと言っていました!是非会って下さい!」
「えっ!ち、ちょっと待って!俺、人探ししなくちゃいけないんだけど…」

男の子は嬉しさでいっぱいの様子で、全く声が届いていない。
俺の手を引き、建物を超えてずんずんと進んでしまう。
クリスマスローズが咲き乱れる裏庭に着くと、花の手入れを熱心に行う人物がいた。

「シュー先生っ!ただいまっ！」
「ソル、お帰り!ん?この人は?」
「太陽祭の時に助けてくれたお兄さん!」
「あぁ!先日はソルを助けていただきありがとうございました。私、ここの院長を務めておりますシュー・サヴィルと申します」

目の前にいるシュー・サヴィルは短くカットされたくすんだ金髪に浅黒く日焼けした肌の男性だ。
一見すると、30代前半のような若さを持つ彼は左の目元にある泣きぼくろによって艶めかしさを感じさせる。

間違いない、この人だ。
彼を見た瞬間、俺は直感した。