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37.俺は諦めません!
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エレノアは一瞬たじろいだものの、すぐさま瞳に怒りを宿す。
「貴きフォンレーヌ公爵家の血を受け継ぐこの僕にお前如きが楯突くつもり…!?」
そして、その怒りのままに俺に近付くと、右手を大きく振り上げた。
「止めろ!」
大きな声が廊下に響き渡る。
ぱっと振り向くと、険しい顔をしたトーニャが立っていた。
即座に手を下ろしたエレノアは俺のことなど最初から眼中になかったかのように素通りして、トーニャへすり寄る。
「兄様っ!僕、出発前に兄様とお会いしたくて…」
さっきまでの高圧的な口調とは打って変わり、媚びた猫撫で声で甘えている。
しかしながら、トーニャはエレノアに見向きもせずに俺の方へと歩いてきた。
「大丈夫か?ケガはないか?」
「う、うん」
トーニャに心配されて嬉しい気持ち。
ルナマリアや番のことを一切話してくれない淋しい気持ち。
相反する感情が俺の心の中で忙しく入り乱れる。
この世界に来て以来、トーニャに振り回されっぱなしだ。
だけど、厄介なことにこの男を自分だけのものにしたいという独占欲が湧き上がっているのに気付いてしまった。
だからこそ、はっきりさせなければならない。
「ごめん…、やっぱり今日は部屋に戻るね。1人で考えたいことがあるから…」
「真白…」
俺の言葉を聞いたエレノアは俺たちが仲違いしたと思ったのだろう、にやりと笑った。
でも、俺は諦めたんじゃない。
「貴きフォンレーヌ公爵家の血を受け継ぐこの僕にお前如きが楯突くつもり…!?」
そして、その怒りのままに俺に近付くと、右手を大きく振り上げた。
「止めろ!」
大きな声が廊下に響き渡る。
ぱっと振り向くと、険しい顔をしたトーニャが立っていた。
即座に手を下ろしたエレノアは俺のことなど最初から眼中になかったかのように素通りして、トーニャへすり寄る。
「兄様っ!僕、出発前に兄様とお会いしたくて…」
さっきまでの高圧的な口調とは打って変わり、媚びた猫撫で声で甘えている。
しかしながら、トーニャはエレノアに見向きもせずに俺の方へと歩いてきた。
「大丈夫か?ケガはないか?」
「う、うん」
トーニャに心配されて嬉しい気持ち。
ルナマリアや番のことを一切話してくれない淋しい気持ち。
相反する感情が俺の心の中で忙しく入り乱れる。
この世界に来て以来、トーニャに振り回されっぱなしだ。
だけど、厄介なことにこの男を自分だけのものにしたいという独占欲が湧き上がっているのに気付いてしまった。
だからこそ、はっきりさせなければならない。
「ごめん…、やっぱり今日は部屋に戻るね。1人で考えたいことがあるから…」
「真白…」
俺の言葉を聞いたエレノアは俺たちが仲違いしたと思ったのだろう、にやりと笑った。
でも、俺は諦めたんじゃない。
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