【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

36．番（つがい）って何？

「つ、がい…?」

エレノアくんの話には驚きを隠せない。
だけど、初めて耳にしたその単語にやけに胸騒ぎがして、思わず聞き返してしまった。
すると、エレノアくんは何が可笑しいのか腹を抱えて笑い出す。

「あはは、なーんにも知らないんだ!ヒートを起こしたオメガのフェロモンに惹きつけられたアルファが首筋に噛みつくことで、そのアルファとオメガは"番"になる。そうすると、オメガは自身の番の子供だけを確実に孕むために、番以外の者を受け付けない体へ作り変わって、フェロモンも番にしか効かなくなる。つまり、オメガにとって番になれるのは生涯たった1人のアルファのみ。いくらこの国で一夫一妻制が定められていようとも、大抵のアルファは本能に逆えずに複数のオメガを愛人として囲っているのが現実。兄様はアルファの中でも特別に優れた御方だから、お前と結婚していたとしても、ゆくゆくはご自分に相応しい別のオメガを番に選ぶ。まぁ、第2の性についてほとんど教えてもらっていないってことは兄様がお前と番うつもりは一切ない証拠だよねぇ?残念だったね♪」
「…俺はトーニャを誰にも渡すつもりはねぇよ!」

敵意に負けない意志を込めて、俺はエレノアに啖呵を切った。