【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

24．意図せぬキス

先程まで男の子と一緒にいたベンチに、今度はトーニャと座っている。

「手、出せ」
「何?」
言われた通りに手を差し出すと、りんご飴を手のひらの上に置かれる。

「真白も食べたいかと思って、買ってきた」
「"も"ってことはトーニャも食べたかったんだ?ほんと
甘い物好きだよなー」
「まぁな」
トーニャはふっと笑みを零す。

一緒に過ごす時間が長くなるのに比例して、トーニャについて知る機会が増えた。

甘党で、辛い物が苦手。
手先が器用で、特に絵が上手い。
鼻歌を歌うと、いつも音程が外れている。
考え事をしている時は無意識に耳を触る。

そして、何よりも笑った顔を見せてくれることが多くなった。
俺はそんなことがどうしようもなく嬉しいと感じているのをトーニャはきっと気付いていないだろう。

「ありがと」
「おう」
俺が笑いかけて礼を言うと、トーニャは突然顔を逸らして、そっぽ向いた拳句、素っ気ない返事しかよこさない。
つれない態度が何だか面白くなくて、ちょっと驚かせてやろうと悪戯心が芽生える。

気付かれないようにそっと顔を近づけた瞬間、トーニャがこちらを振り向いてしまった。
自分の唇に柔らかい何かが触れ、それがトーニャの唇だと理解するまでにさほど時間はかからなかった。
すぐさま離れるものの、意図せずしてしまったキスに頭が追い付かない。