運命の番じゃないあなたを愛している

明太子

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56.恋心に白旗を

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夜を迎えて、客間でソニアとヴォルフは寝仕度をしていた。
ベリルはクオーツの部屋で彼と遊んでいるうちに、共に寝落ちしてしまった。

2人きりで過ごす室内で昼間のヴォルフの発言の意図について聞いてみようかとソニアは考えたものの、勇気が出なくて結局できなかった。

そんな中、突然ヴォルフはソニアの手に自分の手を重ねた。
思いもよらない彼の行動にソニアは頬を染める。

「な、何だよっ、急に…!」
「あ、いや、その…、えーっと、明日!明日の予定なんだけど…!」
「うん…」
「一緒に街に行かない?」

(…もしかしてデート、とか?そうだったらかなり嬉しい…)

勝手に高鳴る胸をソニアは堪えようとするものの、淡い期待はどんどん膨らんでいく。

「薬問屋に行きたくてさ」
「は?」
「ハイネじゃ採れない薬草もたくさんあるから、この機会に色々仕入れときたいんだよね」
「あ、あぁ…。そうだよな、うん…。だったら俺も手伝った方がいいよな…、俺も一緒に行くよ」
「ありがとう」

ヴォルフは笑顔で応えるが、ソニアは勘違いした恥ずかしさで居た堪れず、その顔を直視できない。

(ヴォルフの一言にこんなに振り回されて…、もう認めざるを得ないよな。俺、めちゃくちゃヴォルフが好きじゃねぇかよ…)

ソニアは生まれて初めての恋心にとうとう白旗を上げた。
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