運命の番じゃないあなたを愛している

38．全部知ってるよ

2人の間には沈黙が流れ、共にきょとんとした顔をしている。

「ベリルの母親は俺の親戚で、ってあれ？言ってなかったっけ？」
「あぁ！俺が『お前の子どもか？』って聞いた時に、お前は『そうだね』って答えたじゃねーか！」
「うん、ベリルは俺が『育てている』子どもだからね。…血の繋がりってそんなに大切かな？俺は仕事が忙しいし、家事も得意じゃないから、ベリルにはあんまり父親らしいことはしてやれていない。でも、俺は育ての親として、あの子を愛しているよ」

諭すように言ったヴォルフはとても優しい顔をしていた。
決してソニアは責められた訳ではなかったが、自分の考えの甘さをはっと痛感した。
なぜなら彼自身も血の繋がりを重視してきたことは今までなかったのだから。

「そうだよな、悪い。それは俺も分かってる。ただ、驚いちまってさ」
「俺も説明不足でごめんね」
「ベリルは知ってるのか？」
「全部知ってるよ。俺が実の父親じゃないことも、本当の両親と一緒に暮らせない理由も、それでもちゃんと家族に愛されていることもね。ソニアちゃんが1番の証拠だから」
「…えっ？俺？何で？」
「ちょっと話し過ぎちゃったね。俺ももう眠くなってきちゃったよ、ははは」

ヴォルフはこれ以上は話すつもりはないのだと言わんばかりに立ち上がった。