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二章 学園編
レテの休日
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学院の休日はまず、いつも通り起きるところから始まる。
休日でもご飯と風呂の時間は変わらないので、顔を洗い、着替えて部屋を出ていく。
そして皆で談笑しながら朝ごはんを食べ終わるとそれぞれやりたいことをする。
訓練場で手合わせを同級生と手合わせするために先生に許可を取りに行く者。
二度寝をしたり、借りた本を読むなど、自室に用事があって戻る者。
オバチャンの手伝いをしてお小遣いを稼ぐ者。
地下室のトレーニングルームや図書室を活用する者
などなど、上げきれない休日の使い方がある。
レテはもっぱら後半の者だった。オバチャンを手伝ったり、地下にいったり。基本的にそんな休日を過ごしている。
しかし少し気にかかることがあり、それについて考えていた。
(ナイダから今度は武器を持ってって言われたけど……魔術学院のトレーニングルーム、基本的に魔術の鍛錬しか出来ないんだよな。この時間にアグラタムの所に突撃してもなぁ。何か良い手は無いものか)
うーんと悩むと、そうだと閃いてオバチャンに聞いてみる。
「オバチャンオバチャン。休日って、武術学院のトレーニングルームって使えたりするの?」
「おや、身体を鍛えるのかい?勿論、使えるよ。両学院は互いの図書室とトレーニングルームは自由に使えるんだよ。行くなら夜までには帰っておいでね」
ニコニコしながら答えて貰えた。これだ、ありがとうオバチャンと礼を言うと寮を飛び出した。
武術学院。魔術学院から走って十数分。遠くはないが近くもない、絶妙に距離がある。
「ええっと、寮は……」
周りを見渡すと、案内板を見つける。そういえば魔術学院の所にも同じものがあったので、こういう所で互いの学院生に配慮されているのだろう。後、新米の先生も迷うのかもしれない。多分。
「こっちか」
目当ての寮を見つけると、そこに向かって歩いていく。中に入ると、オバチャンによく似た寮母さんに声をかけられた。
「ほっほ!初めて見る魔術学院の生徒さんだね?いらっしゃい。武術学院に用事かい?」
「地下のトレーニングルームを借りようと思いまして」
そう言うと、納得したように頷いてくれる。
「魔術も武術も身体が大事さね!偉い子だ。使って大丈夫だよ。地下への道はー」
そう言って説明を受ける。大体魔術学院と同じ構造だ。
「ありがとうございます。ええっと……」
「ほっほ、オバチャンでいいよ。それよりも、早くしないとトレーニングルームも取られちゃうよ。ささ、行ってきな」
「ありがとうございます、オバチャン!」
そう言うと歩き出す。寮内走るのは基本厳禁だ。基本……なだけだが。
トレーニングルームに入ると、予想通り剣や槍、他にも木製の訓練用の武具が置いてあったり筋肉を鍛えるための用具が置いてある。
その中でも人気らしいのが、模擬戦ルームという場所だ。どうやら魔術で生み出される相手を訓練用の武具で倒す、ゲーム感覚の鍛錬所らしい。長蛇の列だ。
(まぁ、自分は同じようなことアグラタムでしているからいいか……)
サラッと守護者を模擬戦相手にしているが気にしない。木刀を一つ手に取って近くの鍛錬用の人形に向ける。ご丁寧に身体の弱点まで書いてある。これは良い鍛錬になりそうだ。
「ふっ、はっ!」
横薙ぎ、縦切り、斜めから、ふにょんと弾かれる人形に向けて振るう。
「せいっ!」
突きも試す。鋭く出したつもりだが、ふにょんと弾き返される。
すると後ろからパチパチと拍手が聞こえた。鍛錬を辞めて後ろを向くと、上級生らしき男の人がこちらを見ていた。
「いや、素晴らしい。魔術学院の制服の子が剣を振るうからどんなものかと思ったら良い剣筋をしているな、と思ってね。それで武術ではなく魔術なんだから末恐ろしい……ああ、すまない。自己紹介が遅れたね。僕はニール。一応今年卒業する予定の六年生だ」
「あ、ありがとうございます。自分は……」
「知っているよ。顕現の神童、一学年首席レテ君」
こっちにまで知れ渡っていたのか、と驚いていると何、知り合いが魔術学院にいるんだと言われた。情報網が広い人だな、と思っているとふと疑問に思ったことを言う。
「そんな人がなんで、自分を見ていたのです?」
「結構その弱点が描かれているやつはお気に入りでね。先に使っている子がいたから見てみたら今話題の子だからついつい見ていたんだよ。あぁ、気にしなくていい。僕も横で鍛錬するから。さ、続けよう」
そうして木の槍を持つと、的確に弱点を突き、薙ぐニールさんの姿が見えた。
(……自分も続けよう)
結局二人して時間を忘れてしまい、出てこないことを心配したオバチャンに時間を伝えられ、自分は挨拶を軽くして慌てて魔術学院へと戻った。
そうしてご飯を食べて、風呂に入り、寝る。
(武術学院のトレーニングルームも良いな。図書室も今度行ってみよう)
そんなことを考えながら終わったレテのとある一日だった。
休日でもご飯と風呂の時間は変わらないので、顔を洗い、着替えて部屋を出ていく。
そして皆で談笑しながら朝ごはんを食べ終わるとそれぞれやりたいことをする。
訓練場で手合わせを同級生と手合わせするために先生に許可を取りに行く者。
二度寝をしたり、借りた本を読むなど、自室に用事があって戻る者。
オバチャンの手伝いをしてお小遣いを稼ぐ者。
地下室のトレーニングルームや図書室を活用する者
などなど、上げきれない休日の使い方がある。
レテはもっぱら後半の者だった。オバチャンを手伝ったり、地下にいったり。基本的にそんな休日を過ごしている。
しかし少し気にかかることがあり、それについて考えていた。
(ナイダから今度は武器を持ってって言われたけど……魔術学院のトレーニングルーム、基本的に魔術の鍛錬しか出来ないんだよな。この時間にアグラタムの所に突撃してもなぁ。何か良い手は無いものか)
うーんと悩むと、そうだと閃いてオバチャンに聞いてみる。
「オバチャンオバチャン。休日って、武術学院のトレーニングルームって使えたりするの?」
「おや、身体を鍛えるのかい?勿論、使えるよ。両学院は互いの図書室とトレーニングルームは自由に使えるんだよ。行くなら夜までには帰っておいでね」
ニコニコしながら答えて貰えた。これだ、ありがとうオバチャンと礼を言うと寮を飛び出した。
武術学院。魔術学院から走って十数分。遠くはないが近くもない、絶妙に距離がある。
「ええっと、寮は……」
周りを見渡すと、案内板を見つける。そういえば魔術学院の所にも同じものがあったので、こういう所で互いの学院生に配慮されているのだろう。後、新米の先生も迷うのかもしれない。多分。
「こっちか」
目当ての寮を見つけると、そこに向かって歩いていく。中に入ると、オバチャンによく似た寮母さんに声をかけられた。
「ほっほ!初めて見る魔術学院の生徒さんだね?いらっしゃい。武術学院に用事かい?」
「地下のトレーニングルームを借りようと思いまして」
そう言うと、納得したように頷いてくれる。
「魔術も武術も身体が大事さね!偉い子だ。使って大丈夫だよ。地下への道はー」
そう言って説明を受ける。大体魔術学院と同じ構造だ。
「ありがとうございます。ええっと……」
「ほっほ、オバチャンでいいよ。それよりも、早くしないとトレーニングルームも取られちゃうよ。ささ、行ってきな」
「ありがとうございます、オバチャン!」
そう言うと歩き出す。寮内走るのは基本厳禁だ。基本……なだけだが。
トレーニングルームに入ると、予想通り剣や槍、他にも木製の訓練用の武具が置いてあったり筋肉を鍛えるための用具が置いてある。
その中でも人気らしいのが、模擬戦ルームという場所だ。どうやら魔術で生み出される相手を訓練用の武具で倒す、ゲーム感覚の鍛錬所らしい。長蛇の列だ。
(まぁ、自分は同じようなことアグラタムでしているからいいか……)
サラッと守護者を模擬戦相手にしているが気にしない。木刀を一つ手に取って近くの鍛錬用の人形に向ける。ご丁寧に身体の弱点まで書いてある。これは良い鍛錬になりそうだ。
「ふっ、はっ!」
横薙ぎ、縦切り、斜めから、ふにょんと弾かれる人形に向けて振るう。
「せいっ!」
突きも試す。鋭く出したつもりだが、ふにょんと弾き返される。
すると後ろからパチパチと拍手が聞こえた。鍛錬を辞めて後ろを向くと、上級生らしき男の人がこちらを見ていた。
「いや、素晴らしい。魔術学院の制服の子が剣を振るうからどんなものかと思ったら良い剣筋をしているな、と思ってね。それで武術ではなく魔術なんだから末恐ろしい……ああ、すまない。自己紹介が遅れたね。僕はニール。一応今年卒業する予定の六年生だ」
「あ、ありがとうございます。自分は……」
「知っているよ。顕現の神童、一学年首席レテ君」
こっちにまで知れ渡っていたのか、と驚いていると何、知り合いが魔術学院にいるんだと言われた。情報網が広い人だな、と思っているとふと疑問に思ったことを言う。
「そんな人がなんで、自分を見ていたのです?」
「結構その弱点が描かれているやつはお気に入りでね。先に使っている子がいたから見てみたら今話題の子だからついつい見ていたんだよ。あぁ、気にしなくていい。僕も横で鍛錬するから。さ、続けよう」
そうして木の槍を持つと、的確に弱点を突き、薙ぐニールさんの姿が見えた。
(……自分も続けよう)
結局二人して時間を忘れてしまい、出てこないことを心配したオバチャンに時間を伝えられ、自分は挨拶を軽くして慌てて魔術学院へと戻った。
そうしてご飯を食べて、風呂に入り、寝る。
(武術学院のトレーニングルームも良いな。図書室も今度行ってみよう)
そんなことを考えながら終わったレテのとある一日だった。
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