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一章 幼少期編
邂逅
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「……いよいよ明日が試験かぁ」
今日も窓から顔を出し、ぼーっとしながら独り言を呟く。しかし魔力の鍛錬を忘れている訳では無い。むしろぼーっとしている時間の方が長いからこそ魔法や他の系統を扱えるかを試したりしている。
十四歳の八月の終わり。自分の誕生日は春の四月なので十四歳を迎えた。魔術学院と武術学院は夏休みを挟み、秋に進学と入学をするようだ。
口をすぼめて薄く魔力の力で風船ガムのように風魔法を広げていく。そしてある程度魔力使ったら今度はその風の中に右手で水の玉を入れる。
簡易版魔法泡風船の完成だ。口を振るとぷるんぷるんと風の中の水玉が跳ねてこれはこれで楽しい。
最後に証拠隠滅、もとい他の人に迷惑をかけないように左手で軽い火魔法を広範囲にかけ、口から魔力を供給し続けるのをやめた。
ジュッ、と音を立ててそこにあった泡風船は見事に空へ昇っていった。煙だけ。
「レテ、いるか?」
「お父さん?いるよ」
その直後、部屋のドアの前から父が声掛けてきた。窓から顔を出すのをやめてドアを開く。
「いよいよ明日試験だな。勉強は大丈夫か?」
「うん。魔法とか、この世界のこととか色々学んだよ」
(覚えやすくて本当に助かる。子供の脳の記憶力すごい)
「そうか!お前の事だから実技では落ちないから安心しているぞ。っとと、それもあるがこっちが本題だったな。
お前は十四歳、つまり一年飛び級で入る児童となる。入学中の特例はこれまでも居たが、入学前の特例はそんなに居なくてな。アグラタム様やイシュリア様、他の偉い人に特別な証をもらって試験の時に見せないといけないんだ。それが受け取れるみたいだから、受け取りに行こう」
「……前日まで貰い忘れてたとか、そういう話じゃないよね?お父さん」
ジト目で父親を見続けると、いやいやいや、と手と首を振って否定される。
「どうやらアグラタム様が直々に作成されていたみたいでな。それを受け取れるのが今日だっただけだ。あぁ」
「……父さんがお仕事の合間に受け取ってきてくれれば全部済む話じゃないの?」
「……そうともいうな」
(やっぱり忘れていただけじゃないか!!!)
はぁ、と溜息をつくと居心地の悪そうな顔の父親がそっぽを向きながらほら、行くぞと玄関の方へ行ってしまった。やれやれ、と思いながら自分も出かける準備をして父親を追いかけた。
からんころん、イシュリア皇国の移動手段の一つ、街中を走る馬車を父が運転しながら城の方へと向かっていく。この国の守護者なのだから当然城にいる。そして父さんはそこそこ偉いみたいなので城も顔パスで通れる。
「ここで降りてくれ、父さんは馬を止めてくるからな」
そう言われるとよいしょっと降りる。城は巨大で、どこに何があるか分からない。しかし庭の方は随分わかりやすく、武器を持ちながら大人の軍人と見られる人からちょっと成長した子供、つまり学院の卒業生たちが稽古をつけてもらっていた。
気になって少しひょこっと風魔法で気配を消して覗く。うむうむ。動きは悪くないじゃないか卒業生。と勝手に鑑定していると流れ弾のような魔法がこちらへと飛んでくる。なかなか大きい水の玉だ。牽制用か何かだろう。
(おっと)
すっと隠れると、ばしゃり、と弾けて消える。そしてもう一度覗くと、卒業生の方がへばって降参していた。
「うむ。いい動きをするな。これからも訓練を積んで良き軍人となるのだぞ」
「はい!」
元気なのは良い事だ。そっとその場を離れると父が戻ってきた。
「待たせたな。それじゃ行こうか」
「うん」
興味の目で見られながら城内を進む。十四歳の小さい子供が歩いているのだから仕方ないだろう。やがて、迷子になりそうな城の一角の部屋を父がノックする。
「アグラタム様。私です。息子と共に明日の試験の証を取りに参りました」
「入っていいぞ」
優雅な男性な声が聞こえると、ドアを開く。
そこには水色の髪に整った顔立ち。それに煌びやかさより移動を重視した服装が目に入った。
(え?ちょっと待って?この姿っておい、もしかして)
そう。既視感。十四年間ずっと見なかった姿を確認する。
(マジかよ……あの弟子、イシュリア皇国の最強戦力だったのかよ!?通りで来る度に強くなるわけだ)
「アグラタム様。こちらが今年入学する息子のレテと申します」
「ひさ……っげふん!すみません、緊張してしまい……息子のレテと申します」
そう言って親子ともに顔を下げると微笑みの声が聞こえながら楽にするといい、とアグラタムは言った。
「試験の証だね?大丈夫、出来ているよ。ほら、レテ君。これを」
「ありがとうございます」
白銀に煌めく六角形のバッヂを貰うと、それを丁寧にしまう。
そのまま退出しようとしようとすると、アグラタムがあぁ!と言って父親に言う。
「すまない。この子と二人で話させて貰えないか?きちんと馬車のところまで届けるし、この前の映像で気になることがあったから個人的に聞きたいんだ」
「わかりました。レテ、失礼のないようにな」
「は、はい。父上」
そう言って父は退出して去っていく。それを確認するとアグラタムは座った姿から膝を着く。
「……本当に、転生なされたのですね。師よ」
「こっちも最高峰戦力がお前だったことに驚いたが、名前も聞いていなかったから気づかなかったよ」
それは国内立場二位の姿とただの子供とは思えない構図だった。
「……一太刀だけ、よろしいですか」
「子供なんだがな、いいぞ」
苦笑しながら頷くと、アグラタムは空中に無数の光を顕現させてこちらに放ってくる。前世での死ぬ前の攻撃だ。
(慈愛の盾よ)
右手を翳すとそれを包むように霧散させていく。そうして、納得したようにアグラタムは頷く。
「我がイシュリア皇国に産まれてきてくださり、ありがとうございます。魔術学院は良いところです。我が国の総力を注ぎ込まれた機関。師の魔力と実力では伸び伸びとはいきませんが、願わくば今度こそ幸せを掴んでください」
「……ああ、ありがとう。それじゃあ行こう。アグラタム」
「はい、師よ」
そう言って二人は手をつなぎながら父の待つ馬車の所へと向かった。
今日も窓から顔を出し、ぼーっとしながら独り言を呟く。しかし魔力の鍛錬を忘れている訳では無い。むしろぼーっとしている時間の方が長いからこそ魔法や他の系統を扱えるかを試したりしている。
十四歳の八月の終わり。自分の誕生日は春の四月なので十四歳を迎えた。魔術学院と武術学院は夏休みを挟み、秋に進学と入学をするようだ。
口をすぼめて薄く魔力の力で風船ガムのように風魔法を広げていく。そしてある程度魔力使ったら今度はその風の中に右手で水の玉を入れる。
簡易版魔法泡風船の完成だ。口を振るとぷるんぷるんと風の中の水玉が跳ねてこれはこれで楽しい。
最後に証拠隠滅、もとい他の人に迷惑をかけないように左手で軽い火魔法を広範囲にかけ、口から魔力を供給し続けるのをやめた。
ジュッ、と音を立ててそこにあった泡風船は見事に空へ昇っていった。煙だけ。
「レテ、いるか?」
「お父さん?いるよ」
その直後、部屋のドアの前から父が声掛けてきた。窓から顔を出すのをやめてドアを開く。
「いよいよ明日試験だな。勉強は大丈夫か?」
「うん。魔法とか、この世界のこととか色々学んだよ」
(覚えやすくて本当に助かる。子供の脳の記憶力すごい)
「そうか!お前の事だから実技では落ちないから安心しているぞ。っとと、それもあるがこっちが本題だったな。
お前は十四歳、つまり一年飛び級で入る児童となる。入学中の特例はこれまでも居たが、入学前の特例はそんなに居なくてな。アグラタム様やイシュリア様、他の偉い人に特別な証をもらって試験の時に見せないといけないんだ。それが受け取れるみたいだから、受け取りに行こう」
「……前日まで貰い忘れてたとか、そういう話じゃないよね?お父さん」
ジト目で父親を見続けると、いやいやいや、と手と首を振って否定される。
「どうやらアグラタム様が直々に作成されていたみたいでな。それを受け取れるのが今日だっただけだ。あぁ」
「……父さんがお仕事の合間に受け取ってきてくれれば全部済む話じゃないの?」
「……そうともいうな」
(やっぱり忘れていただけじゃないか!!!)
はぁ、と溜息をつくと居心地の悪そうな顔の父親がそっぽを向きながらほら、行くぞと玄関の方へ行ってしまった。やれやれ、と思いながら自分も出かける準備をして父親を追いかけた。
からんころん、イシュリア皇国の移動手段の一つ、街中を走る馬車を父が運転しながら城の方へと向かっていく。この国の守護者なのだから当然城にいる。そして父さんはそこそこ偉いみたいなので城も顔パスで通れる。
「ここで降りてくれ、父さんは馬を止めてくるからな」
そう言われるとよいしょっと降りる。城は巨大で、どこに何があるか分からない。しかし庭の方は随分わかりやすく、武器を持ちながら大人の軍人と見られる人からちょっと成長した子供、つまり学院の卒業生たちが稽古をつけてもらっていた。
気になって少しひょこっと風魔法で気配を消して覗く。うむうむ。動きは悪くないじゃないか卒業生。と勝手に鑑定していると流れ弾のような魔法がこちらへと飛んでくる。なかなか大きい水の玉だ。牽制用か何かだろう。
(おっと)
すっと隠れると、ばしゃり、と弾けて消える。そしてもう一度覗くと、卒業生の方がへばって降参していた。
「うむ。いい動きをするな。これからも訓練を積んで良き軍人となるのだぞ」
「はい!」
元気なのは良い事だ。そっとその場を離れると父が戻ってきた。
「待たせたな。それじゃ行こうか」
「うん」
興味の目で見られながら城内を進む。十四歳の小さい子供が歩いているのだから仕方ないだろう。やがて、迷子になりそうな城の一角の部屋を父がノックする。
「アグラタム様。私です。息子と共に明日の試験の証を取りに参りました」
「入っていいぞ」
優雅な男性な声が聞こえると、ドアを開く。
そこには水色の髪に整った顔立ち。それに煌びやかさより移動を重視した服装が目に入った。
(え?ちょっと待って?この姿っておい、もしかして)
そう。既視感。十四年間ずっと見なかった姿を確認する。
(マジかよ……あの弟子、イシュリア皇国の最強戦力だったのかよ!?通りで来る度に強くなるわけだ)
「アグラタム様。こちらが今年入学する息子のレテと申します」
「ひさ……っげふん!すみません、緊張してしまい……息子のレテと申します」
そう言って親子ともに顔を下げると微笑みの声が聞こえながら楽にするといい、とアグラタムは言った。
「試験の証だね?大丈夫、出来ているよ。ほら、レテ君。これを」
「ありがとうございます」
白銀に煌めく六角形のバッヂを貰うと、それを丁寧にしまう。
そのまま退出しようとしようとすると、アグラタムがあぁ!と言って父親に言う。
「すまない。この子と二人で話させて貰えないか?きちんと馬車のところまで届けるし、この前の映像で気になることがあったから個人的に聞きたいんだ」
「わかりました。レテ、失礼のないようにな」
「は、はい。父上」
そう言って父は退出して去っていく。それを確認するとアグラタムは座った姿から膝を着く。
「……本当に、転生なされたのですね。師よ」
「こっちも最高峰戦力がお前だったことに驚いたが、名前も聞いていなかったから気づかなかったよ」
それは国内立場二位の姿とただの子供とは思えない構図だった。
「……一太刀だけ、よろしいですか」
「子供なんだがな、いいぞ」
苦笑しながら頷くと、アグラタムは空中に無数の光を顕現させてこちらに放ってくる。前世での死ぬ前の攻撃だ。
(慈愛の盾よ)
右手を翳すとそれを包むように霧散させていく。そうして、納得したようにアグラタムは頷く。
「我がイシュリア皇国に産まれてきてくださり、ありがとうございます。魔術学院は良いところです。我が国の総力を注ぎ込まれた機関。師の魔力と実力では伸び伸びとはいきませんが、願わくば今度こそ幸せを掴んでください」
「……ああ、ありがとう。それじゃあ行こう。アグラタム」
「はい、師よ」
そう言って二人は手をつなぎながら父の待つ馬車の所へと向かった。
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