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一章 幼少期編

儀の結果報告

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「おおレテ。どうだ、いい結果は出たか?」
教会内の端の椅子に座りながら待っていた父は戻ってくると、ニコニコしながらこいこい、と手招きした。
シスターと共に戻ると、先程の結果を途中まで報告する。
「風属性が得意で、顕現能力。しかも属性に関しては満遍なく使えるなんて凄いじゃないか!それで、特異能力はあったのか?」
軍の人間として、息子が戦闘能力があることが喜ばしいようだった。そして、半分期待、半分好奇心のような表情を見せながら顔をシスターに向ける。
「は、はい。特異能力はありました」
「何だって!凄いじゃないかレテ!それで、どんなのだ!?戦闘向きなのか?それとも何か、別の役に立つ能力なのか!?」
やはりあるかすら分からない能力が自分にあったのはとても嬉しそうだった。そして詳細を聞こうとした自分に対し、シスターが代わりに答えてくれた。
「それが……長らくこのイシュリアには少なくない特異能力がありましたが、ここまで具体性がないものは初めてでした」
「なんだって?具体性がない?それはどういう……」
「レテ君の特異能力は『愛』でした。それ以外、何も分からないのです」
「……」

思わずこれには父も黙ってしまう。確かに精霊を呼び出すとか、具体的な内容が分かるモノの中自分の息子は愛、の一文字で片付けられたのだ。具体性の欠けらも無い。
「……愛、か。人を守るとかそういう事なのか?いや、それとも周りにそういった心に通じる何かを発動させる?分からないな、確かに」
うむむ、と悩んでいた父だったが、ポン!と手を打って立ち上がる。
「とりあえずお前に特異能力の中でも訳の分からないものがあった事だけは把握した!母さんにもこの結果を知らせに帰ろう!」
「そうだね、父さん」
愛。それはこの家でも、今どこかでも発生している感情そのものだ。
父には悪いが、詳細は伏せさせてもらおう。シスターには帰り際にこっそり見せてちょっと驚かそう。
「それでは帰りますね。シスターさん、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
二人で頭を下げると、シスターは微笑みながら礼をする。
「ありがとうございました。御二方にイシュリア様の加護があらんことを」
そして父を先頭に、自分が後ろについて教会から出ていく。
……その間際。自分の右手にふっと『純白の盾』が一瞬だけ顕現させた。
シスターは本能的にそれに縋るように走り出し、消えた瞬間に立ち止まる。

「……どうかしましたか?」

急に後ろで駆け出したシスターに対して、心配するように父親が振り返って声をかける。
「い、いえ。なんでもありません」
「そうですか……お疲れ様です」
どうやら疲れてふらついたと勘違いしたようだ。そのまま二人で帰路につく。
二人が出ていった後、シスターは自分の行動に一種の恐怖すら感じていた。
(一瞬だけ見えたあの子……レテ君の何か。あれには抗いようのない何か、何かがありました。あれが『愛』によるものだとしたら、一体彼はどれだけの力が秘められていますの……?いえ、そもそもそれがこの国の人に効くとしたら。
今の彼がアレを自在に使えるようになったらマトモに戦える人はいますの?)
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