蒼井倫太郎の愉快な夏

糸坂 有

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其の四 奇術師

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 夢を見た。
 上も下もない真っ白な空間に、安藤は一人で立っている。前も後ろも分からない中、ひたすら歩みを続けていると、足元に何かが落ちているのを見つけた。拾い上げると、それは空っぽになった瓶だった。
 安藤は、心の中で瓶に書かれている商品名を読み上げる。これは、白米と一緒に食べると美味しい、磯っぽい例のアレである。
 何でこんなものが?
 そう思って付近を見回すと、空になった瓶はあちこちに散らばっていた。全て、完食済である。
 どれだけの白米が消費されたのだろうと思うが、炊飯器は一切見当たらない。落ちているのは瓶だけだ。
 不思議である。
 安藤は瓶を集めながら、歩いて行く。
 瓶が落ちている先に、何かが蠢いているのを見つけた。
 透明だが、確かに何かが動いている。見間違いかと思って目を凝らすも、確かに何かがいる。
 目が合った。
「   」
 安藤は、名前を呼んだ。
 しかし自分の声が聞こえない。
 いったい自分は、何と言ったのか。
 安藤は目を覚ました。
 いつもと変わらないベッドの上だ。外は、仄かに明るいようだった。
 ひどい気分だった。
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