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死にたがりオーディション
部屋
しおりを挟む翌日、オレは終夜くんの家に招かれた。
「い、いらっしゃい…」
「お…お邪魔します…っ」
「今日、親居ないから…夜まで一緒に居られるよ」
「そ、そうなんだ…」
なにその今からラブコメでも始まりそうな展開台詞は。
って、いやいや…今日はそういうことをしに来たんじゃない。
そもそもオレらは親友なんだし、そういうのじゃないし。
「?部屋、行かないの…?」
「い、今行くよ…!」
って、何を焦ってるんだ。馬鹿なこと考えてる場合か。
*
終夜くんの部屋は二階にある。
こじんまりとした感じだけど、妙に落ち着けるようなそんな部屋だった。
「はい、オレンジジュース。ここに置くね」
「うん…ありがと…」
終夜くんの部屋、か…妙に緊張してしまう。
昨日、変な話をしたせいなんだろうか。
…それとも終夜くんの部屋に初めてお呼ばれされたせいなのかな。
テーブルにはストローがささったオレンジジュースが置いてある。
「…ズズッ」
ひとまずオレは近くにあった小さめのソファに座り、一口オレンジジュースを飲んだ。
…先ずは、落ち着かなきゃ。
「兎馬くん…なんか緊張してる?」
「え!あ…うん。実はちょっと…」
「ええ。なんで。別に男同士だし、そんな気にすることでも…」
「それはそうだけど…」
「ふふ…変な兎馬くん。」
「もう笑わないでよ…ッそれより、あの話してくれるんでしょ?」
「わ、わかってるよ…。…じゃあ、何でも聞いて?」
終夜くんはそういうと、まさにちょこんという擬音が似合う感じにオレの隣に座って来た。
…きょ、距離が近い。
変にドキドキするけど、これはきっと話をようやく聞ける期待感からのドキドキなんだ。
別に終夜くんと距離が近いからとかで意識してるんじゃなくて…っ
「…大丈夫?顔赤いよ?」
「へ、平気だよ!気にしないで。」
「そ、そう…?」
…大丈夫、落ち着いて。平常心だ。
あのことを聞くんだ、今度こそ。
「ーー死にたがりオーディションって、何?」
「……直球できたね」
「…ダメだった?」
「ううん、別に。でも……それを話す前には、先ずキミにこれを見て欲しいんだ」
「…?」
終夜くんはそう言って、その場から立つと自分の机の方に向かった。
そして、引き出しからあるモノを取り出すと大事そうに両手に抱えながらその場に戻って来た。
「…はい。これ」
手渡されたあるモノーーーそれは、資料だった。
それも丁寧にビニールで包装されている。
…見た目は普通だけど、明らかに見出しに大きく【死にたがりオーディション】って書いてある…
「…これ、どうしたの?」
「え?普通に資料請求しただけだよ?」
「し、資料請求…?」
し、資料請求って…そんな学校みたいな…。
「…?何か変だった?ボク達が通ってる塾だって、最初は資料請求からだったでしょ?」
「それはそうだけど…」
だけどそれはあくまで学校とか塾とかの話であって。
こういうオーディションとは別の話な気がするけど…。
でも、現にこうして資料があるんだし、オレが知らないだけかもしれない。
…怪しいけど、見ないわけにはいかないよね。
「?資料…見ないの?」
「み…見るよ!」
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