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第1章 伝説の幕開け
俺、なんだかヤバイかも……
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足音の正体は案の定ドンドリオン大山の主、野獣ゲアロスだった。
おかしい、ゲアロスは主食であるドンドリオン薬草の群生している標高1000メートル周辺を縄張りとしている。
俺たちのいるここは標高400メートルあたりだろう。なぜこいつが……
俺は不利な条件での狼型の野獣との戦いで無数の傷を負っていた。
中でも転んだレイファを庇った負った傷が致命的だ。
目に見えて動きの精彩が失われている。
やつの武器は強靭な足と尻尾に生えた毒の棘だ。
あれらは食らった瞬間死ぬのは避けられないだろう。
やつに勝機を見出すためにじっくり観察しているとあることに気が付いた。
やつの頭頂部に何か大きな物がぶつかった痕跡があったのだ。
すこし離れたところに冒険者らしき装備をした男2人が潰れた状態で死んでいた。こいつに殺されたのだろう。
そしていくつもの木を倒して、大木が転がっていた。大木の壊れ方からこれがゲアロスの頭部に命中したことがわかる。なんだあの不自然な大木は……
俺はふと思い出した。初の野獣討伐で今の自分の力がどのくらいなのか試そうと思い蹴り飛ばした一際大きな木のことを……
この傷がきっとチャンスだ。並の攻撃を通さないゲアロスにダメージを与えるための。
俺はケガと空腹、これまでの疲れで満身創痍だった。さらに時刻は夜。
戦える時間はあまり長くないだろう。短期決着、それがこの戦いには求められる。
「レイファ、ちょっと遠くに避難していてくれ。巻き込まれるぞ。」
俺はレイファに避難の指示をした。奴の棘がどこに飛ぶか分からない。
離れていないと危険なのだ。
レイファも流石に今の状況が分かっているのだろう。暗い中慎重に、かつ迅速に離れた木の裏に身を隠した。
レイファが隠れたことをわずかな視界を頼りに確認したその瞬間、俺はやつに飛び掛かった。
先手必勝だ。俺は走り込みやつとの距離を縮めた。10m程あった距離は一瞬で0となり、飛び上がった俺は握り締めた拳を思い切り傷目掛けて振り下ろした。
ゲアロスはしっかりと警戒していたためそんな攻撃など少し首を動かすだけで避けてしまう。
こちらも、そんなことは想定内だ。着地した瞬間すぐさま蹴りをいれる。
俺の連撃のことごとくが避けられる。たまに当たっても傷口でない限り鋼鉄で作られた剣さえも、弾く鱗にはダメージな通らない。
しかし、いくら攻撃が効かないとはいえ、自分よりはるかに小さな相手に懐に入られてはゲアロスも攻撃ができなかった。
レイファから見たらゲアロスは防戦一方でアイクが有利に見えていた。
しかし、攻撃を避けられるにつれ少しずつアイクが、不利になってしまうのだった。
とうとう、アイクの連撃が止まってしまった。スタミナ切れだ……
ゲアロスはそのスキを逃さなかった。足を上げアイクを踏み潰そうと地面に足を叩きつけた。
ゲアロスの足は地面を大きくえぐり取り無数の破片を撒き散らす。
アイクは足の直撃こそ免れたものの無数の破片がその身体をさらに傷付けていく。
ダメージを負い、怯んだアイクにさらに尻尾による追い打ちが襲った。
尻尾はアイクの身体を見事に捉えアイクは吹っ飛んだ。
毒の棘が生えた先端が当たることこそなかったが棍棒よりも太い奴の尻尾が直撃したのだ。ただではすまないだろう。
現に何本もの木をなぎ倒しながら飛ばされたアイクは何本目かの木に叩きつけられようやく停止した。
流血が、止まらない。狼型の野獣負わされた傷が開いたのだ。何本もの骨も折れているだろう。
ゲアロスが近付いてくる。トドメを刺しにきたのだ。
(俺は死ぬのか……)
死を目前にして思い浮かんだのは今よりももっと、小さかった俺に生きる希望をくれた女の子。
こんなところで死んだらダメだ。俺、は言うんだ。
あの子に……胸を張って、強くなったよ……と。
そこで俺の意識はプツッと闇に沈んだ。
おかしい、ゲアロスは主食であるドンドリオン薬草の群生している標高1000メートル周辺を縄張りとしている。
俺たちのいるここは標高400メートルあたりだろう。なぜこいつが……
俺は不利な条件での狼型の野獣との戦いで無数の傷を負っていた。
中でも転んだレイファを庇った負った傷が致命的だ。
目に見えて動きの精彩が失われている。
やつの武器は強靭な足と尻尾に生えた毒の棘だ。
あれらは食らった瞬間死ぬのは避けられないだろう。
やつに勝機を見出すためにじっくり観察しているとあることに気が付いた。
やつの頭頂部に何か大きな物がぶつかった痕跡があったのだ。
すこし離れたところに冒険者らしき装備をした男2人が潰れた状態で死んでいた。こいつに殺されたのだろう。
そしていくつもの木を倒して、大木が転がっていた。大木の壊れ方からこれがゲアロスの頭部に命中したことがわかる。なんだあの不自然な大木は……
俺はふと思い出した。初の野獣討伐で今の自分の力がどのくらいなのか試そうと思い蹴り飛ばした一際大きな木のことを……
この傷がきっとチャンスだ。並の攻撃を通さないゲアロスにダメージを与えるための。
俺はケガと空腹、これまでの疲れで満身創痍だった。さらに時刻は夜。
戦える時間はあまり長くないだろう。短期決着、それがこの戦いには求められる。
「レイファ、ちょっと遠くに避難していてくれ。巻き込まれるぞ。」
俺はレイファに避難の指示をした。奴の棘がどこに飛ぶか分からない。
離れていないと危険なのだ。
レイファも流石に今の状況が分かっているのだろう。暗い中慎重に、かつ迅速に離れた木の裏に身を隠した。
レイファが隠れたことをわずかな視界を頼りに確認したその瞬間、俺はやつに飛び掛かった。
先手必勝だ。俺は走り込みやつとの距離を縮めた。10m程あった距離は一瞬で0となり、飛び上がった俺は握り締めた拳を思い切り傷目掛けて振り下ろした。
ゲアロスはしっかりと警戒していたためそんな攻撃など少し首を動かすだけで避けてしまう。
こちらも、そんなことは想定内だ。着地した瞬間すぐさま蹴りをいれる。
俺の連撃のことごとくが避けられる。たまに当たっても傷口でない限り鋼鉄で作られた剣さえも、弾く鱗にはダメージな通らない。
しかし、いくら攻撃が効かないとはいえ、自分よりはるかに小さな相手に懐に入られてはゲアロスも攻撃ができなかった。
レイファから見たらゲアロスは防戦一方でアイクが有利に見えていた。
しかし、攻撃を避けられるにつれ少しずつアイクが、不利になってしまうのだった。
とうとう、アイクの連撃が止まってしまった。スタミナ切れだ……
ゲアロスはそのスキを逃さなかった。足を上げアイクを踏み潰そうと地面に足を叩きつけた。
ゲアロスの足は地面を大きくえぐり取り無数の破片を撒き散らす。
アイクは足の直撃こそ免れたものの無数の破片がその身体をさらに傷付けていく。
ダメージを負い、怯んだアイクにさらに尻尾による追い打ちが襲った。
尻尾はアイクの身体を見事に捉えアイクは吹っ飛んだ。
毒の棘が生えた先端が当たることこそなかったが棍棒よりも太い奴の尻尾が直撃したのだ。ただではすまないだろう。
現に何本もの木をなぎ倒しながら飛ばされたアイクは何本目かの木に叩きつけられようやく停止した。
流血が、止まらない。狼型の野獣負わされた傷が開いたのだ。何本もの骨も折れているだろう。
ゲアロスが近付いてくる。トドメを刺しにきたのだ。
(俺は死ぬのか……)
死を目前にして思い浮かんだのは今よりももっと、小さかった俺に生きる希望をくれた女の子。
こんなところで死んだらダメだ。俺、は言うんだ。
あの子に……胸を張って、強くなったよ……と。
そこで俺の意識はプツッと闇に沈んだ。
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※小説家になろう様でも掲載予定です。
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