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ヤダ私の親友、カッコよすぎ?!

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「慰謝料を請求させていただきます」
 会場に響き渡るは、我が親友サラ・ギーアスターの声。
 凛とした佇まいと、腹から出したよく通る声。

「ヤダ、私の親友、カッコよすぎ?!」←
「姉さん、今だけは黙ってた方がいいよ」←

 弟にはガチツッコミをくらい、親友からはめちゃくちゃ冷たい視線をくらった私はとりあえずお口チャックする。

 でも我慢できん、私の親友カッコよすぎる。皇太子にはもったいねえ!

 さて、そんな状況にも関わらず、高らかに笑ってみせたのはこの2人。
 そう、皇太子とその浮気相手である我らが義妹ラウラである。

「ふっ……ハッハッハ!!何を言い出すかと思ったら、寝言は寝て言うものだぞ?サラ」
「馴れ馴れしくサラなどと呼ばないでくださいませ。不愉快です。貴方様に呼ばれるぐらいならばネズミに名前を呼ばれた方がよっぽどマシです」

 さすがサラだ。婚約破棄が決まった相手はどんな立場だろうがゴミと言わんばかりに、Gブリさんとかネズミさんを見る時と同じ目で見てるし、なんなら思いっきりバッサリと切り捨ててるし。

「まぁ!仮にも元婚約者に対して不愉快だなんて……それにこの方は皇太子ですよ!?そんなお方に向かってネズミ以下だなんて……」
「あら、自分の欲も制御出来ていない時点で、蔑まれても仕方ない所業じゃないかしら?王族に名を連ねるのもはばかられる程度の所業だと思うのだけど、あなたはそうは思ってないみたいね」

 おおっと!?我が義妹のヘナチョコな指摘を華麗にかわし、カウンターをお見舞いしたサラ嬢。
 この発言には思わず会場中スタンディングオベーションの勢いだ!
 (これはどう思います?解説のテオさん)
 (急に解説に仕立てあげんなよ)

 (でもまぁ、この国の歴史もあるし……観衆はほぼ全員サラ姉に同意したと思うけど?)
 さて、ここで軽くこの国の歴史について解説しておこう。

 この国の成り立ちには王国法第百七条も深く関わっているのだ。

~リタ嬢のざっくり解説、さよかわの舞台のどす黒い成り立ち~

 この国の成り立ちはそれはそれはどす黒い泥沼な昼ドラものでした。
 どのぐらいかって聞かれたら、乙ゲーの舞台にしてはドッロドロの昼ドラ展開すぎじゃね?これを子供の寝物語に聞かせるの酷じゃね?ってぐらいには泥沼の歴史。

 建国黎明期、元々とんでもなく仲良しの二家の貴族達がいた。とりあえず分かりやすく、グリ家とグラ家とでもしておこうか。
 え?ダメ?じゃあキ○家と○ラ家?元の名前でいい?じゃあグリ家とグラ家で。

 このグリ家とグラ家どれぐらい仲良しかって言ったら、幼少の子供たちがお互いの家にお泊まりするのは当たり前、週3でお茶会夕食会、家庭教師もアクセサリーも服屋もシェア、お互いの領土の特産品使って商品開発もちろん売り上げはきっちり折半、どっちかが困ったら喜んで金出す人出す、夜会に出ようもんなら色違いデザイン一緒の衣装で参加、お互いの領土間には通行料?なにそれおいしいの状態。

 二家の長男から七男に至るまで、ことごとく親友兼ライバルという関係で切磋琢磨する仲だし、令嬢たちも例に漏れず仲良しすぎるぐらいで婚約者そっちのけなんてこともしばしばあったらしい。

 正直この話を初めて聞いた時(確かこの世界で4歳ぐらいだった気がする)は、仲良すぎじゃね?そこまで行くとキモイぞ?って思ってた。
 あと多分ソイツら絶対連れションしてた。連れション文化圏の奴らだと思う。

 連れション文化圏かどうかは定かでは無いが、そんな仲が良すぎる二家の間にある日、とてつもない罅が入ることになった。
 きっかけのヒントとしては、"浮気、ダメ絶対"。

 ある日、国でお貴族様達がこぞって遊ぶ所謂狩猟大会が行われることになった。
 だがしかし、この世界には魔法がある訳で、ただの狩猟大会な訳がない。
 ターゲットとなるのは、ただの動物ではなく、魔法生物と呼ばれる魔石のパワーで生きているような不思議動物達。

 例えばファンタジーものでよく見るものすんごくかわいい代表カーバンクルや、グリズリーよりもデカい巨大なクマ(名前忘れたなんだっけ?マジカルグリズリーとかだった気がする←適当)など多種多様な獲物を狙うような、最早狩猟と言うべきなのかも分からない血で血を洗うような、とんでもなく血なまぐさくてとんでもなく男臭い大会なのだ。

 ちなみに私はなまじ魔導騎士であり、魔導騎士団をまとめる団長であり、第二王子の指南役とか言う面倒……かっこいい職業に着いてしまっているため、毎年出場しなければならない。魔導騎士なんかなるんじゃなかった。ましてや団長になんて……

さて、そんな事件のかほりが濃厚な狩猟大会で、お約束と言うべきか、小さな事件が起こってしまう。

 とある貴族令嬢が身につけていたアクセサリーが紛失したのだ。
その後、すぐに見つかったものの……その紛失した物が問題だった。

 その紛失したアクセサリーは、グリ家3女が持っている物と全く同じ物だった。
 それだけではなく、グラ家3女も全く同じ物を持っているという奇妙な構図が出来上がり。

3家だけでなく周囲もとても混乱していた。
なぜ娘たち(彼女たち)は全く同じ物を持っているんだと……
 グラ家と最初にアクセサリーを紛失した令嬢は口を揃えてこう言った。
「仮面舞踏会で出会った殿方に"君との出会いは運命だ"と言われて渡された」
それに対してグリ家3女はこう答えた。
「婚約者に誕生日のお祝いにいただいた……」

 グリ家、グラ家一同は、一斉に顔を青ざめさせた。
 それもそのはず、グリ家3女が婚約した相手はこの国の当時の第四王子だったのだから。

  そんな騒ぎを聞きつけた、当時の国王と王妃はすぐに第四王子を呼び出し問い詰めたところ、あっさりと「グリ家3女とグラ家3女、そして貴族令嬢にアクセサリーを贈った」
と白状した。
 その上でこうのたまった。
「グリ家3女のことはもちろん愛しています。ですが、それと同等にグラ家3女も貴族令嬢も愛しているんです!」
 さらにコイツの主張は留まることを知らず。
「そうだ!!父上のように僕も、側室を持てばいいんじゃないでしょうか?!そしたらみんなで楽しく暮らせますよね!」

 初めてその場面を聞いた時、思わず私はチベットスナギツネ顔略してチベスナ顔になったのは言うまでもないと思う。
 うん、だって母さんにその人正気?って思わず聞いたもん。

 そしたら母さん"そうよね…そう思うわよね。これが正気だったみたいなのよ、気が狂ってなきゃこんなこと言えないと思ってたんだけど"って肯定すんだもん、その時母さんには逆らわんとこって決意したよね。

 さて、そんな事を言われて黙ってないのがグリ家、グラ家、そして貴族令嬢のお家、あっちゅーまに三家門で結託し、王家に慰謝料を請求し、王家は何も言わずに慰謝料をそれぞれに支払った。

 その後、慰謝料は受け取ったものの、親友の婚約者と浮気をしてしまった負い目からか、親友が婚約者と浮気をしていた悲しみからなのか、娘たちの関係性が悪化したことで親達も遠慮したのか定かでは無いが、結局グリ家とグラ家の仲は元には戻ることは出来なかった。

 一方、王家では伝統とはいえ、側室を持っていたことで第四王子が歪んでしまったのでは?ということになり、国王の側室制度は撤廃され側室を持つことは違法だということが国会で認められた。
 それとほぼ同時期に、国王が王座を退き、第一王子が国王に君臨すると同時に前国王と前王妃が離婚することとなった。

 だが、前国王は自分が側室を持っていたのは側室制度が違法になる前の事で、自分が側室を持っていたとしてもそれは浮気には当たらないと主張し、前王妃は国会で側室が違法だと認められた後での離婚という事で浮気に該当すると主張。

 まさかこの時の離婚騒動が後に"神さえ匙を投げた泥沼離婚劇"として後世に語り継がれることになるとは本人達は知る由もなかっただろう。

 その時の神さえ匙を投げた泥沼離婚劇が引き金となり、国会が王国法第百七条の草案を新国王に提案、すぐに草案は認められ正式に王国法第百七条が王国法典に書き加えられた。

 (そんな神さえ匙を投げた泥沼離婚劇の話はラウラガチ勢のクリスタベラだって話してるはずでしょ?子供に話す内容じゃねえだろってぐらいドッロドロな話なのに、この国の人達は何を考えてるのかあろうことか寝物語として語るぐらい有名な話だもんね……私最初聞いた時は心配されるぐらいチベスナ顔晒したのに←)
 (それに第一皇太子あのアホだって幾度となく聞いてるはずなのになあ……俺もチベスナ化した←)
 (あれはチベスナ不可避だよね)
 (特にあのみんなで楽しく暮らせますよね?って場面な)
※ちなみにここまで2人とも既に深刻なチベスナ中
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