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そして現在へ

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 ラウラの転生者発言は現在から数えて、7年前、ラウラの言う乙女ゲームの開始時期から数えて5年前の事だ。

 ラウラは私達が聞いてもいないのに、熱に浮かされたかのようにペラペラとこの世界のことを話し出した。

 彼女が言うことを要約すると以下の通りだ。

・あまりヒットを飛ばせなかったものの、カルト的人気を誇った"さよならのかわりに"の世界だ、との事

・略して"さよかわ"では、ハッピーエンド、メリーバッドエンド、バッドエンドの3種類が用意されている乙女ゲームだった

・"主人公わたし"は15歳の時に聖女として覚醒、王立学園に入学することになる
※主人公=わたし発言はマジで気が付かなかった様子

・王立学園では攻略対象達との恋愛だけでなく、王国で勃発する事件を解決したり、領地経営などもできる

・そこで好成績を残すと、攻略対象達の好感度にバフがかかるシステム

・生前できず終いだった、超難関の攻略対象達とのハーレムエンドを目指したいと思っているから協力して欲しい
※目がガチだった

「その……さよかわ?は、なんでそんなにヒット?しなかったんだ?」
 と私が恐る恐る質問した所、ラウラは事も無げに"領地経営もしなきゃハーレムエンドにたどり着けなかったからね、しかも領民達ってめちゃくちゃわがままだったからさぁ……多分それで敬遠されちゃったのかも、キャラの顔がいいだけにもったいないよね"と答えた。

 その答えに、私もテオも苦笑いをするしか無かった。

「領地経営もするって……随分と本格的なゲーム?だったんだな……」
「そうなの!!しかも、あんまり放置してるとみんな出てっちゃうから面倒くさくってぇ……」
水を得た魚のように、ゲームに対する愚痴を話すラウラに適当に相槌を打ちながら、テオと目を合わせテレパシーで会話する。

 (姉さん)
 (なんだ、弟よ)
 (これって姉さんも生前プレイしてたよね?しかもハーレムエンド結構早めにたどり着いてなかった?)

 そう、実は私も生前"さよならのかわりに"をプレイしていたのだ。
 きっかけは友達に"お前は女のクセに女心を理解していない!これをプレイして少しは乙女らしくしろ"と言われ、ソフトを押し付けられたこと。

 結論から言うと、どハマりした。
 裏エンドまで踏むほどにどハマりした。
 (友達でもたどり着かなかったエンドを見たと言ったら思いっきり殴られた)

 この世界が"さよならのかわりに"の世界だったとは全く気が付かなかった。
 (気が付かなかったのは、結構痛いな……しかもこのままだと……)
「サラは確実に辺境への追放処分を受けることになる」

 語るだけ語って、"こうしちゃいられないわ!今から攻略対象達と運命的な出会いのために、自分磨きしなくっちゃ!"と私達を置き去りにしたラウラを見送り、私はそう口を開いた。

「国外追放じゃないんだ、珍しいね」
 大体のゲームだと、悪役のバッドエンドって国外追放か処刑だよね?とテオは疑問を私に投げかけてきた。

「サラは曲がりなりにも侯爵令嬢だし、この国では貴重な魔法縫製師でもあるからね。国外追放にして力の流出を許すよりも、辺境で死ぬまで労働させたいんだろう」
 別のエンドでは、王宮の地下牢でひたすら魔法縫製をしてたりするバッドエンドだったからね。
 と乙女ゲームに有るまじき、凄まじい闇をテオに聞かせたところ、いつかの私のようなリアクションをして見せた。

「いよいよ、この国腐ってんな……」
「それを初見で見せられた私のメンタルよ……それにどの国も上層部が腐ってるのはデフォでしょ。それよりも、これはチャンスだと思う」
「チャンス?」

 そう、辺境でゆったりと面倒事とは無縁の人生を過ごすチャンスだよ。

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