上 下
2 / 10

全ての始まり-その2-

しおりを挟む
 さて、私と三つ年下の弟テオが転生者である事は先程のお話で十分理解していただけたであろう。
 (ちなみに、先程のお話の最後の会話は私が7歳、テオが4歳の時の会話)

 そんな転生者である私達は、ある事を決めた。
 "絶対に面倒事を回避する"という事を……

 先程の会話で、ある程度お分かりだろうが、私とテオは前世ヲタクという人種であった。

 そりゃあもう、パソコンの中身など、漏洩した日には、墓から蘇ってデータを全てこの世から消し去り、二度と漏洩しないように元のデータがたっぷり入ったパソコン本体を海に沈めるぐらいやる、ヲタクであった。

 そんなヲタクな私達姉弟は、とんでもなく面倒事が大嫌いな無気力姉弟(ご近所さん命名)でもあった。
 それは異世界とて同じこと、転生した以上この世界で暮らしていくのは必須、そんなセカンドライフに前世でも嫌っていた面倒事が絡んでくるなど言語道断、という思考にたどり着くのは仕方の無い事だとわかって欲しい。

 だがしかし、この世界は私達を放っておいてくれなかった。
 それは私達が2度目の11歳と9歳を迎えてすぐの事だった。
「まさかこんなことになるなんて……」
「この世界の姉に面倒事が降りかかるなんてな……」

 先程の話で、私が"実質的な長女"と言ったのには理由がある。
 実は、アルドリッジ家にはラウラが来る直前に結婚して家を出た長女がいたのだ。
 その人こそ社交界の華フランチェスカ·アルドリッジ(旧姓)、今はフランチェスカ·デロンシャン辺境伯夫人である、フラン姉様である。

 そんなフラン姉様の身に降りかかった面倒事、それは"婚約破棄"しかもフラン姉様側に責任があると言う不当な婚約破棄であった。

 当然の事ながら、父も母も烈火の如く激怒した。
 だが、当の本人は両親の怒りを他人事かのように12歳歳上のデロンシャン辺境伯と恋に落ち、周りを巻き込む大恋愛に発展。
 後に相手側から相当額の慰謝料を分捕り、元婚約者は家諸共没落、当の被害者フラン姉様はデロンシャン辺境伯と共に盛大な結婚式を挙げ、社交界の華は辺境の地へと旅立った。

「やっと終わった……」
「あんだけ大騒ぎが起こったんだ。もう流石に5年ぐらい静かになるんじゃね?」←
 弟テオの予想虚しく、やっぱり世界は私達を放っておいてくれなかった。

 私が12歳、テオが9歳の冬……私の7つ下、テオの4つ下、件の妹が我が家に仲間入りを果たしたのだった。

「なんでこうなるんだ……」
「確かマナー教え込めって言われたんだっけ?ドンマイ笑」

「他人事だと思いやがって」
「他人事だし」←
 テオのこの発言にムカついた私は、鍛錬の時間にテオをボッコボコに叩きのめし、女騎士としての道を歩み始めるのだが、それはまた別の機会にでも話そう。

さて、いきなり出来た7つ年下の妹(仮)へのマナー講座だが、想像以上に遅遅として進まなかったのは言うまでもないだろう。
「……そういう訳で、男爵令嬢として恥ずかしくない程度のマナーを教えることになりました。アルドリッジ家が次女、リタ·アルドリッジよ」

「マナーなんて必要なのぉ?」
 (必要だから教えるっつってんだろ)
「えぇ、嫁ぎ先や、旅行先、夜会やお茶会が多い貴族にとってマナーは必要不可欠なものよ」
 私はそれはそれは懇切丁寧に、わかりやすーく説明した。

「ん~、いいや!いざと言う時は、お姉様や、お兄様が助けてくれるってパパも言ってたし!」
 (パパ!?えっ、まって、父上の事パパって呼んでんの!?えっ、お前いくつ!?パパ呼びは流石に4歳ぐらいで卒業するのがセオリーでしょ?!)

「そう、わかった。でも、私もテオも忙しい身になるから、いつも一緒にいられるわけではなくなってしまうの、だから最低限は覚えてくれると私もテオも嬉しいわ」
 (せめてティーカップの持ち方ぐらいは覚えとけや、堂々と手ぇ添えて飲みやがって……リンダ※のお茶が不味いとでも言いたいのか!?)
※私の侍女

ちらりと、後ろで待機するリンダを確認すると、怒りなのかプルプルと震えている様子が見て取れた。
 (ほらぁ、リンダもお茶が不味いって言われてると思ってるから怒ってんじゃん……後でフォローするの私なんだけど……)

「あ~、ラウラ?ごめんなさいね、お茶を飲む時はティーカップに手を添えないで飲むの、手を添えると不味いと言っているのと同じことなのよ……お茶を淹れた人からするととっても気分が良くないから……」
「……ヒック……」
 (うわぁ、めんどくせぇー!!!!)
「お姉様は、、、私の事……嫌いなの?」
 (好きとか嫌いとか言う次元じゃねえから……)

 なんとか弁明しようとしたら、飛んできました。
 ラウラに付けられた侍女のクリスタベラ(私とテオは苦手な人物)

「まぁ、お嬢様!!いくら腹違いの妹だからといって、ラウラ様も立派なアルドリッジ家の一員なのですよ?!これは旦那様に報告しなければなりませんね!!」
 キンキン 声でまくし立てるクリスタベラに、味方が来たとばかりに引っ付くラウラ……誰か助けてくれ~。

 結局、授業などまともに進まず、最終的に父の判断で私はラウラと合わないからという理由でラウラのマナー講師から外された。
このことがきっかけでラウラがどんどん調子に乗り出した事は間違いないと思う。

「おつかれ」
「やっと解放された……」

「おう……まあでも、確かにアレはねえな……」
「ことある事に、"お姉様はラウラが嫌いなの云々~"ハッキリ言って欲しいなら言ってやろうか?嫌いだよ、この面倒事製造機!!」

「面倒事製造機wwwクッソピッタリじゃん!!www」
「はぁ……リンダ~、お茶淹れて~」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

僕の2000回転生

yuu3232
ファンタジー
彼、高合樹 輝は、2000回転生した大規模な経験者だったが... 修学旅行中に不慮の事故で4クラスごと亡くなり、さらに転生!! 目が覚めたら彼は「ユナイト・ハーベルト」として生まれ更には「女子である」といわれた挙句 御令嬢として14経った今、野営中!!前世までの記憶生かして"フツー"を目指す!!

非オタな僕が勇者に転生したら、オタな彼女が賢者に転生してサポート万全だった。

ケイオチャ
ファンタジー
高校2年生の真忠悠太(まただ ゆうた)は、部活に勉強に文武両道な充実した毎日を おくっていた。 しかし、ある日の教室に強烈な閃光を 見た途端、意識を失った。 目が覚めると、不思議な光の空間で ただぽつんと座っていて目の前には 女性がいた。 『私は転生の女神です。  あなたは勇者に選ばれました。  剣と魔法がある異世界[コエシステンツァ]  を救って下さい。』 その意味を彼は理解していなかった。 知らなかった…のである。なぜなら 今までアニメやゲームは聞いたことある程度の いわゆる非オタだった。 あまりにもな知らなさに女神は もう一人の転生者にすぐ会えるよう にし、無事を,祈りつつおくった。 異世界にいき悠太は、 もう一人の転生者であり、賢者の 在原瑠花(ありはら るか)に出会う。 瑠花は彼と同じ高校の同級生で ゲーム三昧のアニメ観まくり人生 をおくっていた。しかし、 彼と同様に強烈な閃光により意識を失う。 そして女神から、賢者となり魔法で勇者を 支える使命をたくされていた。 彼の異世界についての知識がなさすぎる ことに驚きつつも、全力で支えることを 決意した。 クラスメイトと再会していき、世界を救う意味を 見つけていく異世界初心者ファンタジー。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

処理中です...