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全ての始まり

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  辞めて……

「サラ・ギーアスター侯爵令嬢!」

 お願い、もうこれ以上面倒事を増やさないで……

「聖女ラウラへの嫌がらせの数々、筆舌に尽くし難い程に醜悪だ。よってここにお前との婚約を破棄し、聖女であるラウラ・アルドリッジ男爵令嬢を貶めようとした罪により、お前を断罪する!!」

 私の願い虚しく、親友であるサラは大衆の面前で、婚約破棄の上に断罪されるという、前世で何かやったの?と言われるレベルの辱めを受けた。

 そんなとんでもない事をされた親友を慰める事もなく遠い目をしながら、私は1人、頭を抱えた。
 (また面倒事を増やしやがって……)

 全ての始まりは、12年前の事、私が覚えている限り最初の面倒事だった気がする。
 12年前の5月20日、当時のアルドリッジ家を揺るがす程の面倒事だった。
 
「父上、今なんと……?」
 事件の前日に当時12歳の私は父に呼び出された。

「明日、この家に少女を引き取る。名はラウラ、歳は5つ、私の子だ」
淡々とした口調ではあるものの、私の方を見ようともしない父に違和感を覚えたが、それよりもなぜそんなにも大切な事を実質的な長女であるとはいえ、12歳の子供に話して聞かせたのかが私には理解できなかった。

 が、もっと理解不能な事を言われた。

「リタ、お前がラウラにマナーを教えなさい」
「……はい??」
 その当時はそう返事をしたけれど、心の中ではこう返事をした。
 (えっ……?は……?何言ってんのこの人ぉ!?は?絶対にめんどくさいやつだよね?7歳まで平民として過ごしてきたヤツに?マナーを?叩き込めって?無理ゲーじゃね?無茶ぶりにも程があんだろうが!!1·2·歳!!アイ·アム·1·2·歳!!)
 
 なんとしてでもこの面倒事を回避しなければ!と私は人知れず闘志を燃やした。

 何を隠そう私は生まれた時から、いや、生まれる前から面倒事が大嫌いなのだ。
 そう、私は前世の記憶とやらを持って生まれた、所謂、"転生者"と言うやつなのだ。

 私が転生したことに気がついたのは、生後5ヶ月の事……
 気がついたら、ベビーベッドで寝っ転がって、あうあう言ってた自分に気がついて、うっそだろマジかぁ!!って叫びたくなるほどにメンタルが死んだのを覚えている。
 あの時は、一瞬で真顔になったから全力で医者呼ばれたし、めちゃくちゃ凄い勢いで屋敷中の人間があやしに来てちょっと引いた。
 
 そこから聞こえてきた情報やら、自分が歳を重ねて知り得た情報やらを総合した結果、この世界は異世界と言う類いの世界であると思われる。

 何故異世界と思われるのか、それには三つの理由がある。
 まず第一に、この世界には魔法の概念が存在する。
 (やってみたら、割と簡単にできてしまった。転生特典かなにかかな?全力でいらんが……)←

 第二に、聞こえてくる言語は日本語っぽいのだが、ちょいちょい聞きなれない単語が混じっている。
 (グロースクロイツ王家とか、聖騎士とか、魔導士とかめちゃくちゃかっこいい単語やなぁ、厨二心をくすぐられる……めちゃくちゃ関わりたくないけど……)←

  第三に、数年後生まれた弟も生後5ヶ月程経ったある日、私と同じ症状が出た。
 (私と同じ転生者だったんか……もしかしたらあのバカ前の世界の弟かもしれんなぁ……弟だったわ)←

 以上の理由から、弟(この世界の名前ではテオ)と共に、なんとかこの世界の家族に怪しまれないように情報交換した所、私とテオは向こうの世界で死んでいる事が発覚した。

「そうか……パソコンのデータが心配だな……」←
「そこかよ、俺もだけど」←

「消しときゃよかった……」
「姉貴のは、俺が責任持って遺言通りに水没させて、粉々に粉砕させといたから安心して」

「よくやった。今日のオヤツのブリオッシュ、多めに取り分けて貰えるようにしてやろう」
「パソコンぶっ壊しただけなんだけどね。てか遺言にするほど執着してたじゃん?母さんがなんか怖いから、アンタやってって言うから俺がやったってだけなんだけど……」

「娘の遺言に対してなんか怖いからって……」
「遺言に遺すんだったらもう少しまともな事遺せって事」←
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