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勇者と魔王 編
47 皿まで食べてくれたらいいのに *R18
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ぎこちない空気の夕食が終わり、明日の支度を済ませて自分のベッドに入った。
なかなか寝付けず、何度も寝返りを打つ。
仕事のことを考えながら布団に入っていたころみたいだ。
あのころ、終電もとうに終わった時間に帰宅して、へとへとなのに眠れなくて、目をつむって夜をやりすごすことが「睡眠」だった。
いつからかリビングのソファで寝るようになった。
思い返せば、俺は布団の中が嫌いだったのかもしれない。
意識を断つ術もなく、自分のふがいなさと、明日への不安を、ひたすら反芻してしまうから。
今日みたいに。
窓のカーテンの閉めかたが甘かったらしい。柔らかな月の光が部屋に差し込んでいた。
明るさが気になるが、ベッドを出るのも面倒で、背中を向ける。
やっとウトウトしてきて、ふと浅い眠りに落ちてはふと目覚める。
繰り返すうち、数時間は経過したように思う。肉体はともかく、脳はちっとも寝た気がしない。
この調子で朝を迎えてしまうのだろうか。何度目かの覚醒でそう考えていたとき、部屋の気配に違和感を感じた。
イヤなものではなく、なんだかむしろ……ホッとして、目をつむったまま背中側に声をかける。
「……ジェード、そこにいるんだろ」
上体を起こして振り返れば、暗がりから月明かりの下へとジェードが歩み出る。
最期に、寝顔でも見に来たのか?
ただのエサに対して未練たらたらじゃないか。
俺はシャツの首元のボタンを外し、首筋を差し出すように見せた。
「いいよ。家賃徴収して」
すると、ジェードは引き結んだ唇をわずかにこわばらせる。遠慮することないのに。
「そういうつもりで来たわけではない。……その、先ほどはすまなかった」
申し訳なさそうに目を伏せる姿を見て、俺はふふっと笑ってしまう。なんだ、そんなことを気にしていたのか。
「怒ってないよ。俺も言いすぎた。ちょっと後悔してる」
とはいえ、本当にただ謝りたかっただけならこんな侵入の仕方はしなかっただろ。とは、さすがに意地悪だから言わない。
「仲直りは済んだわけだけど、もう部屋に戻る?」
「うむ……」
一旦返事をしたものの、ジェードはそこを動かない。
彼の「さみしい」という感情をこうやって目の当たりにすると、胸がぎゅっと熱くなる。俺も同じ気持ちだから。
思いきって布団をめくり、横にずれて彼のためのスペースを作った。
ベッドの空白をぽんぽんと叩く。
「一緒に寝ようよ。ミュラッカのときみたいに」
「なん」
「なんでも!」
彼の言葉をさえぎって、身を乗り出して腕をつかみ、ベッドに引き込んだ。
抵抗することなく倒れ込んだ彼の上に覆い被さり、驚いている顔を見下ろす。
「ハヤ──」
「ずっと考えてたんだ。俺、《おいしかったな》って最期に思い出されたくないよ」
エサ止まりなんて。
「こんな気持ちになる意味……わかんないけど、イヤなんだ。このまま明日を迎えたくない」
ミュラッカのときみたいに、は嘘になってしまったな。
あのときはこんなことまで要求しなかった。
へたくそにキスを落とすと、ジェードは心底驚くような顔をする。
唇を押し付ける以上の作法がわからなくて、すぐに離れようとしたら肩をつかまれた。
無防備に緩んだ唇の間へ舌が滑り込んでくる。
こういうキスって過去にしたことあったっけ……なんだか気恥ずかしく思いながら、たどたどしく応えた。
「ふっ、ぅ……ぅっ」
不器用に息継ぎしながらざらつく舌を味わっていると、肩を押されてひっくり返された。
ジェードと上下が入れ替わり、服を脱がされていく。
俺もどきどきしながら手を伸ばして、彼の前を開けていった。
彼の指がするりと脇腹を撫で、ズボンのふちを下げる。
下着も何もかも脱がされて裸になった。脚を開かされれば、潤滑剤代わりの香油で後孔をほぐされていく。
「っぁ、あ……」
身体を紐解かれる快感に身を任せながら、俺はゆるく勃ち上がっているジェードの性器を扱いた。
手の中で硬く大きくなる感触につい興奮してしまう。それが自分をどう気持ち良くしてくれるのか、よく知ってしまっているから。
とろりと潤滑油の糸を垂らしながらナカから指が抜け出た。彼の先端があてがわれるのを感じて、ジェードの背に腕を回す。
すぐに、それが挿入ってくる。
「あぁぁ……!」
歓喜の声を漏らせば、緩いピストンに甘く揺さぶられていく。
受け入れるコツがわかってからは、あんなに苦しかったサイズ感ともうまく付き合えるようになった。自分にとって楽で、かつ彼にとっても良いようにできると、変な話だが妙な達成感を得られる。
ジェードはジェードで、俺を熟知したと言わんばかりに気持ち良いところばかり責めてくる。そう激しくされていなくても、気が付いたら快楽に溺れさせられてしまう。何度命乞いさせられたことか。
行為に励む音が静かな室内に響く。互いの吐息まではっきりと耳に届いた。
ジェードが囁くように俺を呼ぶ。ふだんよりもわずかに甘ったるい声が愛おしくて、名前を呼び返せば額へ口付けられた。
ぐいっと脚を持ち上げられ、ジェードが腰の位置を詰めた。でんぐり返しの途中みたいに尻の位置が高くなったことで、接合がより深くなる。
腹奥を貫かれる快感が増し、視界の端で揺れる自分の性器からとろりと先走りの汁が糸を引くのが見えた。恥ずかしいがどうしようもない。
絶頂の気配が近付くにつれ、彼の背に絡めた手に力がこもってしまう。
「ん、くっ……ぁ、ぁっ……! も、イきそ……ジェード……っ!」
「ハヤトキっ……!」
高まっていく射精欲で、ジェードもピストンの調子を早めていた。
あちこちにキスされてくすぐったい。
いつもなら甘噛みなのに、今日はやけに扱いが柔らかかった。
甘えるように何度か名前を呼び、彼の耳を撫でた。指先から拾う彼の体温は高くて、興奮が伝わってくる。
顔を上げたジェードと目が合い、その金色の瞳の美しさに吐息を漏らしてしまう。
「っ、ぁ、あ……!」
また唇を重ねて互いを貪りながら、俺たちはほとんど同時に果てたのだった。
■
横並びにくっついて寝そべり、じゃれるように足を絡ませる。
すぐに眠る気にもなれなくて、睦言を交わしていた。
「……俺のこの気持ちって、吸血鬼の能力のせいなのかな?」
「どういう意味だ?」
「その、つまり。俺が、こんなに……その、あんたのことばっかり考えてること」
ジェードはきょとんとして顎を撫で、考え込む表情を作った。
「血を吸われたい欲求が強いなら、私のせいだな。……生活に支障が?」
そうじゃない。
首を左右に振る。
「それ以外の欲求なら、それはおまえ自身からくるものだ。そもそも、吸血鬼の"噛み"にはおまえが疑っているような洗脳じみた力はないよ」
じゃあつまり。そういうこと。
(言い訳できなくなっていく……)
自分の変化に気持ちが追いついてない。
こんなになっても、だ。
俺が悶々とした顔で黙っていると、ずっと何かを言いたそうにしていたジェードが動いた。
「……すまない、いいか?」
首筋に触れられて、どくんと心臓が跳ねる。みるみる身体が熱くなって、呼吸が乱れそうになるのをこらえた。──違う、俺のバカ、なに発情しようとしてんだ。これは2ラウンド目の誘いじゃない。
心の中で自分を打つ。
ここのところの彼は、薔薇も吸わなければ固形物も口に入れていなかった。腹が空かないわけがない。やっぱり我慢していたのだろう。
彼の手に自分の手のひらを重ね、頭を逸らして吸いやすいようにしてやる。
「うん、どうぞ」
感謝の合図のように口付けられ、それから牙が皮膚を破った。
「っ……!」
身体が小さく震える。痛みにはもう慣れたが、快感だけはうまく受け流せない。
しかも久々なせいか、自分が覚えているよりずっと……気持ち良い。
ちゅ、じゅる。あふれていく生ぬるい血を舌に舐めとられ、吸われながら、ジェードにしがみつく。
イった後だというのにまた自身の性器が芯を硬くしていくのがわかる。無意識に彼の太ももへ押し付けてしまっていた。
「はぁ、あ、あっ、……っ!」
ジェードの養分になる──そう意識するほど、奪われているのに満たされる。
不思議な気分だった。
血を搾るように首へ歯が立てられる。
食い込む力が増すほど頭がじんと痺れていく。
「っ、あ、あ、っく……、ッ~~~~!」
頭の中の"気持ち良い"が膨らみきって、眩しく弾けた。
強烈な恍惚に襲われ、ビクッビクッと激しく腰が跳ねる。
中途半端に勃起した性器からは精液も出ないまま、どういうわけか絶頂していた。
(な、に……いまの……、すご、く……きもち……よかっ……た……)
俺の血がそんなに美味いのか、ジェードは食事に夢中になっている。
彼の艶やかな後髪を撫でながら、うっとりと余韻に浸った。
今日で最後なら、ついでにこのまま吸い尽くされたいな──なんて、ぼんやりと考えてしまう。
実際にそう口にしてみたら、ジェードは慌てて離れ、唾液と血にまみれた唇を腕でぬぐっていた。
「笑えない冗談はよせ」
おどけて微笑んで見せると、抱きしめられる。
そのまま食事の跡が残る首筋を拭かれ、冷えないように顔の下まで布団をかぶせられた。
「……明日、俺が寝てたら起こして」
ぬくもりの中でまぶたが重くなるにつれ、不安になってきた。
起きたらもう昼で、ベッドにジェードがいなかったら立ち直れないだろう。
「おまえの決意がそこまでなら、無下にはしない。約束しよう」
ジェードは嘘をつかない。その言葉を聞いて、俺はようやく安心して目を閉じるのだった。
なかなか寝付けず、何度も寝返りを打つ。
仕事のことを考えながら布団に入っていたころみたいだ。
あのころ、終電もとうに終わった時間に帰宅して、へとへとなのに眠れなくて、目をつむって夜をやりすごすことが「睡眠」だった。
いつからかリビングのソファで寝るようになった。
思い返せば、俺は布団の中が嫌いだったのかもしれない。
意識を断つ術もなく、自分のふがいなさと、明日への不安を、ひたすら反芻してしまうから。
今日みたいに。
窓のカーテンの閉めかたが甘かったらしい。柔らかな月の光が部屋に差し込んでいた。
明るさが気になるが、ベッドを出るのも面倒で、背中を向ける。
やっとウトウトしてきて、ふと浅い眠りに落ちてはふと目覚める。
繰り返すうち、数時間は経過したように思う。肉体はともかく、脳はちっとも寝た気がしない。
この調子で朝を迎えてしまうのだろうか。何度目かの覚醒でそう考えていたとき、部屋の気配に違和感を感じた。
イヤなものではなく、なんだかむしろ……ホッとして、目をつむったまま背中側に声をかける。
「……ジェード、そこにいるんだろ」
上体を起こして振り返れば、暗がりから月明かりの下へとジェードが歩み出る。
最期に、寝顔でも見に来たのか?
ただのエサに対して未練たらたらじゃないか。
俺はシャツの首元のボタンを外し、首筋を差し出すように見せた。
「いいよ。家賃徴収して」
すると、ジェードは引き結んだ唇をわずかにこわばらせる。遠慮することないのに。
「そういうつもりで来たわけではない。……その、先ほどはすまなかった」
申し訳なさそうに目を伏せる姿を見て、俺はふふっと笑ってしまう。なんだ、そんなことを気にしていたのか。
「怒ってないよ。俺も言いすぎた。ちょっと後悔してる」
とはいえ、本当にただ謝りたかっただけならこんな侵入の仕方はしなかっただろ。とは、さすがに意地悪だから言わない。
「仲直りは済んだわけだけど、もう部屋に戻る?」
「うむ……」
一旦返事をしたものの、ジェードはそこを動かない。
彼の「さみしい」という感情をこうやって目の当たりにすると、胸がぎゅっと熱くなる。俺も同じ気持ちだから。
思いきって布団をめくり、横にずれて彼のためのスペースを作った。
ベッドの空白をぽんぽんと叩く。
「一緒に寝ようよ。ミュラッカのときみたいに」
「なん」
「なんでも!」
彼の言葉をさえぎって、身を乗り出して腕をつかみ、ベッドに引き込んだ。
抵抗することなく倒れ込んだ彼の上に覆い被さり、驚いている顔を見下ろす。
「ハヤ──」
「ずっと考えてたんだ。俺、《おいしかったな》って最期に思い出されたくないよ」
エサ止まりなんて。
「こんな気持ちになる意味……わかんないけど、イヤなんだ。このまま明日を迎えたくない」
ミュラッカのときみたいに、は嘘になってしまったな。
あのときはこんなことまで要求しなかった。
へたくそにキスを落とすと、ジェードは心底驚くような顔をする。
唇を押し付ける以上の作法がわからなくて、すぐに離れようとしたら肩をつかまれた。
無防備に緩んだ唇の間へ舌が滑り込んでくる。
こういうキスって過去にしたことあったっけ……なんだか気恥ずかしく思いながら、たどたどしく応えた。
「ふっ、ぅ……ぅっ」
不器用に息継ぎしながらざらつく舌を味わっていると、肩を押されてひっくり返された。
ジェードと上下が入れ替わり、服を脱がされていく。
俺もどきどきしながら手を伸ばして、彼の前を開けていった。
彼の指がするりと脇腹を撫で、ズボンのふちを下げる。
下着も何もかも脱がされて裸になった。脚を開かされれば、潤滑剤代わりの香油で後孔をほぐされていく。
「っぁ、あ……」
身体を紐解かれる快感に身を任せながら、俺はゆるく勃ち上がっているジェードの性器を扱いた。
手の中で硬く大きくなる感触につい興奮してしまう。それが自分をどう気持ち良くしてくれるのか、よく知ってしまっているから。
とろりと潤滑油の糸を垂らしながらナカから指が抜け出た。彼の先端があてがわれるのを感じて、ジェードの背に腕を回す。
すぐに、それが挿入ってくる。
「あぁぁ……!」
歓喜の声を漏らせば、緩いピストンに甘く揺さぶられていく。
受け入れるコツがわかってからは、あんなに苦しかったサイズ感ともうまく付き合えるようになった。自分にとって楽で、かつ彼にとっても良いようにできると、変な話だが妙な達成感を得られる。
ジェードはジェードで、俺を熟知したと言わんばかりに気持ち良いところばかり責めてくる。そう激しくされていなくても、気が付いたら快楽に溺れさせられてしまう。何度命乞いさせられたことか。
行為に励む音が静かな室内に響く。互いの吐息まではっきりと耳に届いた。
ジェードが囁くように俺を呼ぶ。ふだんよりもわずかに甘ったるい声が愛おしくて、名前を呼び返せば額へ口付けられた。
ぐいっと脚を持ち上げられ、ジェードが腰の位置を詰めた。でんぐり返しの途中みたいに尻の位置が高くなったことで、接合がより深くなる。
腹奥を貫かれる快感が増し、視界の端で揺れる自分の性器からとろりと先走りの汁が糸を引くのが見えた。恥ずかしいがどうしようもない。
絶頂の気配が近付くにつれ、彼の背に絡めた手に力がこもってしまう。
「ん、くっ……ぁ、ぁっ……! も、イきそ……ジェード……っ!」
「ハヤトキっ……!」
高まっていく射精欲で、ジェードもピストンの調子を早めていた。
あちこちにキスされてくすぐったい。
いつもなら甘噛みなのに、今日はやけに扱いが柔らかかった。
甘えるように何度か名前を呼び、彼の耳を撫でた。指先から拾う彼の体温は高くて、興奮が伝わってくる。
顔を上げたジェードと目が合い、その金色の瞳の美しさに吐息を漏らしてしまう。
「っ、ぁ、あ……!」
また唇を重ねて互いを貪りながら、俺たちはほとんど同時に果てたのだった。
■
横並びにくっついて寝そべり、じゃれるように足を絡ませる。
すぐに眠る気にもなれなくて、睦言を交わしていた。
「……俺のこの気持ちって、吸血鬼の能力のせいなのかな?」
「どういう意味だ?」
「その、つまり。俺が、こんなに……その、あんたのことばっかり考えてること」
ジェードはきょとんとして顎を撫で、考え込む表情を作った。
「血を吸われたい欲求が強いなら、私のせいだな。……生活に支障が?」
そうじゃない。
首を左右に振る。
「それ以外の欲求なら、それはおまえ自身からくるものだ。そもそも、吸血鬼の"噛み"にはおまえが疑っているような洗脳じみた力はないよ」
じゃあつまり。そういうこと。
(言い訳できなくなっていく……)
自分の変化に気持ちが追いついてない。
こんなになっても、だ。
俺が悶々とした顔で黙っていると、ずっと何かを言いたそうにしていたジェードが動いた。
「……すまない、いいか?」
首筋に触れられて、どくんと心臓が跳ねる。みるみる身体が熱くなって、呼吸が乱れそうになるのをこらえた。──違う、俺のバカ、なに発情しようとしてんだ。これは2ラウンド目の誘いじゃない。
心の中で自分を打つ。
ここのところの彼は、薔薇も吸わなければ固形物も口に入れていなかった。腹が空かないわけがない。やっぱり我慢していたのだろう。
彼の手に自分の手のひらを重ね、頭を逸らして吸いやすいようにしてやる。
「うん、どうぞ」
感謝の合図のように口付けられ、それから牙が皮膚を破った。
「っ……!」
身体が小さく震える。痛みにはもう慣れたが、快感だけはうまく受け流せない。
しかも久々なせいか、自分が覚えているよりずっと……気持ち良い。
ちゅ、じゅる。あふれていく生ぬるい血を舌に舐めとられ、吸われながら、ジェードにしがみつく。
イった後だというのにまた自身の性器が芯を硬くしていくのがわかる。無意識に彼の太ももへ押し付けてしまっていた。
「はぁ、あ、あっ、……っ!」
ジェードの養分になる──そう意識するほど、奪われているのに満たされる。
不思議な気分だった。
血を搾るように首へ歯が立てられる。
食い込む力が増すほど頭がじんと痺れていく。
「っ、あ、あ、っく……、ッ~~~~!」
頭の中の"気持ち良い"が膨らみきって、眩しく弾けた。
強烈な恍惚に襲われ、ビクッビクッと激しく腰が跳ねる。
中途半端に勃起した性器からは精液も出ないまま、どういうわけか絶頂していた。
(な、に……いまの……、すご、く……きもち……よかっ……た……)
俺の血がそんなに美味いのか、ジェードは食事に夢中になっている。
彼の艶やかな後髪を撫でながら、うっとりと余韻に浸った。
今日で最後なら、ついでにこのまま吸い尽くされたいな──なんて、ぼんやりと考えてしまう。
実際にそう口にしてみたら、ジェードは慌てて離れ、唾液と血にまみれた唇を腕でぬぐっていた。
「笑えない冗談はよせ」
おどけて微笑んで見せると、抱きしめられる。
そのまま食事の跡が残る首筋を拭かれ、冷えないように顔の下まで布団をかぶせられた。
「……明日、俺が寝てたら起こして」
ぬくもりの中でまぶたが重くなるにつれ、不安になってきた。
起きたらもう昼で、ベッドにジェードがいなかったら立ち直れないだろう。
「おまえの決意がそこまでなら、無下にはしない。約束しよう」
ジェードは嘘をつかない。その言葉を聞いて、俺はようやく安心して目を閉じるのだった。
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