上 下
6 / 21
第2話「異能の探求」

2-2: 「試運転」

しおりを挟む
 ギルドの応接室には緊張感が漂っていた。グレンが怒りに満ちた顔で話し始めた。

「俺たちは、ギルドの依頼で小型モンスターの討伐に向かったんだ。洞窟どうくつの中でモンスターを倒していた時、不意に激しい地響きがして、突然落盤が起きた! 退路が塞がれてどうしようもなくなり、仕方なく奥へ進んで行ったら、目の前にあのサラマンダーが現れたんだ!」

 グレンの声には、アクシデントに見舞われたことへの動揺と怒りが滲み出ていた。

 ウルスは眉をひそめ、「あの洞窟どうくつにそんな危険なモンスターが現れることはありえない」と低い声で言った。

「でも現れたんだよ!まったく信じられない…俺たちは全力で逃げたが、一人がやられてしまった。俺たちは必死だったんだ。結局、なんとか逃げ延びたが…」

 グレンは悔しそうに言葉を続けるが、そこで言葉を詰まらせる。

 ウルスはそんなグレンの様子を見て、リバンスに目を向けた。「リバンス、何があったんだ?」

 リバンスは緊張しながらも口を開いた。「実は…あの時、俺に不思議な能力が目覚めたんです」

「不思議な能力…?それはどういうものだ?」

 リバンスは深呼吸をし、続けた。「俺の能力は『複写再現コピー&ペースト』といって、目の前の物や技をそのままコピーして、好きな時に再現できるというものです。ただ…まだ自分でもよくわかっていなくて、どうしてこの能力に目覚めたのかも、全然…」

 ウルスは目を見開いた。「そんな魔法まほうスキルすきるは聞いたことがない…。それで、その能力を使ってサラマンダーの攻撃をしのいだのか?」

 リバンスは一瞬ためらった後、説明を続けた。「この能力を使って、なんとかサラマンダーの攻撃を防ぎながら隙を見つけて逃げることができたんです。本当に必死で、どうにかこうにかやり遂げたという感じで…」

 ウルスは少し驚いた様子を見せながらも、真剣な表情で頷いた。「なるほど、そんなことが…」

 ウルスは深く息を吸い込み、「事情はわかった。まずはギルドの事前の調査が不十分であり、それにより犠牲者が出てしまったことを謝罪する。今回の件はギルドで改めて調査する」と謝罪の言葉を述べた。

 だが、その言葉にグレンは怒りを爆発させた。「謝罪で済む話じゃねぇだろ!こっちは仲間が死んでいるんだぞ!」

 ウルスは冷静にグレンを見据え、「その気持ちはわかる。だが、冒険者になった以上、いつどんな時でも命の危険があることを理解してほしい。それが納得できないというなら、冒険者をやめた方が良い」と強い口調で返した。

 グレンはウルスの言葉に一瞬たじろいだが、悔しさを抑えきれず、「くそ…こんなギルドなんか信じられるか!」と捨て台詞を残し、部屋を飛び出していった。彼の仲間たちもそれに続いた。

 リバンスも立ち去ろうとしたその時、ウルスが彼を呼び止めた。「リバンス」

 振り返ったリバンスに、ウルスは静かに言った。「お前のその能力は非常に珍しいものだ。しかし、使い方を誤れば大きな危険を伴う。くれぐれも注意して使うんだ」

 リバンスは少し驚きながらも、ウルスの言葉に頷いた。ウルスの凄みがかった忠告に、彼は改めて自分の能力を知る必要があると再認識した。

「はい、わかりました。気をつけます」

 リバンスは心中でそう思いながら、宿へと戻っていった。

 宿に戻ったリバンスは、すぐに自分の能力を試すため、草原へと向かった。

 草原にたどり着くと、リバンスはウサギ型の小型モンスターを見つけ、能力を試し始めた。手をかざして「複写再現コピー&ペースト」を行うと、目の前に全く同じウサギ型の小型モンスターが現れた。

「本当に…できるんだ」

 リバンスは驚きと興奮を感じながら、次々とモンスターや岩をコピーし、ペーストしていった。その中で、いくつかの重要なことに気づき始める。

「まずは…コピーしたものは、どうやらオリジナルと全く同じらしい。技や魔法も、見た目も、完全に再現されている」

 次に、リバンスは試しにウサギ型モンスターをもう一匹コピーしようとした。しかし、頭に鋭い痛みが走り、コピーがうまくいかない。

「どうやら、今の俺には同時に2つまでしかコピーできないみたいだ…それ以上は無理か…」

 また、コピーしたウサギ型モンスターはしばらくするとふっと消えてしまった。リバンスは時計を確認し、消えるまでに約10分かかったことを知る。

「どうやら、ペーストしたものの持続時間は10分程度のようだ…」

 リバンスはさらに試すため、岩と小型モンスターを並べて同時にペーストし、消えるまでの時間を確認した。どちらも同じ時間で消えることを見て、持続時間が物の大きさや種類に関係ないことを理解する。

「持続時間は物の大きさや種類に関係なく同じか…」

 さらに、リバンスは岩をコピーした後、しばらくして感覚が薄れていくのを感じた。「どうやら、コピーを保持できる時間も限られているようだ。これも5分くらいか…」

 次に、リバンスはスキルや魔法をコピーして試してみた。小型モンスターの技をコピーしてみると、それは簡単に再現できたが、どうやら体力と精神力をかなり消耗するようだった。

「簡単な技でも、使い続けると疲れる…大きなものや強い魔法なら、もっと疲れるんだろうな」

 こうしてリバンスは、自分の能力の範囲と限界について少しずつ理解していった。

 ふと前方に中型のモンスターが現れた。リバンスはそれを見て、新たな挑戦の予感を感じた。

「…あれも試してみるか」

 リバンスは心の中で決意を固め、緊張と期待を胸に、中型モンスターに挑む準備を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想
ファンタジー
17歳で死んだ俺は、神と名乗るものから「なんでも願いを一つかなえてやる」そして「望む世界に行かせてやる」と言われた。 俺の願いはシンプルだった『現世の全てを入れたストレージをくれ』、タダそれだけだ。 神は喜んで(?)俺の願いをかなえてくれた。 希望した世界は魔法があるモンスターだらけの異世界だ。 そう、俺の夢は銃でモンスターを狩ることだったから。 俺の旅は始まったところだが、この異世界には希望通り魔法とモンスターが溢れていた。 予定通り、バンバン撃ちまくっている・・・ だが、俺の希望とは違って勇者もいるらしい、それに魔竜というやつも・・・ いつの間にか、おれは魔竜退治と言うものに取り込まれているようだ。 神にそんな事を頼んだ覚えは無いが、勇者は要らないと言っていなかった俺のミスだろう。 それでも、一緒に居るちっこい美少女や、美人エルフとの旅は楽しくなって来ていた。 この先も何が起こるかはわからないのだが、楽しくやれそうな気もしている。 なんと言っても、おれはこの世の全てを持って来たのだからな。 きっと、楽しくなるだろう。 ※異世界で物語が展開します。現世の常識は適用されません。 ※残酷なシーンが普通に出てきます。 ※魔法はありますが、主人公以外にスキル(?)は出てきません。 ※ステータス画面とLvも出てきません。 ※現代兵器なども妄想で書いていますのでスペックは想像です。

自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
無限の時空間の中、いきなり意識が覚醒した。 女神の話によれば、異世界に転生できるという。 ディルメス侯爵家の次男、シオン・ディルメスに転生してから九年が経ったある日、邸の執務室へ行くと、対立国の情報が飛び込んできた。 父であるディルメス侯爵は敵軍を迎撃するため、国境にあるロンメル砦へと出発していく。 その間に執務長が領地の資金繰りに困っていたため、シオンは女神様から授かったスキル『創造魔法陣』を用いて、骨から作った『ボーン食器』を発明する。 食器は大ヒットとなり、侯爵領全域へと広がっていった。 そして噂は王国内の貴族達から王宮にまで届き、シオンは父と一緒に王城へ向かうことに……『ボーン食器』は、シオンの予想を遥かに超えて、大事へと発展していくのだった……

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME
ファンタジー
旧題:捨てられ従魔の保護施設! 冒険者として、運送業者として、日々の生活に職業として溶け込む従魔術師。 けれど、世間では様々な理由で飼育しきれなくなった従魔を身勝手に放置していく問題に悩まされていた。 そんな時、従魔術師達の間である噂が流れる。 クリノリン王国、南の田舎地方──の、ルルビ村の東の外れ。 一風変わった造りの家には、とある変わった従魔術師が酔狂にも捨てられた従魔を引き取って暮らしているという。 ─魔物を飼うなら最後まで責任持て! ─正しい知識と計画性! ─うちは、便利屋じゃなぁぁぁい! 今日もルルビ村の東の外れの家では、とある従魔術師の叫びと多種多様な魔物達の鳴き声がぎゃあぎゃあと元気良く響き渡る。

異世界転移の特典はとんでも無いチートの能力だった。俺はこの能力を極力抑えて使わないと、魔王認定されかねん!

アノマロカリス
ファンタジー
天空 光(てんくう ひかる)は16歳の時に事故に遭いそうな小学生の女の子を救って生涯に幕を閉じた。 死んでから神様の元に行くと、弟が管理する世界に転生しないかと持ち掛けられた。 漫画やゲーム好きで、現実世界でも魔法が使えないかと勉強をして行ったら…偏った知識が天才的になっていたという少年だった。 そして光は異世界を管理する神の弟にあって特典であるギフトを授けられた。 「彼に見合った能力なら、この能力が相応しいだろう。」 そう思って与えられた能力を確認する為にステータスを表示すると、その表示された数値を見て光は吹き出した。 この世界ではこのステータスが普通なのか…んな訳ねぇよな? そう思って転移先に降り立った場所は…災害級や天災級が徘徊する危険な大森林だった。 光の目の前に突然ベヒーモスが現れ、光はファイアボールを放ったが… そのファイアボールが桁違いの威力で、ベヒーモスを消滅させてから大森林を塵に変えた。 「異世界の神様は俺に魔王討伐を依頼していたが、このままだと俺が魔王扱いされかねない!」 それから光は力を抑えて行動する事になる。 光のジョブは勇者という訳では無い。 だからどんなジョブを入手するかまだ予定はないのだが…このままだと魔王とか破壊神に成りかねない。 果たして光は転移先の異世界で生活をしていけるのだろうか? 3月17日〜20日の4日連続でHOTランキング1位になりました。 皆さん、応援ありがとうございました.°(ಗдಗ。)°.

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...