遑神 ーいとまがみー

慶光院周

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第1章

お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行きましたとさ

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 一通り調べたので次は今現在、私達のいる場所を調べると、ここはヴェレンボーンの首都ボーセンブーメンよりも北の方の端、のトワフという村の山の中だった。
  そして今現在、トワフ周辺は極度の飢餓の状態であり、この山には口減らしで人が捨てられているらしい。

 「何だ、ヴェレンボーンは平和だと思っていたけど飢餓も存在するんだな。で、この山が飢餓であるにも関わらず結構山の頂上辺りのこの辺に人気のないのは麓あたりに生息してる魔物や獣のせいだと」
 「え、飢餓だろ? 何で木の実とかが残っているの? 飢餓なら木の実とって魔物や獣を狩ればいいじゃないのか?」

 新月が不思議そうな顔をしている、確かにそうだ。私達がいる山の頂上辺りは人気がなく木の実や山菜がまだ手付かずだった。それを採れば少しは食料にもなるだろう。
 それに麓に魔物がいるなら退治してコアを売ればいい。農民が束になれば弱い魔物の一匹ぐらいはなんとか倒せるだろう。獣は罠で捕まえるなどして食べればいい。しかし、そう出来ない理由がある。

 「いや、それは無理だ。まずトワフの飢餓の原因は、植物病害だがこれは特別なことではない、しかし問題は魔物と獣の方だ。流れで表すと」

 植物病害が起きる→人が飢える→収穫がないので金もない→さらに飢える→お年寄りや子供が口減らしの対象になり殺される。→死体目的で魔物や獣が集まる→集まった魔物や獣で山に生える木の実や山菜が採り辛くなる。

 となる。

 「魔物や獣が一匹ぐらいなら農民でも捕まえることは出来るが集団にもなると猟師か冒険者じゃないと無理だからな。で、また飢餓が深刻化するのループにはまるという訳だな」
 「なるほど、姥捨て山に捨てることになるってやつか」
 「新月、姥捨て山に捨てるとは少し間違ってるぞ」
 「何で?よく姥捨て山の童話ってあるじゃないですかー? 教えて! クロ先生!!」

 また変なものが始まった。

 「いえーい!! 第二回教えて! クロ先生!! のお時間です! ドンドンパフパフ!
 今日の問題は『姥捨て山は姥捨て山というのではないのか』とのことですが、童話でも自分の親を背負って山に登り親の子供を思う心に触れて捨てるのをやめる。という感動する童話があります。
しかし、なぜ間違っているのですか? さあ、クロ先生教えてくださーい!!」

 「自分で調b「答えて下さい! それでは番組になりません!!」……」

 捨てるとは、山に置き去りにして行くという意味ではない。普通に殺すならば大抵は家で殺してから死体を庭に埋める。というのが多い。
 その方が背負って山に登るよりも遥かに楽だからな。大抵の人は背負うことに感動するがそれは現実的ではない、感動をぶち壊すようで悪いがこれが現実だ。
 けど、それでは死体の匂いをたどって魔物や獣がやって来る。
 ならば山に捨てるのが妥当だ。しかし、死体は重い。という訳で山の頂上ではなく中腹か麓辺りにお年寄り(口減らしで殺した人)を捨てる(放置する)これが正解だ。 お年寄りを担いで登って捨てる訳ではない。

 「なるほど! 確かにその方が現実的ですね! 
 しかし、親を自分の手で殺さなくてはいけない、子供は置き去りにするが殺さなくてはいけない。う~ん、なかなか重いですね。
 今でも飢餓は世界中にあります。それは異世界だろうが変わりません。私達からして見れば手を出してはいけない事ではありますが、今後はこのような事が起きて欲しくないですね。」

 そうだな。私達からしたらどうしようもないことだ。そりゃ、私がちょっと手を加えれば大豊作ぐらいにはなる。
 けれども、それだと生態系が壊れかねない。だから手を出さないようにしているのが現状だ。

 「という訳で今日の問題は『姥捨て山は姥捨て山というのではないのか』でした! いや~深い問題でした。
 この飢餓で泣く人は多くても笑うのは冒険者さんや猟師さんだけでしょうか? 何せ魔獣や獣が増えれば増えるほど収入が増えてウハウハですからね! 
 おっと、今日はこの辺でお別れのようです! また次回お会いしましょう! 以上、第二回教えて! クロ先生! でした。またお会いしましょう! それでは~……ちゃんちゃん♪」

 ハイ、カット! という声がしてくだらない遊びが終わった。今回は前よりは馬鹿な質問では無くて良かったとでも考えるしかないか……
 最後で全部ぶち壊しになったけどな。

 そう考えていると、よし! と言う声がして新月が私の服を引っ張る。

 「という訳でクロ、ギルド入ろうぜー!」

 は? 何でそうなる。日曜日夜のアニメでメガネの小学生が友達呼ぶセリフか。

 「ははーん。何でって考えてるだろー、俺はにはおまえの事など全てお見通しだ!」

 o(`・ω´・+o) ドヤァ……! とキメ顔をしてくるアホがいる。
 いや、ドヤァ……! じゃなくて理由を述べろ。

 「理由? んなの一つじゃん! 稼ぐんだよ! 俺が足にわざわざこんなもの付けてまでいるんだから当たり前だろ。ギルドに入れば稼げる! 
 それに飢餓だ! 魔獣や獣を狩れば食料にも金にも信頼にもなる! いきなり行って『これお金に交換して下さい』って言っても変だろう? けど、山にのさばっているものを退治したとなれば喜んでして貰えるだろう? 信頼も金も手に入るんだ。こんなに簡単な手はない!」

 目を輝かせて新月が話す。確かに稼げる。私達の目的は家を作る事だから合ってはいる。しかし、考えがゲスの極みだな。本当にこれが神か? 本当は暴力団関係者かなんじゃないだろうか……
 少し考えてみる。人間より人間らしい思考、神とは思えない口の悪さ、ゲス極まりない考えと行動、自分のためなら他人など平気で食らいつく度胸、人を人とも思わない冷酷さ。
 うん、後ろの2つだけでもしっくりくる。そのまま警察にお縄を頂戴されればいい。私はもっとしっかりとした相棒を探す事にしよう。

 「おい、勝手に犯罪者にするな! 君の考えていることはお見通しなんだぞ! 別にいいじゃないか。金を稼ぐには丁度いい話だろう?!」
 「………」
 「無視せんといて!! 視線が痛い!!」
 「五月蝿い」
 「クロが虐めるー! 悲し」

 新月ちゃん困っちゃう☆ っと、一人で遊んでいるアホがいる。放っておこうアホが移る。が、ギルドは確かに魅力的だこのまま話を流すのは惜しい。

 「何だよーギルドは無しかー?」
 「無しではない、寧ろ有りだろう。動機は不純だか」
 「言ったな、よし決定! ってかギルドに入る理由なんて不純以外にないだろ」

 じゃあさっそくだ! ひと狩り行こうぜ! とはしゃいでいる。こいつは何時もはめんどくさいって言う癖に自分の興味が出たものだけには思い立ったが吉日だからな。

 「待て、狩りもいいが今のうちに食料の確保もしなければいけないぞ、毎回私が出させる気か?」
 「えー、あーそうか…じゃあ二手に分かれよう。一人が食料確保。一人が狩りね!」

 自分が狩りに行くと言わんばかりの言い方だ。しかしそれは無理だ。

 「ならお前が食材確保だな」
 「何で?! 酷い! まだジャンケンもしてない!」

 新月がぶ~と膨れるが当然だ。新月はまだ姿を得て間もない。能力をしっかりとコントロール出来るがといわれればNOだ。武器も何も持っていないのに出来る訳がない。

 「武器すら持ってないやつにそんなことやらせれるか。お前は食材の確保係だ。
 あぁ、めんどくさいと言うなら川を下って下流に行って釣りしてろ。食料の確保係が不貞腐れてサボって何も取れなかったとなるぐらいなら私が両方やった方がマシだ。安心しろ、釣り道具は出してやるから。ついでに皿洗い頼んだ。」
 「何でだよ! だったクロも武器が使えないじゃん!」
 「神通力」
 「チクショーーー!!!」

 こうして見た目だけは若く見えるお爺さんは山に柴刈り(狩り)に、見た目は可愛いが中身はガキ大将のようなお婆さんはぶうぶう言いながら川に洗濯(釣り、お邪魔虫の厄介払いとも言える)に行きましたとさ。ちゃんちゃん♪
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