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雨の余波
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「ー雨が降り止まないな。」
レイガがきてから10日がたった。未だ人間軍からの反応はなく、ただ平穏な日が続いていた。
「こちらの世界にも雨は降るんだな…」
めずらしそうに言葉を発した。
「戦うときには雨なんて降ってなかったから…。俺は雨を見るのは初めてだなぁ…」
初めて…か…。
「まあなぁ…。戦争のときはどうしたって負の魔力が濃くなるし…。しょうがないよなぁ…」
レイガは訳がわからないというように首をかしげた。
「……ああ。そっか。人間の方は季節があるんでしたっけ?うらやましいにゃぁ~」
「えっ……とね。魔界の天気っていうのはね、魔力の濃さで決まるの」
「濃さ?」
「うん。たとえばね…。戦いの時はみんな恨みや妬みを力にしてるから負の魔力が濃くなって薄暗ーい淀んだどんより~って感じの天気になるの」
「魔力を含んだ禍々しい空気のせいで空も淀んでしまうのにゃ」
いつもの会議室にいるみんなの声が聞こえる
「それに比べて普段はみんな楽しく暮らしているから、魔力のバランスがよくて、気持ちのいい天気になるのよ」
「ああ。だからこの雨はちょっと異常自体なんだよ」
「ラディ…シエラ!おはよう!」
「みんな、おはよっ!」
「おはよう」
ちょっと遅れた合流だったが、みんな揃っていたようだ。
私はマリンに目を向けた。
「これは水の魔力が強くなっているようだが…。…マリン。何か知ってるか?」
「それが…私にも心当たりがなくて…」
「ふむ…。」
魔力の濃さに左右される魔界の天候。魔界にはそれぞれの属性に特化した者の集まる集落がいくつもある。
私と行動を共にしているシエラ以外の幹部はその筆頭のような者たち。
マリンが知らないとなると…
「事件かしら」
シエラのいうその言葉に、誰も驚くことはなかった。
きっとそうに違いない。そんな肯定の意すら感じるように。
「しかし…ここは私の城だ。王都周辺にまで届くだろうか?」
「小さい悲劇ならその周辺だけの影響しかないだろうがなぁ…。そこにある魔界地図を見たか?全土が雨だったぞ?」
「でもでもっ…!そんなに大きい事件なら…それこそ何か報告があると思うの…。そんな大変な事例はいっこもきてないよ?」
「…どこが…魔力…1番…濃い…?」
会議室の中央にあるテーブル。その上に表示されている魔力を使った立体的な魔界地図に目をやる。
「フレア」
「……へいへい。調べりゃいいんでしょぉ?ちょいと時間くれよ。…その間に遠出の準備の1つでもしてくれや」
「ありがとう」
視線が集まる。私を見てる。…指示を…私の指示を待ってるんだ…。
「調査に向かう者を決めよう。…マリンは来てくれ。魔力を操ることになるかもしれない。あとは…」
シエラが来てくれると戦力的には申し分ない。何か戦闘になっても大丈夫だろう。
…しかし…全勢力をこちらに…という訳にはいかない。
城の守りが薄くなるのは得策ではない。
ラルスは来て欲しいところだ。回復を私一人で担えるとは思わない。
しかし…属性相性でいうのならリンに来て欲しいところだ。
火力も高く、水性魔力に木性魔力は相性がよい。
フレアは相性は良くないだろう。しかし…機動力という点と何かの調査における能力は随一だ。調査要員としてはこれ以上にないだろう。
火力ならばレイガに来てもらうということもあるが…万が一人間だとバレたときに対処できない。
今は魔法で魔族へと見せているが…何の拍子に解除されるかわからない。
考えられる最善は…
「リン、ラルスも一緒に来てくれ。シエラ、フレア、レイガは待機だ。何か情報が入るとそちらに情報が届くように通信機を持って行こう」
「通信機?魔法ではダメなのか?」
レイガの疑問そうな声。
「確かに魔法の方が確実に届くし、手軽だ。何かあったときのために魔法も発動はするが…」
私は中央のテーブルへと歩む。
「ここは魔界だ」
立体魔界地図を手で掬う。
「魔界の者は魔力がわかる。盗聴に長けた者もいるだろう。……意外と人間達の使うような魔力を持たない機械というのは盲点だったりするのだ。」
「魔族が相手ならそっち使って通信したほうがいいし、人間なら逆に魔法を使えばいい」
「臨機応変に…な」
みんなは準備へと取り掛かっていった…。
レイガがきてから10日がたった。未だ人間軍からの反応はなく、ただ平穏な日が続いていた。
「こちらの世界にも雨は降るんだな…」
めずらしそうに言葉を発した。
「戦うときには雨なんて降ってなかったから…。俺は雨を見るのは初めてだなぁ…」
初めて…か…。
「まあなぁ…。戦争のときはどうしたって負の魔力が濃くなるし…。しょうがないよなぁ…」
レイガは訳がわからないというように首をかしげた。
「……ああ。そっか。人間の方は季節があるんでしたっけ?うらやましいにゃぁ~」
「えっ……とね。魔界の天気っていうのはね、魔力の濃さで決まるの」
「濃さ?」
「うん。たとえばね…。戦いの時はみんな恨みや妬みを力にしてるから負の魔力が濃くなって薄暗ーい淀んだどんより~って感じの天気になるの」
「魔力を含んだ禍々しい空気のせいで空も淀んでしまうのにゃ」
いつもの会議室にいるみんなの声が聞こえる
「それに比べて普段はみんな楽しく暮らしているから、魔力のバランスがよくて、気持ちのいい天気になるのよ」
「ああ。だからこの雨はちょっと異常自体なんだよ」
「ラディ…シエラ!おはよう!」
「みんな、おはよっ!」
「おはよう」
ちょっと遅れた合流だったが、みんな揃っていたようだ。
私はマリンに目を向けた。
「これは水の魔力が強くなっているようだが…。…マリン。何か知ってるか?」
「それが…私にも心当たりがなくて…」
「ふむ…。」
魔力の濃さに左右される魔界の天候。魔界にはそれぞれの属性に特化した者の集まる集落がいくつもある。
私と行動を共にしているシエラ以外の幹部はその筆頭のような者たち。
マリンが知らないとなると…
「事件かしら」
シエラのいうその言葉に、誰も驚くことはなかった。
きっとそうに違いない。そんな肯定の意すら感じるように。
「しかし…ここは私の城だ。王都周辺にまで届くだろうか?」
「小さい悲劇ならその周辺だけの影響しかないだろうがなぁ…。そこにある魔界地図を見たか?全土が雨だったぞ?」
「でもでもっ…!そんなに大きい事件なら…それこそ何か報告があると思うの…。そんな大変な事例はいっこもきてないよ?」
「…どこが…魔力…1番…濃い…?」
会議室の中央にあるテーブル。その上に表示されている魔力を使った立体的な魔界地図に目をやる。
「フレア」
「……へいへい。調べりゃいいんでしょぉ?ちょいと時間くれよ。…その間に遠出の準備の1つでもしてくれや」
「ありがとう」
視線が集まる。私を見てる。…指示を…私の指示を待ってるんだ…。
「調査に向かう者を決めよう。…マリンは来てくれ。魔力を操ることになるかもしれない。あとは…」
シエラが来てくれると戦力的には申し分ない。何か戦闘になっても大丈夫だろう。
…しかし…全勢力をこちらに…という訳にはいかない。
城の守りが薄くなるのは得策ではない。
ラルスは来て欲しいところだ。回復を私一人で担えるとは思わない。
しかし…属性相性でいうのならリンに来て欲しいところだ。
火力も高く、水性魔力に木性魔力は相性がよい。
フレアは相性は良くないだろう。しかし…機動力という点と何かの調査における能力は随一だ。調査要員としてはこれ以上にないだろう。
火力ならばレイガに来てもらうということもあるが…万が一人間だとバレたときに対処できない。
今は魔法で魔族へと見せているが…何の拍子に解除されるかわからない。
考えられる最善は…
「リン、ラルスも一緒に来てくれ。シエラ、フレア、レイガは待機だ。何か情報が入るとそちらに情報が届くように通信機を持って行こう」
「通信機?魔法ではダメなのか?」
レイガの疑問そうな声。
「確かに魔法の方が確実に届くし、手軽だ。何かあったときのために魔法も発動はするが…」
私は中央のテーブルへと歩む。
「ここは魔界だ」
立体魔界地図を手で掬う。
「魔界の者は魔力がわかる。盗聴に長けた者もいるだろう。……意外と人間達の使うような魔力を持たない機械というのは盲点だったりするのだ。」
「魔族が相手ならそっち使って通信したほうがいいし、人間なら逆に魔法を使えばいい」
「臨機応変に…な」
みんなは準備へと取り掛かっていった…。
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