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「シエラ…そろそろ起きた方がいいんじゃないか?」
「ん…んん…起きる…」
「シエラ…これ以上は仕事に支障が出る。疲れているのもわからんではないが…もう起きた方が良いと我は思うぞ。まだ夏季の企画書に目を通す作業も残っている…。ああ、それを邪魔してくれた奴等にも話を聞かなければな。」
「そうですね…。まだ仕事は山のようにあるのですよね…。前は四季なんてなかったのに…」
「先代が物好きだったからなぁ…。良いと思った物はすぐに取り入れる…。それをしすぎておばさまによく叱られてたっけ…。ふふっ…。」
「……ラディは…先代さんと親しいのね…?」
「まぁ…親しいもなにも、親戚…もっといえば従兄弟のお兄ちゃんだからね。よく遊んでいたんだよ。だからまぁ…うん…親しいになるのかな…?」
シエラは大きく目を見開くのと同時に、驚きの言葉を発した。
「えっ…?ラディって、先代さんの従兄弟なの!?え、ええっ!?親戚で魔王してるなんて…。あら…?失礼かもしれないけど、先代さんって結構な年齢よね…?平均寿命の半分は生きてるとか…。いくらなんでも年の差ありすぎない…?」
「あー…それはねぇ…うーん…あのね…その…お兄ちゃんは…「時」のスペシャリストなの…。お兄ちゃんが選抜された時は、今の私よりも幼かった。…とても、世界を預けるには小さすぎる背中だった。だから兄お兄ちゃんは時を操ったんだ。それも、「自分の時」だけを…。時を操って、自分の時を進めた。1秒単位で刻むはずの長い道のりを、全て一瞬に凝縮させたんだ。おかげで、世界を任せられる広い背中になった。身体以外も。お兄ちゃんは人の心を深く考えることを知った。そして…自分が犠牲になるということの容易さを知ってしまった。…これ以上は…ごめん。言いたくない。」
私は無意識に目を瞑っていた。別に、こんな雰囲気にしようと思ってはいなかったのだけど……。
「………」
「…っあー…えー…と…」
「ラディはそんなことしないよね?」
シエラは身を乗り出して、少し食い気味に言葉を発した。
「え…」
「いや…別に、間違ってるとは思ってないの。自分を犠牲にするなんて、少しすごいと思うくらい。けど…矛盾してるのは…わかるけど、私は…ラディにそうなっては欲しくない…。…私に何かあったら私をどうにかしてね。貴方が壊れたら私が頑張るから。だから…いなくならないでね…」
その目はとても澄んでいて、私に向けられるには勿体ないくらいに綺麗だった。だけど…シエラの目は私を見ているとは思わなかった。もっと遠くを見ているようだった。私の背後には壁しかないのに。
「…あはは…ちょっと重かったね…。私はシエラを信じてるから…。うん…。あっ!大変!せっかく起きたのに時間がギリギリだわ!急ぎましょう!」
「ああ、そう…だな。」
少し重い袖に腕を通し、深い海色と対照的な血の色を合わせ持つみんなの憧れの魔王になる。
きっと私は大丈夫。この先何があってもシエラがいれば生きていける。シエラの存在に感謝している。出会ってくれてありがとう。そんなことを素直に考えるほど、シエラの事は大好きだった。シエラだけは必ず守る。そう思った。今でも。依存といわれるだろうか。依存でも良い。私はシエラが大事だ。大好きだ。だから、君の血塗れの姿を見るのは…やっぱり心が痛いよ…。守れないのは悔しいな…。それでももし笑ってくれるのなら、私はその希望に賭けようじゃないか。
「ん…んん…起きる…」
「シエラ…これ以上は仕事に支障が出る。疲れているのもわからんではないが…もう起きた方が良いと我は思うぞ。まだ夏季の企画書に目を通す作業も残っている…。ああ、それを邪魔してくれた奴等にも話を聞かなければな。」
「そうですね…。まだ仕事は山のようにあるのですよね…。前は四季なんてなかったのに…」
「先代が物好きだったからなぁ…。良いと思った物はすぐに取り入れる…。それをしすぎておばさまによく叱られてたっけ…。ふふっ…。」
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「えっ…?ラディって、先代さんの従兄弟なの!?え、ええっ!?親戚で魔王してるなんて…。あら…?失礼かもしれないけど、先代さんって結構な年齢よね…?平均寿命の半分は生きてるとか…。いくらなんでも年の差ありすぎない…?」
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私は無意識に目を瞑っていた。別に、こんな雰囲気にしようと思ってはいなかったのだけど……。
「………」
「…っあー…えー…と…」
「ラディはそんなことしないよね?」
シエラは身を乗り出して、少し食い気味に言葉を発した。
「え…」
「いや…別に、間違ってるとは思ってないの。自分を犠牲にするなんて、少しすごいと思うくらい。けど…矛盾してるのは…わかるけど、私は…ラディにそうなっては欲しくない…。…私に何かあったら私をどうにかしてね。貴方が壊れたら私が頑張るから。だから…いなくならないでね…」
その目はとても澄んでいて、私に向けられるには勿体ないくらいに綺麗だった。だけど…シエラの目は私を見ているとは思わなかった。もっと遠くを見ているようだった。私の背後には壁しかないのに。
「…あはは…ちょっと重かったね…。私はシエラを信じてるから…。うん…。あっ!大変!せっかく起きたのに時間がギリギリだわ!急ぎましょう!」
「ああ、そう…だな。」
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きっと私は大丈夫。この先何があってもシエラがいれば生きていける。シエラの存在に感謝している。出会ってくれてありがとう。そんなことを素直に考えるほど、シエラの事は大好きだった。シエラだけは必ず守る。そう思った。今でも。依存といわれるだろうか。依存でも良い。私はシエラが大事だ。大好きだ。だから、君の血塗れの姿を見るのは…やっぱり心が痛いよ…。守れないのは悔しいな…。それでももし笑ってくれるのなら、私はその希望に賭けようじゃないか。
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