勇者に溺れた魔王様

世夜

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魔王の選抜…貴方が悪い訳じゃない

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んっん…。どうもはじめまして。ここからしばらくは、語り部担当の私、クラックがお話しましょう。誰に言ってるのかって…?貴方ですよ。貴方。先程までは、今あっている事のように話していましたが、あれは昔話。今は魔王や勇者なんていない。平和な世界ですよ。……あまり話すのは良くないですね。今話した事はお忘れください。……作り話しじゃないですよ。1つの歴史です。私がこれからお話しますのは、歴史を見るのに必要な事実です。…見なくたっていいですよ。あまり明かされてないことですしね。少し長くなりますが…お話します。…魔王が誕生するところを。

X534年満月の上がった夜に、時代は変わる足音を立てた。
「疲れた…!!ユラ、お前は疲れてないか!?そうだ!今お茶を淹れよう!」
「魔王様…たしかに疲れてはおりますが、そのようなお気遣いはいりません。魔王様を働かせるなど言語道断!そのような事は側近の私がします。ですので、魔王様はご自分のお力をこのような事に使わないでください。」
「何を…!?………お前のお茶くらい淹れてもいいだろう…。」
「魔王様…今言いましたのに…お力を使わないでと…。時間の操作は体に負担がかかるのですよ…。そんなに体に負担をかけたいなら明日は遠征に行きますか?」
「……ゴメンって…。」
「ねぇ…リウム…私は貴方の事が好きよ。今すぐ貴方に駆け寄りたい…。貴方ももう平均寿命の半分は魔王を務めた…。……もうそろそろ頃合いではなくて…?」
「ユラもそう思うか…。俺も…やめようと思っていた…。…………。」
その翌日、魔王は引退をすることを公表。次期魔王候補は、
ルーラ・ディアラ、
リンジュ・フォリスト
マリン・ゴ・ディラン、
フレイアルニスト・セラギロン、
スカウェイラルス・ラシュイル
に決まった。後の魔王と幹部達である。この5人は…正確にはシュメリア・エディアラを含めた、計6人は、同級生である。この時は、みんなはまだ人間でいうところの中学生だ。まだ幼いこの6人のうち、シエラ以外の5人には、候補者の証であるカードが配られた。なぜ幼いこの5人にカードがきたのか。………なぜシエラがいないのか。それは魔王候補の選び方にある。大きく2つの条件がある。まず1つ目は、魔王として充分な力の属性が1つ以上あること。ラディは全部の属性が充分な力を持っている。他の4人は木、水、炎、空の属性が充分にある。ではシエラは少なかったのかといわれるとそうではない。シエラはラディと同格か、それ以上の力を全部の属性で持っている。魔王には充分すぎる力がある。問題は2つ目の条件だ。それは、自身の家が上級階級であること。シエラは、上級階級の家ではないのだ。自身の能力はとても優れているというのに。また、これらの条件を満たす者は5人以外にはおらず、結果として力の強いラディが魔王に、他4人は幹部に。幹部は階級は関係ないので、能力の優れていたシエラはその中でも重要な側近となった。
ラディは天性の才能が、頭脳が、あらゆる能力があった。街中ではこれは生まれた時から決められていた運命なのだと騒いでいる民衆が沢山いたという。ラディはプレッシャーに負けぬよう、人の前では感情を消した。一方でシエラは努力家だった。階級も低い家だったが、必死で魔法の練習をして、知識を持って、持ち合わせていない物は無理やりにでも入れ込んだ。貧しい中で自分を育ててくれた母と父に恩を返すために。階級というものをなくすために。魔王となるために。その願いは魔王候補に選ばれないことで、弱まってしまった。それでもシエラは恨まない。階級を、ラディを、世界を、恨んだりはしない。それが正解か、知らないから。
元より仲の良かった2人だが、この件の後、親友となる。歪な隙間を作って。あんなに笑顔だったラディが人前で笑わない…。あんなに頑張っていたシエラが笑顔で私達のことを祝っている。それを見た瞬間、2人は不安がった。そして、ああ…私よりも辛い想いをしてる奴がいるのかと、心は安定する事になった。まだまだ続く、過去物語。これを踏まえて、もっと過去を見ましょうか。…順番は逆が良かったかしら…。
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