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【第26話】

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 疲れていたにも関わらず、その夜僕は眠れなかった。
 元の世界へもどれる見通しができたので、どうやら興奮しているみたいだ。
 ルミエールさんと23時くらいまで語り合ってから、荷造りをして横になったがまったく眠くならなかった。
 少しだけでも眠っておこうとしても、それが無理だった。
 しかたなく僕は、一睡もせずに出発することになった。

「別れの挨拶なんてしなくていいから、チェルシーが寝ている間に出て行ってくれ」

 と、何度もルミエールさんに釘を刺されたので、暗い部屋に灯りもつけず、僕は音をたてないようにそっと扉を開けて外へ出た。
 暗闇の中に草いきれが鼻をついた。
 見上げてみると、満天の輝く星が瞬いている。

「うわー、すごくきれいだ……」

 元の世界、東京ではみることなどできないその光景に、眼を奪われる。
 その場に立ち尽くして眺めていると、胸を絞めつけられるほどの苦しいような悲しいような思いがこみ上げた。
 しばらくしてから、僕は顔を正面に向けて森へ入っていった。
 美しい星空を見た余韻に浸りながら、前へ前へと進んんでいった。
 時おりスライムに出くわしたが、ほとんが僕の姿を見ただけで逃げ出していく。
 そのお陰で、バナナを積んだ場所には難なく着いた。
 スマホを見てみると、深夜の2時だった。

「まだこんな時間かァ。ちょっとだけ休んでいこう」

 バナナの房をむしり取り、叢(くさむら)に横たわって星を眺めながらバナナを食べた。

「ほんとにすごいよなァ。こんな星空を見れただけでも、この世界に来た甲斐があったよ。とはいえ、ずっといるのは嫌だけど……」

 小腹が満たされたからだろうか、急激に睡魔が襲ってきた。
 瞼を閉じと同時に意識が遠のいてゆく。
 スライムたちが遠くから僕を見つめながらプルプル震えていることにも、やわらかい何かが近づいてきたことにも気づかずに、僕は熟睡してしまったのだった。
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