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【第23話】

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 この家には、調理器具が鍋とナイフとフライパンしかないので、鍋の中に青い卵を割って入れた。
 思いのほか、白身に包み込まれた黄身はオレンジ色できれいだった。

 よかった。中はふつうの卵と同じだ……。

 僕は、立てつづけに卵を三つほど割り、スプーンで混ぜ、そこへ小麦粉を加えてさらに混ぜた。
 熱したフライパンに混ぜ合わせたきじを流しこみ、プツプツが出てきたら裏返す。
 薪を燃やしたかまどだから、ずっとフライパンを持ったままなので、調理の作業は正直しんどい。
 なのにルミエールさんは椅子に座ったまま、テーブルの上を指先でとんとん叩いているだけだ。
 
 お腹が空いてイライラしているんだろうとは思うけど、ほんとに何もしないんだなこの人は……。

 レーベンさんによると、ルミエールさんはここから少し離れた場所に住んでいる、ローラという魔法使いの女性の家でふだんは食事をしているそうだ。
 チェルシーちゃんには並々ならぬ愛情を注いでいるが、娘の料理だけはどうしても口に合わないみたいだ。
 ローラも魔王討伐隊のメンバーのひとりで、とても優秀な魔法使いらしいが、彼女もルミエールさんの見た目と彼の唄にメロメロになってしまったのだ。
 ダーククラーゲンの出現によって村人たちから迫害され、村から追放されたルミエールさんを追ってこんな村はずれまで来たらしい。
 そして、つかず離れずして、ルミエールさんに尽くしているそうだ。

 羨ましいな……。
 僕も女性に尽くされてみたいよ……。
 いや、何よりも、僕を好きになってくれる人がいたら、それだけでじゅうぶんなんだけど……。
 フッ、そんなこと、天地がさかさまになったって……。

 そうなのだ。
 ましてやこんな僕に、運命の人など現れるわけがない。
 けれど、あの三多さんは、その運命の人を捜せという。
 無理難題もいいところだ。
 それじゃなくとも、人口も少なく、スライムばかりが現れるこの島で、どうやって運命の人を捜せと言うんだ。
 
 無理無理……。

 そんなことを考えながらも、僕は次々とパンケーキを焼いていった。
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