18 / 71
チャプター【18】
しおりを挟む
廊下の突き当たりを左へと曲がって進んでいくと、つきかげ号の搭乗員が入室していた待機室のドアが次々と破られていた。
廊下には、スタッフや警備員数名が倒れている。
「ひどい……」
目の前の光景に絶句し、宮田は眼を細めた。
倒れていたのは、警備員が2名と男性医療スタッフが3名だった。
医療スタッフの3名は、首と肩のあいだに鋭利な突起物で刺されたような傷がふたつあり、警備員の2名は腹を抉り取られたような穴が開いていた。
廊下へと流れ出した血の中には、臓物やはらわたと思われる肉片が点在していた。
白い壁にも、鮮血が飛び散っている。
宮田は、ひとりひとりの脈を取っていった。
首にふたつの傷がある男性スタッフの3名には脈があったが、警備員の2名はすでに絶命していた。
そのとき、
「よう、宮田」
聞き覚えのある声に、宮田は顔を上げた。
そこには、九鬼が立っていた。
「九鬼、無事だったのか。君たちふたりも」
九鬼の両脇には、操縦士(パイロット)の倉上茂と、搭乗科学技術者(ペイロード・スペシャリスト)の木戸江美子の姿があった。
宮田は立ち上がり、
「田島くんと水野くんは、どこへ行った」
訊いた。
「獣と化した、あのふたりか?」
「そうだ」
「あいつらは、まだ腹が満たされてないようでな、食事のつづきをしに行ってしまったよ」
九鬼は、にたりと嗤(わら)った。
「!――」
宮田は、嗤った九鬼のその口許に眼を瞠った。
両端をつり上げた口から覗いた歯が赤く染まっている。
それは、まぎれもなく血であった。
それだけではない。
犬歯が、異様なほど伸びているのだった。
「おまえ……」
宮田は驚愕の眼で、九鬼を見つめた。
「おい、なんだ、その顔は。俺たちの新しい門出だぞ? いや、これは人類にとっての、次なるステップと言ったほうがいい。だから、もっとうれしそうな顔をしてくれよ」
九鬼は、にやにやと嗤(わら)っている。
「なにを、言っている。九鬼! おまえの身体には、地球外生命体と思われる未知なる細胞体が侵入しているんだぞ。それによって、おまえの遺伝子情報は、上書きされているんだ!」
「ククク。おまえこそ、なにを言っているんだ。人類はもともとが、地球外知的生体によって遺伝子操作され、猿からホモ・サピエンスへと人工的に進化させられたんじゃないか」
「意味がわからないな。地球外知的生命体が、人類を創っただと?」
「そうさ。地球外知的生命体は、猿のあまりの進化の遅さに、業を煮やしんだよ。それが、進化における急激な飛躍の謎だったというわけだ」
「なぜ、そんなことが言える」
「いまの俺には、すべてがわかる。地球の誕生も、宇宙の誕生でさえもな。いいか、人類は遂に、さらなる高みへと進むべきときが来たんだよ」
「ばかな。おまえは思い違いをしている。このままだと、おまえの中の未知なる細胞体に、その身体を乗っ取られてしまうかもしれないんだぞ。わからないのか!」
「くだらんな、宮田。おまえが、それほど下等なやつだとは思わなかったよ。まあ、それもしかたがない。おまえは、これを味わっていないのだからな。高みへと向かっていく、この恍惚感を」
九鬼の眼が、かっと見開いた。
その眼が、金碧色の光を放った。
廊下には、スタッフや警備員数名が倒れている。
「ひどい……」
目の前の光景に絶句し、宮田は眼を細めた。
倒れていたのは、警備員が2名と男性医療スタッフが3名だった。
医療スタッフの3名は、首と肩のあいだに鋭利な突起物で刺されたような傷がふたつあり、警備員の2名は腹を抉り取られたような穴が開いていた。
廊下へと流れ出した血の中には、臓物やはらわたと思われる肉片が点在していた。
白い壁にも、鮮血が飛び散っている。
宮田は、ひとりひとりの脈を取っていった。
首にふたつの傷がある男性スタッフの3名には脈があったが、警備員の2名はすでに絶命していた。
そのとき、
「よう、宮田」
聞き覚えのある声に、宮田は顔を上げた。
そこには、九鬼が立っていた。
「九鬼、無事だったのか。君たちふたりも」
九鬼の両脇には、操縦士(パイロット)の倉上茂と、搭乗科学技術者(ペイロード・スペシャリスト)の木戸江美子の姿があった。
宮田は立ち上がり、
「田島くんと水野くんは、どこへ行った」
訊いた。
「獣と化した、あのふたりか?」
「そうだ」
「あいつらは、まだ腹が満たされてないようでな、食事のつづきをしに行ってしまったよ」
九鬼は、にたりと嗤(わら)った。
「!――」
宮田は、嗤った九鬼のその口許に眼を瞠った。
両端をつり上げた口から覗いた歯が赤く染まっている。
それは、まぎれもなく血であった。
それだけではない。
犬歯が、異様なほど伸びているのだった。
「おまえ……」
宮田は驚愕の眼で、九鬼を見つめた。
「おい、なんだ、その顔は。俺たちの新しい門出だぞ? いや、これは人類にとっての、次なるステップと言ったほうがいい。だから、もっとうれしそうな顔をしてくれよ」
九鬼は、にやにやと嗤(わら)っている。
「なにを、言っている。九鬼! おまえの身体には、地球外生命体と思われる未知なる細胞体が侵入しているんだぞ。それによって、おまえの遺伝子情報は、上書きされているんだ!」
「ククク。おまえこそ、なにを言っているんだ。人類はもともとが、地球外知的生体によって遺伝子操作され、猿からホモ・サピエンスへと人工的に進化させられたんじゃないか」
「意味がわからないな。地球外知的生命体が、人類を創っただと?」
「そうさ。地球外知的生命体は、猿のあまりの進化の遅さに、業を煮やしんだよ。それが、進化における急激な飛躍の謎だったというわけだ」
「なぜ、そんなことが言える」
「いまの俺には、すべてがわかる。地球の誕生も、宇宙の誕生でさえもな。いいか、人類は遂に、さらなる高みへと進むべきときが来たんだよ」
「ばかな。おまえは思い違いをしている。このままだと、おまえの中の未知なる細胞体に、その身体を乗っ取られてしまうかもしれないんだぞ。わからないのか!」
「くだらんな、宮田。おまえが、それほど下等なやつだとは思わなかったよ。まあ、それもしかたがない。おまえは、これを味わっていないのだからな。高みへと向かっていく、この恍惚感を」
九鬼の眼が、かっと見開いた。
その眼が、金碧色の光を放った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる