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チャプター【07】
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そこは、研究室(ラボ)のようだった。
室内には、研究と実験のための機器類や化学器具が並び、ほぼ中央には簡易ベッドが置かれていた。
そのベッドに、女の姿がある。女はベッドの横端に坐っていた。
室内にはもうひとり、男の姿があった。
銀縁の眼鏡をかけた、白髪の目立つ老年の男である。
白衣を着たその男は、銃に似た注射器を手に、ベッドの女へと近づいていった。
「蘭よ」
そう声をかけて、男は、女の肩と二の腕のあいだに消毒液を塗り、そこへ無造作に注射器をあてて打った。
「君の肉体は、常人を遥かに超越している。意識を集中すれば完全とまではいかないが、一分も経たずに受けた傷は塞がってしまうし、自然治癒であっても、二日もすれば完全に回復してしまう。しかしだ。だからと言って、決して不死身と言うわけではない」
「わかっている」
蘭と呼ばれた女は、素っ気なく答えた。
天月蘭(あまつきらん)――それが、女の名だった。
「いつも、それだな」
男は、呆れ顔でため息をついた。
その老年の男の名は、久坂善行(くさかぜんこう)といった。
いま、ふたりがいるその研究室は、久坂の自宅の地下にあった。
2年前、研究のために増築したものだ。
そして、久坂のその家は、蘭の住居でもあった。
久坂は注射を打ち終えると、脱脂綿を蘭に渡した。
蘭はそれを受け取り、注射のあとを押さえた。
「わかっているなら、なぜ無茶をする。排除人(エリミネーター)は、なにも君ひとりではないではないか。いまでは、S・M・T(特殊機動部隊)も君を高く評価し、ともに行動することを望んでもいる。なにも無茶をしてまで、ひとりで行動することはないだろう」
久坂が言った。
「彼らとつるむのはごめんだと言ったはずだ。それに、彼らは人間だ。邪魔になる」
蘭は、そう返した。
「OMEGA(オメガ)のS・M・Tを邪魔になる、か。だが、たとえ君には及ばないにしても、S・M・Tの排除人は特別な訓練を受け、体内にはナノ・ムが投与されているんだぞ。並みの人間とは、比べ物にならない能力を備えている。セリアン、そしてゾンビニアと化した人間を排除するほどのな。だからこその、排除人だ」
「ナノ・ムなど、子供騙しにすぎない」
蘭は、あっさりと言った。
「いま、ナノ・ムなど、子供騙しと言ったか。このわたしが、文部科学省にいたころから、研究に研究を重ねつづけて1年前にようやく完成させたバイオニック・ナノマシン、ナノ・ムを、君は……、30年近い歳月がかかったというのに……」
久坂は、がっくりと肩を落とし、うなだれてしまった。
「博士。気を悪くしたのなら許せ。私は事実を言ったまでだ。彼らが、どんな訓練を受けていようと、博士の開発したナノ・ムを体内に投与されていようとも、私にとっては、並みの人間に毛が生えた程度でしかない。現に、セリアンやゾンビニアを斃(たお)すことはできても、アビスタントは斃せていない」
蘭のその言葉に、久坂はわずかに沈黙し、そして、
「確かに、そのとおりだ。アビスタントを斃すには、まだ至っていない……」
そう言い、
「だが、そう言う君はどうなんだ。常人を超越した身体能力を有してはいるが、君も半分はまだ人間ではないか。感染した君はいま、N抗血清によって遺伝子が上書きされていくのを抑えているんだからな!」
言い放った。
「――――」
蘭は眼を伏せ、押し黙った。
眉根をよせた眼が、険しかった。
「すまない。少し、気を荒げてしまった。蘭、君の想いはよくわかる。君をそんな身体にした月よりの感染者、最初の5人のひとりを――」
「やめろ。それ以上言うな」
久坂が言うのを制するように、蘭は眼を伏せたまま言った。
久坂は言葉をつめると、
「――そうだな。まあ、とにかく無茶はするなよ」
くるりと背を向けた。沈黙が落ちる。
その沈黙を破って、
「あ、それとだな、ひとつ言わせてもらうが」
そう前置くと、久坂は頭を掻きながらデスクに向かい、
「わたしもなァ、60の半ばを過ぎたとはいえ男だ。君のその格好は、ほとんど裸じゃないか。眼のやり場に困る」
何かのデータが表示されているパソコンを覗きこんだ。
蘭は、黒のタンクトップに、下は黒のアンダーウェア一枚という姿だった。
豊満な胸の形とその先端の突起が、タンクトップの上からはっきりと見て取れた。
室内には、研究と実験のための機器類や化学器具が並び、ほぼ中央には簡易ベッドが置かれていた。
そのベッドに、女の姿がある。女はベッドの横端に坐っていた。
室内にはもうひとり、男の姿があった。
銀縁の眼鏡をかけた、白髪の目立つ老年の男である。
白衣を着たその男は、銃に似た注射器を手に、ベッドの女へと近づいていった。
「蘭よ」
そう声をかけて、男は、女の肩と二の腕のあいだに消毒液を塗り、そこへ無造作に注射器をあてて打った。
「君の肉体は、常人を遥かに超越している。意識を集中すれば完全とまではいかないが、一分も経たずに受けた傷は塞がってしまうし、自然治癒であっても、二日もすれば完全に回復してしまう。しかしだ。だからと言って、決して不死身と言うわけではない」
「わかっている」
蘭と呼ばれた女は、素っ気なく答えた。
天月蘭(あまつきらん)――それが、女の名だった。
「いつも、それだな」
男は、呆れ顔でため息をついた。
その老年の男の名は、久坂善行(くさかぜんこう)といった。
いま、ふたりがいるその研究室は、久坂の自宅の地下にあった。
2年前、研究のために増築したものだ。
そして、久坂のその家は、蘭の住居でもあった。
久坂は注射を打ち終えると、脱脂綿を蘭に渡した。
蘭はそれを受け取り、注射のあとを押さえた。
「わかっているなら、なぜ無茶をする。排除人(エリミネーター)は、なにも君ひとりではないではないか。いまでは、S・M・T(特殊機動部隊)も君を高く評価し、ともに行動することを望んでもいる。なにも無茶をしてまで、ひとりで行動することはないだろう」
久坂が言った。
「彼らとつるむのはごめんだと言ったはずだ。それに、彼らは人間だ。邪魔になる」
蘭は、そう返した。
「OMEGA(オメガ)のS・M・Tを邪魔になる、か。だが、たとえ君には及ばないにしても、S・M・Tの排除人は特別な訓練を受け、体内にはナノ・ムが投与されているんだぞ。並みの人間とは、比べ物にならない能力を備えている。セリアン、そしてゾンビニアと化した人間を排除するほどのな。だからこその、排除人だ」
「ナノ・ムなど、子供騙しにすぎない」
蘭は、あっさりと言った。
「いま、ナノ・ムなど、子供騙しと言ったか。このわたしが、文部科学省にいたころから、研究に研究を重ねつづけて1年前にようやく完成させたバイオニック・ナノマシン、ナノ・ムを、君は……、30年近い歳月がかかったというのに……」
久坂は、がっくりと肩を落とし、うなだれてしまった。
「博士。気を悪くしたのなら許せ。私は事実を言ったまでだ。彼らが、どんな訓練を受けていようと、博士の開発したナノ・ムを体内に投与されていようとも、私にとっては、並みの人間に毛が生えた程度でしかない。現に、セリアンやゾンビニアを斃(たお)すことはできても、アビスタントは斃せていない」
蘭のその言葉に、久坂はわずかに沈黙し、そして、
「確かに、そのとおりだ。アビスタントを斃すには、まだ至っていない……」
そう言い、
「だが、そう言う君はどうなんだ。常人を超越した身体能力を有してはいるが、君も半分はまだ人間ではないか。感染した君はいま、N抗血清によって遺伝子が上書きされていくのを抑えているんだからな!」
言い放った。
「――――」
蘭は眼を伏せ、押し黙った。
眉根をよせた眼が、険しかった。
「すまない。少し、気を荒げてしまった。蘭、君の想いはよくわかる。君をそんな身体にした月よりの感染者、最初の5人のひとりを――」
「やめろ。それ以上言うな」
久坂が言うのを制するように、蘭は眼を伏せたまま言った。
久坂は言葉をつめると、
「――そうだな。まあ、とにかく無茶はするなよ」
くるりと背を向けた。沈黙が落ちる。
その沈黙を破って、
「あ、それとだな、ひとつ言わせてもらうが」
そう前置くと、久坂は頭を掻きながらデスクに向かい、
「わたしもなァ、60の半ばを過ぎたとはいえ男だ。君のその格好は、ほとんど裸じゃないか。眼のやり場に困る」
何かのデータが表示されているパソコンを覗きこんだ。
蘭は、黒のタンクトップに、下は黒のアンダーウェア一枚という姿だった。
豊満な胸の形とその先端の突起が、タンクトップの上からはっきりと見て取れた。
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