里子の恋愛

星 陽月

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【第40話】

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 お風呂からあがった里子は、リビングの宗太郎とたわいのない会話を交わすと、「おやすみ」と言って自室にもどった。
 ドレッサーに坐り、化粧水を顔につける。
 鏡に映る自分の素顔を見つめながら、最近、肌の張りがなくなりだしてきたことを気にした。
 パジャマの上から、乳房に触れてみる。

 胸はまだ大丈夫ね……。

 そう思ってはみるが、体重が一キロ増えたのに反して、乳房は幾分小さくなったような気がする。

 胸は触れられないと小さくなるのよ――

 誰かがそう言っていたが、果たしてほんとうにそうなのだろうか。
 考えてみれば、倉田とベッドをともにしたのは二ヵ月ほど前だ。
 いや、もう少し前だったような気もするが、その辺は曖昧だ。
 けれど、だからといって、それで乳房が小さくなったとは思いたくない。
 思いたくはないが、それが現実なのかとも思ってしまう。
 倉田と出逢い、身体の関係を持つようになってからは、毎日でも一緒にいたいという気持ちが強くなった。
 そんな気持ちになったのは、倉田が初めてだった。
 それまで、人並みに幾つかの恋愛もしてきた。
 そしてSEXも。
 でも、SEXがいいものだと思ったことはなかった。
 それまでの男たちは皆、年齢が若かったということもあったが、SEXを楽しむ余裕もなく、ただ荒々しく自分だけの快楽を求めた。
 里子は眼を閉じ、どこか醒めた意識の中で男が果てるのを待った。
 単調に動く男の、吐き出す荒い息を耳にしながら。
 それでも、その頃の里子は、それがあたり前のことだと思っていた。
 それだけ、里子自身がまだ若くSEXの知識も薄かった。
 とはいえ、耳から入ってくる知識はいくらでもあった。
 女友だち数人との会話の中で、SEXの話題は尽きることはなかった。
 その内容といえば、聞いてるだけで赤面してしまいそうなことばかりで、どんな体位が気持ちいいとか、どこをどうすれば男を悦ばすことができるかなど、指を使い具体的に話す友だちさえいた。
 だが里子は、そんな話が別の次元のことのようで聞く気にはなれず、試すこともなかった。
 その里子を変えたのが倉田だった。
 倉田は、それまでの男たちとはまったく違っていた。
 それは口づけからしてそうだった。
 初めは軽く触れ、ゆっくりと里子の唇に這わせながらかすかに吸い、時にはやさしく噛んだ。
 そして、その唇は閉じた瞼にそっと触れ、額から髪の生え際をすべり耳へと移っていった。
 ふう、と息を吹きかけられたとたん、里子は足の先から力が抜けた。
 そして唇がふっと離れると、今度は指先が首筋に触れてきて、まるでそれが別の生き物のように肩から乳房へと緩やかに流れて、敏感な先端を刺激した。
 倉田の指先は、里子自身も知らない反応してしまう部分を容易に探り当てた。
 次第に里子は、身体の奥から沸き上がってくる得体の知れない何かに支配され、頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなっていった。
 倉田の指先が一番敏感な部分に触れたとき、里子の唇から悲痛にも似た声が洩れた。
 気づくと里子は要求されたわけでもないのに、倉田の脈動し屹立した部分に触れ、自分から口にふくんだ。
 自分がどうしてそんなことをしているのか、いったい自分がどうなってしまったのか、里子はわからなくなってしまうのだった。
 まるで自分が自分でなくなってしまったかのように。
 里子の身体は、すでに倉田を受け入れられるくらい悦びに溢れていて、自分から哀願するほどだった。
 そして、倉田と身体がひとつに結ばれたとき、里子は歓呼の声をあげた。
 倉田は自分の快楽だけを貪(むさぼ)ったりせず、強くやさしく、ふいにその動きを止めて焦らし、里子をなんども悦楽の頂にいざなった。
 やがてその悦楽の渦が倉田をも呑みこんで、ふたりは溶け合い呼応するように絶頂へと向かっていくのだった。
 果てたあと、里子はしばらく動くことができず、意識は混濁し、太腿が小刻みに震えた。
 そんなときも倉田は、それまでの男ようにすぐに身体を離してしまうようなことはなく、頬や額や瞼に、軽く口づけをし、髪をやさしく撫でてくれた。
 そんな倉田に馴らされていき、里子は自分からも求めるようになっていった。
 倉田によって目醒めさせられ、抱かれる度に淫らになっていく自分を知った。
 倉田のどんな要求にも応え、時には信じられないほどのあられもない姿態をとったりした。
 ふたりの休日が合ったときなどは、部屋の中で一日中SEXをした。
 食事をするのも裸のままだった。
 髪を梳かしながらそんなことを思い出し、下腹部の奥が疼(うず)くのを覚えて里子はハッとした。
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