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【最終話】
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晩秋の陽が落ちて、西の空が黄昏に染まるころ、中学校の鐘が鳴り響いた。
下校する生徒とともに妙子は校舎をあとにすると、一度アパートにもどって着替え直し、銀座へと向かった。
晃一に逢える……。
その想いに胸が高鳴りつづけた。
地下鉄を銀座で降り、地上に出ると、すでに街はネオンの輝きに溢れている。
早く逢いたい……。
逸る自分を抑えながら、晃一の待っている店に足を向けた。
しっかりとした足取りで歩く。
それなのに気持ちは先へ先へと向かっていく。
十ヵ月ぶりの新たな再会なのだ。
心が昂ぶるのは当然だった。
そんな妙子だっただけに、車道の反対側にあるデパートの、電光掲示板に眼がいかなかった。その電光掲示板には、今日一日のニュースが流れていた。
昨夜、日本時間の零時十五分。
スペイン、バルセロナ発国際線旅客機が、滑走路を飛び立った直後に墜落炎上した。
墜落原因はエンジントラブルと思われるが、詳細は現在調査中。
搭乗していた日本人は、十三人。生存者は――
音もなく流れていったニュースは、次のニュースに変わった。
妙子は、「高千穂」の前まで来ると立ち止まった。
胸の鼓動が激しくなる。
眼を閉じて、ひとつ大きく深呼吸をし、店に入ろうと足を踏み出したそのとき、妙子はふとあしを止めた。
名前を呼ばれたような気がして、妙子は辺りを見渡した。
その声は、確かに晃一だった。
だが、人波の中に晃一の姿はない。
その刹那、妙子は嫌な胸騒ぎを覚えた。
馬鹿ね、彼なら店の中で待ってるわよ……。
そうだ。
彼は店の中にいるのだ。
妙子は改めて歩を進め、店の中へと入っていった。
了
下校する生徒とともに妙子は校舎をあとにすると、一度アパートにもどって着替え直し、銀座へと向かった。
晃一に逢える……。
その想いに胸が高鳴りつづけた。
地下鉄を銀座で降り、地上に出ると、すでに街はネオンの輝きに溢れている。
早く逢いたい……。
逸る自分を抑えながら、晃一の待っている店に足を向けた。
しっかりとした足取りで歩く。
それなのに気持ちは先へ先へと向かっていく。
十ヵ月ぶりの新たな再会なのだ。
心が昂ぶるのは当然だった。
そんな妙子だっただけに、車道の反対側にあるデパートの、電光掲示板に眼がいかなかった。その電光掲示板には、今日一日のニュースが流れていた。
昨夜、日本時間の零時十五分。
スペイン、バルセロナ発国際線旅客機が、滑走路を飛び立った直後に墜落炎上した。
墜落原因はエンジントラブルと思われるが、詳細は現在調査中。
搭乗していた日本人は、十三人。生存者は――
音もなく流れていったニュースは、次のニュースに変わった。
妙子は、「高千穂」の前まで来ると立ち止まった。
胸の鼓動が激しくなる。
眼を閉じて、ひとつ大きく深呼吸をし、店に入ろうと足を踏み出したそのとき、妙子はふとあしを止めた。
名前を呼ばれたような気がして、妙子は辺りを見渡した。
その声は、確かに晃一だった。
だが、人波の中に晃一の姿はない。
その刹那、妙子は嫌な胸騒ぎを覚えた。
馬鹿ね、彼なら店の中で待ってるわよ……。
そうだ。
彼は店の中にいるのだ。
妙子は改めて歩を進め、店の中へと入っていった。
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