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【第22話】
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そこには闇だけが残った。
そして、トオルを呼ぶ声が聴こえてくる。
「トオルくん!」
その声は、まぎれもなく朝子の声だった。
「朝子ねえちゃん!」
トオルは名を呼んだ。
すると、ふっと闇が広けた。
すぐ眼の前には、朝子の顔があった。
「トオルくん、大丈夫?」
朝子が心配そうにトオルの頬をなでる。
トオルは放心したように朝子の顔を見つめた。
「ここはどこ?」
「私の部屋よ」
トオルは身体を起こして周りを見やった。
「よかった。もどれたんだ」
「もう、心配したわよ。トオルくんたら、上昇していったままどこかへ行っちゃうし、ゲームがシャット・ダウンしても、眼を開けないからどうかしちゃったのかと思ったわよ」
朝子は安堵の息をつく。
「僕、宇宙へ行っていたんだ」
「また、そんな冗談はやめて。私は、ほんとに心配したんだから。トオルくんの意識が、ゲームの中に囚われてしまったんじゃないかって」
「冗談なんかじゃないよ。僕は宇宙から地球を見たんだ。青い光に包まれた地球を。それと、真っ赤なバラのような星雲や、煌びやかな幾つもの銀河も」
「そんなわけないわよ。だって、このゲームには、宇宙なんてプログラミングされてないんだから」
「そんなこと言っても、僕はほんとに宇宙に行ったんだ。そして僕は、宇宙の果てのような、なにもない真っ暗な闇の中に放り出されて、そこで光る球体に出会ったんだ」
「光る球体?」
「うん。その光体は、『アルファでありオメガである』って言ってた」
「なにそれ。きっと夢でも観ていたんじゃない」
「そうかな……」
あれは夢などではない。
それほど現実的だった。
けれど、ゲームの中の仮想世界にいたことを考えれば、それを現実とも言えないだろう。
それに、このゲームには宇宙がプログラミングされていない。
とすれば、プログラミングされていないその宇宙へ行くことなど不可能だ。
それなら、あれはいったいなんだったのか。
やはり夢だったのだろうか。
だがトオルには、あの体験をとても夢だとはかたづけられなかった。
「とにかくよかったわ。眼を醒ましてくれて」
どうやら朝子には、夢でかたづけられてしまったようだ。
とはいえトオルにも、夢ではないことをうまく説明できるすべを持ってはおらず、朝子を納得させることもできそうにないので、そこは笑顔で応えた。
「さあ、今日はクリスマス・イヴよ。夕方にはみんなが集まってくるから、それまでにいろいろと準備をしなくちゃ」
何事もなかったように、トオルの頭からリングを外すと、「お昼は外で食べよ」そう言って朝子は、外出の着替えをするために寝室に向かった。
その彼女を見やりながら、トオルは自分に起きたことがなんだったのかをまた考え始め、ゲーム・マシンから離れるとソファに坐った。
考えこんでいるトオルのもとへ、サラがやってきた。
トオルの顔を見上げると、
〈トオルは、始(し)と滅(めつ)に行ったのね〉
唐突にそう言った。
トオルと朝子の会話を聴いていたのだろう。
「なに? その始と滅って」
トオルが不思議そうに訊く。
〈アルファでありオメガよ〉
「光体の彼もそう言っていたけど、じゃあ、あそこが始と滅ってところなの? ってことは、サラは、僕が宇宙に行ったこと信じてくれるんだ」
〈信じるもなにも、キミは過去から来たんじゃないの。それを考えれば、宇宙へ行くくらいのことはありえるでしょうよ〉
「よかった、信じてもらえて。でも、自分でもよくわからないんだ。僕になにが起きたのか。だから、そのアルファとオメガのこと、わかり易く教えてくれないかな」
〈アルファは始まりで、オメガは終わりよ〉
「それは知ってる。もっと具体的に」
〈まったく、注文が多いわね。人間はこれだからいけない。好奇心のかたまりなんだから〉
サラは辟易として言った。
そして、トオルを呼ぶ声が聴こえてくる。
「トオルくん!」
その声は、まぎれもなく朝子の声だった。
「朝子ねえちゃん!」
トオルは名を呼んだ。
すると、ふっと闇が広けた。
すぐ眼の前には、朝子の顔があった。
「トオルくん、大丈夫?」
朝子が心配そうにトオルの頬をなでる。
トオルは放心したように朝子の顔を見つめた。
「ここはどこ?」
「私の部屋よ」
トオルは身体を起こして周りを見やった。
「よかった。もどれたんだ」
「もう、心配したわよ。トオルくんたら、上昇していったままどこかへ行っちゃうし、ゲームがシャット・ダウンしても、眼を開けないからどうかしちゃったのかと思ったわよ」
朝子は安堵の息をつく。
「僕、宇宙へ行っていたんだ」
「また、そんな冗談はやめて。私は、ほんとに心配したんだから。トオルくんの意識が、ゲームの中に囚われてしまったんじゃないかって」
「冗談なんかじゃないよ。僕は宇宙から地球を見たんだ。青い光に包まれた地球を。それと、真っ赤なバラのような星雲や、煌びやかな幾つもの銀河も」
「そんなわけないわよ。だって、このゲームには、宇宙なんてプログラミングされてないんだから」
「そんなこと言っても、僕はほんとに宇宙に行ったんだ。そして僕は、宇宙の果てのような、なにもない真っ暗な闇の中に放り出されて、そこで光る球体に出会ったんだ」
「光る球体?」
「うん。その光体は、『アルファでありオメガである』って言ってた」
「なにそれ。きっと夢でも観ていたんじゃない」
「そうかな……」
あれは夢などではない。
それほど現実的だった。
けれど、ゲームの中の仮想世界にいたことを考えれば、それを現実とも言えないだろう。
それに、このゲームには宇宙がプログラミングされていない。
とすれば、プログラミングされていないその宇宙へ行くことなど不可能だ。
それなら、あれはいったいなんだったのか。
やはり夢だったのだろうか。
だがトオルには、あの体験をとても夢だとはかたづけられなかった。
「とにかくよかったわ。眼を醒ましてくれて」
どうやら朝子には、夢でかたづけられてしまったようだ。
とはいえトオルにも、夢ではないことをうまく説明できるすべを持ってはおらず、朝子を納得させることもできそうにないので、そこは笑顔で応えた。
「さあ、今日はクリスマス・イヴよ。夕方にはみんなが集まってくるから、それまでにいろいろと準備をしなくちゃ」
何事もなかったように、トオルの頭からリングを外すと、「お昼は外で食べよ」そう言って朝子は、外出の着替えをするために寝室に向かった。
その彼女を見やりながら、トオルは自分に起きたことがなんだったのかをまた考え始め、ゲーム・マシンから離れるとソファに坐った。
考えこんでいるトオルのもとへ、サラがやってきた。
トオルの顔を見上げると、
〈トオルは、始(し)と滅(めつ)に行ったのね〉
唐突にそう言った。
トオルと朝子の会話を聴いていたのだろう。
「なに? その始と滅って」
トオルが不思議そうに訊く。
〈アルファでありオメガよ〉
「光体の彼もそう言っていたけど、じゃあ、あそこが始と滅ってところなの? ってことは、サラは、僕が宇宙に行ったこと信じてくれるんだ」
〈信じるもなにも、キミは過去から来たんじゃないの。それを考えれば、宇宙へ行くくらいのことはありえるでしょうよ〉
「よかった、信じてもらえて。でも、自分でもよくわからないんだ。僕になにが起きたのか。だから、そのアルファとオメガのこと、わかり易く教えてくれないかな」
〈アルファは始まりで、オメガは終わりよ〉
「それは知ってる。もっと具体的に」
〈まったく、注文が多いわね。人間はこれだからいけない。好奇心のかたまりなんだから〉
サラは辟易として言った。
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