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【Episode 76】
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「ところで、クララ。君が散歩に来るのは、いつもこの時間なのかい?」
吾輩はそう訊いた。
クララは3ヶ月も前に引っ越してきたというのに、いままで一度も見かけたことがなかったからだ。
「この時間に来るのは、土曜日と日曜祭日だけです。平日はご主人も奥様も仕事をなさってますから、夜の七時時前後ですわ」
「そうか、それで君を見かけたことがなかったわけだ」
吾輩はすぐに得心した。
「奥様も仕事をしているんだね」
大原家の奥様、いや、ママは専業主婦だ。
「はい。奥様は、自宅のマンションの一階で会計事務所をなさっていますわ」
「と言うと、奥様は社長さんなの?」
会計事務所と聞いても、吾輩にはまったくわからない仕事である。
どんな仕事かと、訊ねたところで理解できるはずもない。
「ええ。ちなみに、ご主人はIT流通系の社長をなさっています」
お金持ちとは、悠々自適で優雅に暮らしていると勝手に思い込んでいたが、はなはだ赤坂サカスであった。
って、なんでだよ!
もとい。
はなはだ浅はかであった。
夫婦ともども社長として働いているからこそ、5階建てのマンションを建てられるほどのお金持ちになれるのだろう。
「あのさ」
改めるように吾輩は口を開いた。
「なんでしょうか」
「実はね、土曜日と日曜祭日の散歩を夕方の4時ころにできたらいいなと思って。その時刻だったら、吾輩の友だちがたくさんここに来るから」
「そうなんですか。私もゴン太さんのお友だちに会いたいと思いますけど、散歩をする時間を変更したいと、ご主人や奥様に伝えるすべがありませんわ」
「うん、そうだよね……」
そうなのだ。
我が種族は、「ワン!」と吠えることしかできない。
歓びや悲しみ程度であれば、どうにか伝えることはできるが、散歩の時間の変更など複雑すぎて伝えることなどできやしないのだ。
それが無理なことは、吾輩が身をもって体験している。
何かいいアイデアはないものか。
と、吾輩はずっと以前から考えていたことがある。
それはというと、スマート・フォンのアプリなるもののことだ。
いまや、大ママでさえスマート・フォンを携帯している。
そのスマート・フォンには、様々なことに利用できるアプリが入手可能だと聞く。
そこで吾輩が考案したのが、我が種族の言葉を通訳できるアプリ、その名も、
「ワンコと話せるワンダフォ!」
だ。
え?
ネーミングが安易すぎるだって?
まァ、そこは、開発してくれる方がいるなら、ネーミングも任せるつもりだよ……。
ということで、どうであろうか。
誰か開発者となってくれる方はいませんかー!
費用はすべて、開発者の方の実費でーす!
とは言え、開発した方はきっと、すごいことになるのではないだろうか。
なにせ、我が種族と会話ができるのであるから、それを開発した日には君、それこそ億万長者どころかミリオン長者になれるに決まっている。
長者番付だって、世界ランク一位で決定であろう。
ノーベル賞だって間違いなく獲得できるはずだ。
それはもう、うひょひょー、の生活が待っているのである。
どうかな?
夢の生活は、もう、そこにある!
だが、最後にひとつ言っておく。
これは吾輩の一存であるからして、真に受けたところで責任は持てない。
「あの、ゴン太さん?」
その声に我に返り、
「あ、はい」
吾輩はクララを見て返事を返した。
「とつぜん黙り込んでしまうものだから、どうしたのかと……」
「あ、すまない。ちょっと、うひょひょー、なことを考えていたもので」
「うひょひょー、ですか?」
「いやはや、その、ハハハハ」
吾輩が笑って誤魔化そうとしているそのとき、
「おはようございます」
そう挨拶する声が聴こえた。
眼を向けると、ママがクララのご主人の奥様に声を掛けていたのだった。
クララもふたりへと眼を向けたので、吾輩とクララはそのふたりの会話を聞くことにした。
しばらく会話を聞いていると、ママが、
「ウチのゴン太とも仲良くなったみたいですし、土曜日と日曜祝日は夕方の4時ころこの公園にいらしたら、他のお友だちもいるのでクララちゃんも歓ぶと思いますよ」
なんと、吾輩が伝えたかったことを話しているのだった。
以心伝心とはこのことである。
すると奥様も、
「そうですわね、お友だちがたくさんいるのでしたら、あのコのためにもいいことですわ」
そう言ったのであった。
ママ、Good job! (グッジョブ!)
吾輩はうれしくて、シッポを回しながらママに向けてThumb up(サムズアップ)と親指を立てようとしたが、肉球がちょっとだけ顔を出しただけだった。
兎にも角にも、土曜日と日曜祭日には、クララに逢うことができるようになったのであった。
吾輩はそう訊いた。
クララは3ヶ月も前に引っ越してきたというのに、いままで一度も見かけたことがなかったからだ。
「この時間に来るのは、土曜日と日曜祭日だけです。平日はご主人も奥様も仕事をなさってますから、夜の七時時前後ですわ」
「そうか、それで君を見かけたことがなかったわけだ」
吾輩はすぐに得心した。
「奥様も仕事をしているんだね」
大原家の奥様、いや、ママは専業主婦だ。
「はい。奥様は、自宅のマンションの一階で会計事務所をなさっていますわ」
「と言うと、奥様は社長さんなの?」
会計事務所と聞いても、吾輩にはまったくわからない仕事である。
どんな仕事かと、訊ねたところで理解できるはずもない。
「ええ。ちなみに、ご主人はIT流通系の社長をなさっています」
お金持ちとは、悠々自適で優雅に暮らしていると勝手に思い込んでいたが、はなはだ赤坂サカスであった。
って、なんでだよ!
もとい。
はなはだ浅はかであった。
夫婦ともども社長として働いているからこそ、5階建てのマンションを建てられるほどのお金持ちになれるのだろう。
「あのさ」
改めるように吾輩は口を開いた。
「なんでしょうか」
「実はね、土曜日と日曜祭日の散歩を夕方の4時ころにできたらいいなと思って。その時刻だったら、吾輩の友だちがたくさんここに来るから」
「そうなんですか。私もゴン太さんのお友だちに会いたいと思いますけど、散歩をする時間を変更したいと、ご主人や奥様に伝えるすべがありませんわ」
「うん、そうだよね……」
そうなのだ。
我が種族は、「ワン!」と吠えることしかできない。
歓びや悲しみ程度であれば、どうにか伝えることはできるが、散歩の時間の変更など複雑すぎて伝えることなどできやしないのだ。
それが無理なことは、吾輩が身をもって体験している。
何かいいアイデアはないものか。
と、吾輩はずっと以前から考えていたことがある。
それはというと、スマート・フォンのアプリなるもののことだ。
いまや、大ママでさえスマート・フォンを携帯している。
そのスマート・フォンには、様々なことに利用できるアプリが入手可能だと聞く。
そこで吾輩が考案したのが、我が種族の言葉を通訳できるアプリ、その名も、
「ワンコと話せるワンダフォ!」
だ。
え?
ネーミングが安易すぎるだって?
まァ、そこは、開発してくれる方がいるなら、ネーミングも任せるつもりだよ……。
ということで、どうであろうか。
誰か開発者となってくれる方はいませんかー!
費用はすべて、開発者の方の実費でーす!
とは言え、開発した方はきっと、すごいことになるのではないだろうか。
なにせ、我が種族と会話ができるのであるから、それを開発した日には君、それこそ億万長者どころかミリオン長者になれるに決まっている。
長者番付だって、世界ランク一位で決定であろう。
ノーベル賞だって間違いなく獲得できるはずだ。
それはもう、うひょひょー、の生活が待っているのである。
どうかな?
夢の生活は、もう、そこにある!
だが、最後にひとつ言っておく。
これは吾輩の一存であるからして、真に受けたところで責任は持てない。
「あの、ゴン太さん?」
その声に我に返り、
「あ、はい」
吾輩はクララを見て返事を返した。
「とつぜん黙り込んでしまうものだから、どうしたのかと……」
「あ、すまない。ちょっと、うひょひょー、なことを考えていたもので」
「うひょひょー、ですか?」
「いやはや、その、ハハハハ」
吾輩が笑って誤魔化そうとしているそのとき、
「おはようございます」
そう挨拶する声が聴こえた。
眼を向けると、ママがクララのご主人の奥様に声を掛けていたのだった。
クララもふたりへと眼を向けたので、吾輩とクララはそのふたりの会話を聞くことにした。
しばらく会話を聞いていると、ママが、
「ウチのゴン太とも仲良くなったみたいですし、土曜日と日曜祝日は夕方の4時ころこの公園にいらしたら、他のお友だちもいるのでクララちゃんも歓ぶと思いますよ」
なんと、吾輩が伝えたかったことを話しているのだった。
以心伝心とはこのことである。
すると奥様も、
「そうですわね、お友だちがたくさんいるのでしたら、あのコのためにもいいことですわ」
そう言ったのであった。
ママ、Good job! (グッジョブ!)
吾輩はうれしくて、シッポを回しながらママに向けてThumb up(サムズアップ)と親指を立てようとしたが、肉球がちょっとだけ顔を出しただけだった。
兎にも角にも、土曜日と日曜祭日には、クララに逢うことができるようになったのであった。
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