柴犬ゴン太のひとりごと

星 陽月

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【スピン・オフ】マイケルの一日

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 こんにちワン!
 ゴン太です。
 今回は、「ゴン他の日常」からちょっとそれて、「マイケルの一日」というお話をさせていただきます。
 スピン・オフです。

「なんだ? そのスピン・オフってのは?」

 そう思った方のために説明させていただきます。
 スピン・オフというのは――番外編のことです。

 え? 
 なに?
 番外編なら、初めからそう言えって?

 そう言いますけどね、「番外編」より「スピン・オフ」のが断然カッコいいではないですか。
 TVのドラマとかでも、ほら、やってるでしょ?
 そうそう、それそれ。
 だから、文句はなし。
 話をもどして、なぜにスピン・オフなのかと言うと、

「毎日の連載は大変だから、少し休ませてくれー!」

 って作者が駄々をこねるものだから、しかたなく吾輩がストーリーを練ってみたのである。

 ん?
 今度は、なんだって?
 吾輩のストーリーなんだから、吾輩がそのまま進めていけばいいだろうって?

 君、わかってないなー。
 吾輩がそれをやってしまったら、作者の立場ってものがなくなるではないか。

 ん?
 なに?

 いや、それはだめだよ。
 絶対に、だめ。
 そんなこと、吾輩には絶対できない。
 作者は言わば、生みの親。
 その生みの親を、裏切るような真似などできるものか。
 そんなことをしたら、日本男犬の名折れというものだ。
 吾輩を誘惑しようとしても無駄だ。
 吾輩は意思が固いのだ。

 え?
 なになに?
 聞くだけ聞け?
 うむ、聞くだけならば……。
 ふむふむ……。
 それ、ほんと?
 マイホームを建て替えられて、エアコンも入れられて、ケンタも嫌になるほど食べられるだって?
 それはなんとも、夢のような話ですな……。
 え?
 旅行もどこにだって行けるし、高級車にも乗れる?
 そして?
 はいはい……。
 ほうほう……。
 それはそれは、まさに、うっひょー的な感じですね……。
 それに?
 まだまだそんなものじゃない?
 って、他にもまだあるんですか!
 はい……。
 はいはい……。
 うわ、ほんとですか……。
 そ、それは、ちょっとヤバすぎません?
 え?
 いや、吾輩もその、嫌いではありませんが……。
 ハハハ、そんな、やめて下さいよ……。
 だから、違いますって……。
 吾輩には、そんな趣味はありませんから……。
 でも、そんなことまでできるなんて……。
 え?
 それどころか、あんなこともこんなこともできるですって?
 ムフ……。
 そこまで言われたら、吾輩も男犬!
 据え膳食わずば、男犬の恥じですからね……。
 とは言え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ……。
 うまい話には裏があるといいますからね……。
 簡単に信じて、馬鹿をみるのは吾輩ですから……。
 
 って言うか、コラ!
 あー、危ない!
 危うく誘惑に負けるところであった。
 まったく、油断も隙もない。
 吾輩の固い意思を、くすぐるようなことを言っても無駄だよ。

 だから、そんな、無駄だっての……。
 こちょこちょってされても……。
 そこは、くすぐったいから、やめて……。
 って、ほんとにくすぐってどうするの……。
 やめてって、そこをくすぐられたら、吾輩は弱いんだから……。
 アハハ!
 イヒヒ!
 だめだっての……。
 ほんとにヤバイから……。
 アハハ、ヒヒヒ、オホホ……。

「コラ! ゴン太!」

 その声に、吾輩は我に返った。

「な、なんでしょう」

「な、なんでしょう、じゃないわよ!」

 声の主は、言うまでもなくサラだった。

「アンタが作者に変わって、スピン・オフとやらをやるって言うから来てみたら、なにが、アハハ、ヒヒヒ、オホホよ! アンタ、読者に弄(もてあそ)ばれてどうすんのさ!」

 サラはえらい剣幕だった。

「いや、なんとも、面目ない」

 そのサラに気圧されて、吾輩は意味もなく横っ腹を後脚で掻いた。

「私だってね、そのスピン・オフってのやってみたいのよ。アンタにやる気がないんだったら、私と変わりなさいよ」
「あ、いや、それはほら、作者がまた休みたいって駄々をこねるときがあると思うから、そのときに好きなだけやってくれればいいさ」
「あ、そう。じゃあ、今度は必ず私にやらせてよね」
「あァ、男犬に二言はない」
「アンタには三言も四言もありそうだけど、いいわ」

 想いのほかサラはあっさりと得心して、

「それじゃ、いまから脚本を書かなくちゃだわ。題名は、そうねェ、『愛する三匹の我が子』がいいかしら」

 などとブツブツ言いながら歩いていき、門の下をくぐって出ていった。
 それを見届け、吾輩はほっと息を吐いた。
 しかし、とんだ読者の横やりで、今回はストーリーがまったく進まなかった。
 なので次回こそ、「スピン・オフ」マイケルの一日、をお送り致します。
 カミング・スーン!

 それにしても、作者ってほんとにあんなことやこんなこともできるのであろうか……。
 うらやましい……。

 ということで、ここで一句。

 作者って あんなこんなが できるのね

 って、それじゃ句とは言えないよ!

 と、自らツッコむ吾輩であった。
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