ハニードロップ

蜜柑大福

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乱される気持ち

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ギュッと無意識にタオルを握りしめていた…自分がバカで、失笑しか出てこない。

……一気に昨日の熱が冷めた感じがした、何やってんだろ…俺。

自分に腹が立つ、あんな事をしてもどうしようもないのに…

触れ合えたからなんなんだ、それで心まで手に入れたつもりなのか。

俺が勝手に期待して、勝手に落ち込んでいるだけだ。

最初から、男である俺に望みなんてなかったんだ。

ただの性欲処理だと思えば、嫌なくらいしっくり来る。

俺の気持ちを押し付けられたとしても、相手には迷惑だ。

初めてほしいと願ったものは、既に誰かのものだった。

小声で吐き捨てるように口にすると、圭介と幸人は俺を挟み覗き込んで顔色を伺っていた。

「……恋人いるならそう言えよ、クソッ」

「恋人?スキャンダルとかダメだよー」

緩い圭介の話し方に「うるせぇ」と一言言った。

スキャンダルされるドジは踏まない、そのためにオーラを隠す変装をしている。

あんなにちやほやされているのが嫌だったのに、今はどうでもいい。

いっその事、芸能界を引退出来たらなと自暴自棄になりそうになる。

俺の居場所はそこしかないから、抜け出す事も許されないが…

俺が男子校に通ってるのは家族とマネージャーしか知らない、だから二人は普通に俺の悩みの種は女だと思っている。

それでも、俺の色恋は初めての事で二人は驚いていた。

…女だったら孕ませれば楽なのに、いや…いろいろと問題か。

そういえば、マネージャーにこの変なモヤモヤの気持ち聞こうとしたんだっけ。

マネージャーを見ると完成された曲を聞いて打ち合わせしていた。

…幸人は同じ歳、聞くなら一つ年上の圭介か。

この気持ちに関しては、幸人が知っているわけがない。

それに、幸人に相談するのが単純にプライドが許さない。

圭介なら、世話を焼きたがりだし相談しやすい。

それに圭介は影で遊び人とか言われてるし、経験豊富そうだ。

どんな感情も知っている気がする、確信はないけど…

幸人を押し退けて、圭介の方を見ると不思議そうな顔をしていた。

「なぁ圭介…触れたいって思った相手に触れて、余計悪化したんだけど」

「……え?何のぶっちゃけ話?」

「キスして触れて、もっともっと触りたくなる…他人と話してるところを見ると腹立つんだ…なんか分からないがイライラする」

「…それ、誰がどう見ても恋してるじゃん」

最初は驚いていた圭介だけど、冷静にそう言った。

こい?恋?俺が?三条を?好きな気持ち?これが?

だから俺は、顔も知らない三条の彼女に嫉妬していたのか?

三条が俺を受け入れたから、俺は期待したのか?

まさか男を好きになるなんて、考えた事もなかった。

女には何度も告白はされたが、興味はなかった。

だからといって、男とはずっと論外だと思ってた。

確かに三条の身体は男にしては肌触りがよくて、魅力的に見えた。

恋や愛だと分かると、少しだけもやもやした気持ちが晴れた。

初恋も正直覚えがないがあまり良いもんじゃないな、恋って…

感情に振り回されてイライラして、三条が友人と話してるのを見ると首輪で繋いで俺から離れないようにしたい。

自分ですら知らない裏の顔を、三条によって暴かれる。

三条の泣き顔は好きだ、苦しそうな顔もいい……ただその原因は俺でなくては嫌だ。

俺も知らない訳の分からない女との事で苦しんでほしくない。

だから初めて会った時の三条の姿は好きではない。

あの時は咄嗟に三条に口移しをしてしまったが、好き嫌い以前に三条に興奮した。

俺だけを見ろ、よそ見するな……彼女?三条は俺に愛された方が幸せだろ?

落ち込んでたのがだんだんイライラに変わる。

俺にあんなに泣かされたくせに、まだ彼女かよ。

彼女と別れさせたいとか、そういう事じゃない。

アレは最初に三条が煽ったからで、大切な彼女がいるなら煽るなよ。

触っただけとはいえ、俺が先に手を出したんだけだけど…

「一般の学校に転校したんだっけ、凡人と同じ学校とか僕ならムリムリ!………ファンをゴミとしか思ってなかった緋色がねぇ」

「そう思ってたのはお前だろ幸人」

幸人は膨れた顔をしている、長くなるからほっとくか。

ファンをゴミとは思っていない、ファンあってのアイドルだからな。

そのくらい、両親に嫌というほど仕込まれたからな。

改めて俺が三条に抱いていた気持ちを考える。

アイツ、あんな淫乱な体で女抱けんの?キスしただけでとろとろな顔をして……

反応からして童貞みたいだったけど、三条は抱くより抱かれる方が好きそうに見えた。

処女なのは分かっているから、俺が初めてだ。

これで三条が男に目覚めたりするのか?

だからと言って、他の奴に抱かせたりしねぇけど…

やっぱり俺しか三条を満足させられないだろ。

そう思うと重くなった心が軽くなりニッと笑った。

まだ三条の事をよく知らないが、浮気するようなタイプには見えない。

男だからノーカンとか?そんな軽い気持ちなのか?

三条に彼女がいたとしても、一緒に住んでるのは俺で三条を抱いたのも俺だけだ。

だったら俺のところに来るようにもっと三条を快楽で溺れさせればいい。

俺をずっと見ていた幸人はポカーンと口を開けていた。

「今の緋色、なんかエロい…圭介よりセクシー」

「………………えっ!?」
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